POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /36 -


ハコニワノベル

 一階へ降りると、二階と同じように等間隔に扉が並んでいるのが見える。一階も二階も、構造は同じなのだろう。浅く深呼吸をしてから、まずはあの二人を探し出そう。既にあの二人はどこかの個室に入ってしまっているのだろうか。それとも、まだどこかを移動しているのだろうか。その肝心な部分が見えていないことに苛立っていると、ごく近くから声が聞こえた。

「立ち入り禁止、だったはずだ」

 その声の聞こえた方向を確認すると、ストライプのスーツに真っ赤なハンカチを胸ポケットに入れ、メガネをかけた男が見えた。手前から三つ目の扉がいつの間にか開いていて、その扉からこちらを覗き込むように、その男はこちらを伺っているように見ている。

「なぜ、ここにいる?」
「いろいろあったからや。あんたは確か、えーと、せや! 割紙譲」
「正解、だな」
「そう言えばあんた、パーティ開始前はここまで入らせてくれへんかったな」
「そういう、決まりだった」
「決まりねぇ」
「今は、それどころじゃない」
「それどころじゃない?」
「早く、逃げなければ」
「逃げる? どこに? 誰から?」
「尻紙の、トップからだ」
「なんやて? うちらも尻紙のトップを探してんねん。槍紙と守紙のトップも探してんねんけど、あの二人より早く見付けたかったところや。で、そいつどこにおるん?」
「攻守、二枚か」
「攻守二枚とか、役割の序列とかいうんはどうでもええ、尻紙のトップはどこやねん!」
「時間が、ない」

 そう言った途端、視界から男の姿が消える。扉は音もなく閉じられていた。

「この中か? とりあえず尻紙のトップはどこにおるんよ? それだけ教えてくれへん? おーい」
「静香」
「なんや」
「さっきの人ならそこにいないでしょ」
「は?」
「こっちの廊下からどこかに行っちゃったみたいだね」
「いやいやいや、さっきこの扉の内側におったやん」
「うん」
「いや、うん。ちゃうやろ。そしたらこの中におるん違う?」
「違う」
「なんでそんなん分かんねん」
「だって、そこの扉から出てきてさ、人の顔じろじろ見てから向こうに行っちゃったでしょ」
「見えたんか?」
「そりゃ見えてたよ」
「……」

 この扉から割紙譲が出てきたか? 出てきただけじゃなく爽太の顔をじろじろ見た? そして爽太の後ろへ続いている廊下の先へ行った? 見えていない。何も見えなかったはずだ。

「嘘やろ? なぁ、そんなデタラメ……」
「おい、七ノ宮」
「は?」

 振り向くと無駄に腕を組んで偉そうに仁王立ちしている男がいる。

「お前こんなところで何してるんだ? そうか、お前も泉さんのカードキーを探しているんだな」
「御影龍彦! 良かった、うちあんたを探してたんや。金原麻衣子はどこや? 一緒におるんやろ?」
「七ノ宮……、お前喋り方が変だぞ」
「うっさい、そんなことは今どうでもええやろ! 金原麻衣子はどこやねん」
「あ、あ、あのぅ……」
「なんや、後ろにおったんかい。良かった。とりあえずあんたらの時計見せてくれへんか?」
「時計? 金原はちょっと前に外れたんだ。俺のは今、1032だな」
「よし、間に合った。あんたもう下手に動いたらあかんで」
「はっ、なに言ってんだよ? 泉さんの時計を外すまで俺はカードキーを探すぞ」

 御影龍彦はそう言うと目の前の扉に飛び込んだ。「ちょっ!」と声をあげたもののどうしようもなかった。しかし、しばらくすると御影龍彦は平然と個室から出てきた。その腕に取り付けられている時計を無理やり確認する。

「なんだよ?」
「991……、まだセーフや。ほんまにもうあかん、絶対移動コストを使ったらあかんで?」
「だからなんでお前に指図されなきゃいけないんだよ。俺は泉さんを救うためならなんでもやるさ。お前びびってるんだろ? 移動コストなんてせいぜい20から30ぐらいだぜ? まだまだ余裕なんだよ。まぁ、流石にこの数字が600を切ったらやめるけどな」
「そうちゃう、お願いやからもうやめて。じゃないと、じゃないとあんたら二人とも死んでまう」
「ふーん。やっぱりお前びびってんじゃねーか。別に俺は考えなしに行動してるわけじゃないし、残り寿命もまだまだ余裕。ほら見てみろよ、ここの部屋の扉は移動コスト30だぜ? 往復で60減るだけだ、小学生でも分かる計算だろ」
「あかん言うたら、あかん! とにかくあかん! あんた紫ノ宮泉助けたいんやろ? これ以上無造作に動けばそれもできへんねんで?」

 気が付いたら襟首を掴んでいた。「な、なんなんだよ」と言われるほどに、襟首を掴む手に力が入っていく。それを御影龍彦は欝陶しそうに振り払って怪訝な顔で言った。

「なんでそんなことが分かるんだよ。一秒先に何が起こるかなんて、行動を起こした奴にしか見えないんだよ。それともあれか? 七ノ宮には未来でも見えてるとかか?」
「……」
「冗談。まぁ見てろよ、こんなのまだまだ余裕だってーの」

 こちらの制止も聞かず、御影龍彦が移動コスト30と表示された目の前の扉を開けて中へ入った。その腕時計には959と表示されている。

「な? まだ余裕なんだよ。びびってたら泉さんは救えないからな」

 扉を閉めようとしたのを無理やり止めた。

「なんなんだよ、ほんとに」
「ここは開けといてくれるか」
「お前ってさ、面倒なやつだよな。おい金原」
「……は、はい!」
「この扉開けといてくれ。ちょっと中でカードキー探してくる」
「う、うん」

 部屋の中を片っ端から、それでいてテキパキとカードキーを探している御影龍彦が見える。そのまま三分が過ぎてくれと強く願っていた。957を過ぎてしまえば、あのとき見えた未来は起こらないはずだ。

「ふん。この部屋もなさそうだな」
「も、もっと奥の方とか探した方がええんとちゃうか?」
「だからお前は何がしたいんだよ。探すなと言ったと思ったら今度は探せか? はっ、カードキーはそんなに複雑な場所に隠されていないんだよ。今まで見付けた傾向で考えれば、それなりに見つけやすい場所にしか隠されていない。よし、次の部屋だな」

 御影龍彦の時計は958と表示されている。あの未来は個室の中で起こるはずだ。だったら今外に出ればあの未来は起こらないはず。それなら出てきたらこの廊下で時間を潰させればいい。そう思い付いて御影龍彦を見ると、扉の前で立ち止まっている。立ち止まっているだけじゃなく、ぼんやり上を見上げている。

「なにしてんねん、はよ出ぇや」
「……無理だ」
「なに言うてんねん。とにかく時間がないねんで?」
「七ノ宮、お前の言う通りだったみたいだ」
「なにがやねん」
「この扉、外から中へは移動コスト30だったけど、中から外は……、1080だってよ」

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