POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /32 -


ハコニワノベル

「それでも、やっぱり変だよ。しーちゃんは何が見えてるの……」
「見たくないものが見えんねん」
「どういうこと?」
「見たくて見えてるんちゃうねん。見たくなくても勝手に見えよる。そういう気分悪いもんが見えてるだけや」
「……」

 小早川さんは腑に落ちたような、落ちないような中途半端な顔をした。何かを言おうとして口を開いたようだけど、眼を閉じて大きく息を吸い込んでから「……ごめんなさい」と言って頭を下げた。きっと聞こえたんだと思う。私が誰も聞き取れないぐらい小さな声で「産まれる前から未来が見える」と言ったのが。冗談かなにかだと思っただろうか、それとも私をバケモノのようだと思っただろうか。もしかしたら、小早川さんはもう私と一緒に笑いあえないのかもしれない。なんとなく小早川さんが遠のいていくように感じた。その時だった。

「はいはい。二人とも、もういいって。千紗に何が聞こえていてもー、しーちゃんに何が見えていてもー、私たちは親友です!」

 バンチョが小早川さんと私の間で肩を組み、無理やり頬ずりしてきた。しばらくそれを続けていると、何を思ったのか爽太がそこに混ざろうとしてきた。それを三人で同時に蹴り倒したところで、三人とも笑った。

「はい、仲直りー」
「バンチョには敵わんわ」
「なんか、ウジウジ考えてたのがバカみたいじゃない。もー、バンチョのバカー」
「なんで私がバカになるの? それっておかしくない?」
「あのー、なんで僕は寝転がってるのかな?」
「コケたんちゃうか? 足元は注意しなあかんで?」

 ふぅ、と息をついてステージに寄りかかっていると、コツコツコツという足音が耳元に近づいてくる。振り向いて見上げると、憎たらしく笑う槍紙舞子がいた。

「おいでー、ガキんちょ」

 その呼び方にイラついたものの、確かにさっきは自分をコントロールできていなかったのだし、子供だと言われれば子供に他ならなかったのだから仕方がない。ここは言い返したいが、飲み込んでおこう。
 そのままステージの裾から奥に連れて行かれた。

「で、なんなん?」
「あっれー? あんたが言ったんじゃないのー? ここから出たいって」
「出られるん? どこから?」
「今は無理だしー」
「それやったら、わざわざこんなとこまで連れてくんなや」
「早とちりしすぎだしー。ちゃんと言ったじゃん、今は無理って。ねぇ、マコちゃん?」
「確かにそう言ったな」
「でっしょー」

 槍紙舞子がマコちゃんと呼びかけた先から、ガタイの大きな男が現れた。それまでそこには気配すらなかったというのに、突然大きな男が現れたのだから驚いた。パッと見で二メートル以上はありそうだ。確か十枚の――。

「さっきの話、本当なんだろうな槍紙舞子」
「この子が言ってたことだしー。ま、本当かどうかなんて分かんないけどー。それよりマコちゃん、フルネームで呼ばれたくないんですけどー」
「そうなのか。おい、そこのお前」
「は? もしかしてうちのこと?」
「この状況は尻紙が意図的に作っているのか?」
「なんやねん、薮から棒やな……! ?」

 突然苦しくなって、身体がふわふわと浮いているようだ。そう感じてからすぐに、自分が首を掴まれて上に持ち上げられていることに気が付いた。

「もう一度だけ聞く。この状況は尻紙が意図的に作っているのか? 聞かれたことだけ答えろ」
「マコちゃん相変わらずせっかちだしー。ウケルー」

 こいつの名前は守紙真だ。確か、槍紙舞子の前に自己紹介をしていたはず。そこまで考えたところで、少しずつ意識が遠のいていくのが分かる。これ以上は本気でシャレにならない。

「や、やめろー!」
「しーちゃんを離して下さい!」

 バンチョと小早川さんの声が遠くに聞こえる。そしてその声はどんどん遠ざかっていくようだ。さっきまで黒く感じていた視界が、ふいに白くなった。苦しかった呼吸も苦しくなくなっている。
 ――あぁ、良かった開放されたのか。



   ◇



「ねぇ、名前決めてくれた?」

「そういうお前は決めたの?」

「うち? もちろん決めてるで」

「男の子だったら俺が名付ける」

「女の子だったらうちが名付ける」

「約束だからな」

「せやね、そういう約束やったね」

「じゃぁ、お前から言えよ」

「はぁ? そんなんあんたから言ってや。ここはバシッと男らしく」

「そ、そうか? よ、よし、分かった」

「男の子やったら、この子はなんて名前になるん?」

「じゅ、十蔵」

「えらい古風な名前やな」

「お、お前はどうなんだよ。そんなこと言ってさ、実は考えてないんだろ」

「アホか、考えてあるわ。この子が女の子やったら……」

「女の子だったら?」

「静香や。なー、静香」

「ま、まだ女の子かどうか分からないだろ! な、十蔵」




   ◇



 白から黒、黒から赤に変わって、身体の隅々が熱くなっている気がして目が覚めた。私は床にぺたりと座り込んでいて、目の前には傷だらけの背中が見えている。

「あのー、僕の静香をいじめないでもらえませんか?」
「……お前、何者だ?」
「そんなの、静香と一生一緒にいる男に決まってるでしょ」
「そういうことを聞いているんじゃない。貴様、俺の握力がいくつか知ってるか? 二百を超えているんだぞ」
「ん?」
「確かに殺さない程度には力を抜いてはいたが、それをいとも簡単に外すとは……。今一度聞こう、お前何者だ」
「だから、静香と一生一緒にいる男です。それと、さっきから何を言っているんですか? 僕はただ静香を助けようと思っただけで、あなたの握力とか意味が分からないんですけど」
「……どアホ」
「あ、静香大丈夫? でさ、うーんとね、この状況は何?」
「あんたが、あいつに掴まれてたうちを助けたってだけや」
「あ、そういうこと。ふーん。でもまぁ、いいや」
「相変わらず、どうでもええんかい」
「うん。静香が無事ならそれでいいよ」
「ふむ……。槍紙舞子、こいつ危険だな」
「確かにー。そこのお嬢さん二人の気配は感じてたけどー、そいつの気配はまったく感じ無かったしー。そう言えばさっきも気配感じなかったんですけどー」
「あのー、お取り込み中失礼します。実は僕、今ちょっとばかし怒ってるんですよ」
「はぁ? こいつ何言っちゃってるのー? もしかして彼女傷つけられたからとかー?」
「そうですよ。静香に何かあったらどうするんですか」
「そんなの知らないしー。それに手を出したのはマコちゃんだから、アタイ関係ないしー」
「槍紙舞子、俺はこいつを危険と判断する。排除してもいいか?」
「はぁ? もう勝手にやってろだしー」
「よし。ならば、そこのお前。悪いが消えてもらおう」
「え?」

 守紙真がしゃがみ込んで床に手を付いた瞬間、二メートルを超えるであろうその巨体が、一瞬で爽太に向かって飛び込んできた。



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