POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /31 -


ハコニワノベル

「なるほど。最初にお出しした紅茶ですか……」
「少なくともあの紅茶の中には、何かが入ってたはず。その何かが爆発を引き起こしてるんやと思う」
「何その私にはすべてお見通しでしたー的な? そういうの分かってたとかってー、実は犯人だからとかー? キャハハハ。まぁ別にどうでもいいけどー」
「まぁまぁ、舞子ちゃん。そんなに疑ってかからなくても」
「いちいち言われなくても分かってるしー」
「それに、先程三枚のカードキーを見付けてくれた協力者というのが、静香ちゃんなんですし」
「へぇー。やるじゃん、あんた」
「見付けてきたんは、そこのどアホやけどな」
「さっきの突然キ……何?」
「それ以上言わんとってくれる?」
「なになにー? もしかして恥ずかしい系? ガキすぎてウケルー」
「舞子ちゃん、言い過ぎですよ」

 この女、確か名前が槍紙舞子。チャラチャラしていて、会話してるだけで疲れるタイプだ。ただ、頭が弱いというわけではなくて、喋り方から知性を感じられないだけみたいだ。思考自体はまともな気がする。それにしても服装というか布切れを着ただけの、異常な露出が癇に障る。履いているヒールもかなり高くて、今見えている後ろ姿が、どうにも下品に思えてならない。

「魅力的だね、あの人」
「は?」
「ポイント高いよ」
「なにが?」
「見えそうで見えないってとこが」
「アホか」
「でさ、あの人さっき何を言おうとしてたの?」
「さっき?」
「トツゼンキってなんなの? 新種のポケモン?」
「なんの話なんやろうな」

 下品な後ろ姿をずっと見ている爽太をしばきつつ引っ張って、ステージの下で待っていたバンチョと小早川さんの元に戻った。
 ステージ上から大広間を見渡すと、残っている参加者は十枚がカードキーを見付けてきてくれると思っているからなのか、焦った様子はあまり見られない。例えカードキーが見付かったとしても、助からないというのに。

「ねぇ、しーちゃん」
「バンチョ、どないした?」
「あのさ、千紗がちょっと変なんだよ」
「小早川さんが?」

 少し離れたところにいる小早川さんは、うつむいたまま何かをブツブツとつぶやいていて、どうやら震えているみたいだ。

「小早川さん、どないしたん? 大丈夫?」
「……ないで」
「へ?」
「来ないで!」
「どないしたん? 来ないでってどういう……」
「しーちゃんはやっぱり変だよ!」

 ――最後は恐れられ忌み嫌われる。
 冷たい汗が背中を伝っていく。ただ立っているだけなのに、視界がグラグラと揺れていく。気持ちが悪い、気持ちが悪い、気持ちが悪い。

「私、紅茶飲んでないの」
「それは千紗が紅茶苦手だって言ってたでしょ」
「違うの。そうじゃないの」
「え? どういうこと?」
「聞こえたの」
「聞こえたって何が?」
「声」
「声?」
「そう、声だよ。バンチョには聞こえなかった?」
「誰の声?」
「しーちゃんの声だよ!」
「しーちゃんの声は一緒にいるときは聞こえてるよ?」
「そうじゃなくて!」
「ちょっと千紗、落ち着こうよ」
「なんで? なんでなの?」
「だから、落ち着こうって」
「だってあのとき、しーちゃん言ったじゃない! ”この紅茶、飲んだらあかん! ”って!」
「そうなの、しーちゃん?」
「……言ったよ」
「なんで紅茶を飲む前にそんなことが言えるの? それってやっぱり分かってたんじゃないの? ねぇ、答えて! 答えてよ、しーちゃん!」
「それは……」
「それとさっき”なんで、結果しか見えへんねん”とも言ってたよね? 結果しか見えないってどういう意味なの? 見えないって何? しーちゃんは何を見てるの?」

 頭の中がクラクラする。耳を塞ぎたい、目を閉じたい、どこかに逃げてしまいたい。頭の中に昔言われた言葉が木霊する。



   ◆



「あー、バケモノだー」

「バケモノ! バケモノ!」

「もう、バケモノは死ねよ」

「そうだ! そうだ!」

「死ね、死ね、早く死ね!」

「死ね、死ね、早く死ね!」

「死ね、死ね、早く死ね!」



   ◆



「ちょっと待ってよー。あのときってさ、私たちとしーちゃんたちは別々の席だったよね? しーちゃんの声、私には聞こえなかったけどなー」
「いや、だからそういうことじゃなくて、そもそも紅茶を飲む前に、その……」
「ちょっと千紗は落ち着きなよ」
「だって聞こえたの。バンチョにはたまたま聞こえなかっただけで……」
「そうかなー?」

 小早川さんの顔が青ざめていくように見える。

「や、やめてよ。まるで私だけにしか聞こえてなかったみたいに言わないでよ」
「確かに静香はそんなこと言ってたよ」
「えっと、爽太さんはしーちゃんと一緒の席だったんですよね?」
「そうだよ。だからよく聞こえたね」
「そうでしょうね」
「と、とにかく聞こえたのは間違いないの。だから私、紅茶を飲まなかったんだし」
「それはそれでいいんだけど、やっぱり思い出してみてもさー、私には聞こえなかったよ?」
「……だ、だって」

 小早川さんの顔が完全に青ざめてしまった。小さな声で「なんで? どうして私だけ? 嫌、そんなの嫌」と繰り返している。その様子が視界に入ってから、私の視界の揺れは一瞬にして治まった。そのかわり鈍い頭痛がする。最初は驚かれ、次に頼られ利用され、最後は恐れられ忌み嫌われる。それの繰り返し。そう、それの繰り返しだ。

「小早川さん、もしかして耳がいいんと違う?」
「え? う、うん……。私、小さい頃から耳がよくて、たまに聞きたくないことも全部聞こえちゃって……、いや違う。そうじゃなくて」
「そうなの? あー、だから先生が来るのをいつも誰よりも早く分かったりしたのかー。センサーっていうあだ名はあながち間違ってなかったなー」
「やめて! そういうの……」
「バンチョ、そんなこと言わんとき」
「分かってるよー。確かにそれなら聞こえてるかもだね。私は駄目だなー、都合のいいことしか聞こえないや」
「だ、だからその……」
「小早川さん、もう無理に言わんでええよ。うちもバンチョも気味悪がったりしーひんから」
「……」
「あ、思い出した! そう言えばあのとき静香が、爽太のことが大好きとかって言ってた気がする。うん、言ってたな」
「え?」
「え?」
「……安心してええで、それは完全にあんたの気のせいや」



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