POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /29 -


ハコニワノベル

「や、やった! 外れた!」

 ステージ前に集まった人の中心からそう叫ぶ声が聞こえた。その声の主が高々と振り上げている腕には、時計が外されていることだけが見える。徐々にどよめきが沸き起こって広がり、やがてそれが収まりだすと、まだ確認出来ていない人がわれ先にと人ごみを無理に掻き分けていく。

「今、一名の方の腕時計が取り外せました。そして、皆さんに更なる朗報です。とある素敵な協力者の方のおかげで、更に三枚のカードキーがこちらにあります。お一人ずつ確認をお願いします。それから、一列にお並びください。皆さん共に残された時間は有限です。効率よく確認作業が行えるようにご協力をお願いします」

 一人、腕時計の解除ができたからなのか、塗紙一の呼びかけに対して、大広間内の参加者達は素直に従った。最初の四枚側にできた列の最後尾に全員で並ぶ。前に立つ紫ノ宮泉の姿を改めて見ると、紫色のゴージャスだったドレスはところどころ黒く汚れ、重力を無視して盛られていた髪の毛は、だらんと垂れ下がっている。周りの参加者を確認してみても、誰も同じようにボロボロだ。
 一人、また一人とカードキーの確認をしていく。今この大広間内にある七枚のカードキーのうち、一枚は既に該当者が出ているので残り六枚。私たちがまだ確認できていないのはそのうち三枚だ。並んでいた列の長さが半分になったころ、列の先頭で歓声が上がった。どうやらまた一人、該当者が出たらしい。これで残りは二枚。
 そのまま該当者も出ず、先頭にいた紫ノ宮泉の順番になった。ピー、ピーと虚しく機械音が鳴る。私も、爽太、小早川さんも同じだった。最後にバンチョがカードキーをかざす。ピー。もう聞き慣れた音が鳴る。もう一枚。
 ――ピピッ。聞き慣れない音と共にゴトンと何かが落ちる音がした。

「あ、外れた」

 当の本人がまるで他人事のようにそう言った。しばらくの沈黙のあと、小早川さんがバンチョに駆け寄る。

「バンチョ、良かったね!」
「うーん」
「どうしたの?」
「いまいち実感が湧かないんだけどさー、これって良かったんだよね?」
「当たり前でしょ! これでバンチョは助かるじゃない」
「そうなのかなー」

 小早川さんの方が喜んで見えるのは、きっと無理をしているからだ。バンチョがあまり喜ばないのも、小早川さんを気遣ってのことだろう。床に落ちたままだった腕時計が、小早川さんに蹴られて転がった。その文字盤に表示されている数字が4254から4253になったのが見えた。

「なんでやねん……」

 バンチョから取り外された腕時計を拾いあげて確認する。しばらくすると4253から4252になる。今知り得ている情報を頭の中で整理する。円卓の壊れ方、転がっている下半身の数、残された椅子の数、106、53、今の段階で腕時計が解除された人。この余興のルール。そこまでの情報を整理して、疑問は確信へ変わってしまう。全身を言い知れない寒気が覆う。
 そもそも、爆発の原因はアレだというのに、なぜ安心していたんだろうか。これは、あえて言うべきではない。知り合いからも腕時計が解除された人が出たのだから尚更だ。そもそもそんなこと、どんな顔をして言えばいいのか分からない。――腕時計を外しても意味が無い、なんて。

「静香、どうしたの? また暗い顔してるよ?」
「なんでもあらへん」
「それならいいけどさー、笑ってる静香の方が好きだよ」
「……うるさいな」
「やっぱり静香変だ。そんなに焼きそばが食べたかったなら、もう一回……」
「なんでもない言うてるやろ!」

 一瞬、周りの空気が静まり返った。「ご、ごめん」そう言うことしか出来なかった。

「怒った静香も可愛いね」
「あんたなぁ、ええかげんに……っ! ?」

 突然、目の前に繋がれた手が見える。二人は抱き合うように近い距離にいるみたいだ。片方の腕には腕時計がなく、もう一方の腕には腕時計が見える。その腕時計には957という数字が表示されている。しばらくすると、その二人から徐々に黒煙が立ち上っていくのが見える。ゆっくりと、じれったいぐらいにゆっくりと、その二人の全体が見えてくる。その二人の顔が見えたところで映像は終わった。

「最悪や……」
「ん?」
「なんでや、なんで、結果しか見えへんねん」
「静香?」
「……」

 生きている価値がない。なんのためにこのパーティに参加したんだ。見えていた危険な未来、その被害に知り合いがあわないように守るためなのに。なんの役にも立たない、結果だけ見えても防ぎようがない。しかも二人だ。知り合いが二人、被害に合う。

「静香、気分でも悪いの?」
「……どこや、あれ」
「どこ? あれ? あ、おにぎりはもう全部食べちゃいました」
「狭かったな……」
「僕の心? うーん、そんなことないよ。広すぎて見えないかもしれないね」
「個室か? この館に個室なんてどこにあんねん」
「え、もう二人きりになりたいの? 積極的だね。個室なら、一階の廊下の奥に沢山並んでたよ?」
「一階か。行くしかないな」
「ほんと積極的だね、静香。まだ真昼間だけど、僕としては望むところだから大丈夫。それより、静香は大丈夫? 心の準備とか」
「ちょっと、しーちゃん? おーい。しーちゃんがさ、こういう難しい顔してるときっとアレだねー。ねぇ千紗」
「……」
「ちょっと、ちょっとー。千紗まで難しい顔しないでよ。どうしたの?」
「……変だよ」
「え、僕のこと? まいったなー。だけど静香を愛してる気持ちは本物だよ」
「えっと、多分あなたのことは誰も言ってないと思いますよー?」
「さて、一階に行くぞー」
「うわ、この人はこの人で人の話を聞いてないし。ちょっと、みんな落ち着いてよ、なんか私だけ仲間はずれになんですけどー」

 ステージに向かって走りだす。「ちょ、しーちゃん? どこ行くの?」バンチョの声は聞こえたけれど、振り向きもせずにステージ上に飛び上がる。「おやぁ?」と言った塗紙一の襟首を捕まえた。

「なぁ、移動コストなしでこの大広間から出られへんの?」



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