POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /27 -


ハコニワノベル

「あのー」
「なんや?」
「痛いんですけど」
「せやろな」
「静香も焼きそば食べたかったの?」
「ちゃうわ! 勝手に行動すんなって言ってたやろ?」
「うん」
「だったらなんで勝手に行動してんねん」
「お腹すいてたんだよね」
「お腹すいてたんだよね、ちゃうわ!」
「いや、でもさー。この食べ物はどこで手に入れたんだろうね」
「あのな、それはあんたが勝手にここに入ってきた入り口から出て、階段を降りて、一階のエントランス奥にある厨房から持ってきたもんや」
「そうなんだ!」
「あぁ、もうええ。とにかく次勝手な行動したらシバくで?」
「うん。それは楽しみだなー」
「いや、楽しみにすな」

 駄目だ、こいつとまともに会話しようとしても無理がある。なんというか思考するより先に行動をしてしまっている気がする。まるで小さい子供のように自由気ままで制御不可能。首輪とリードでも付けないとどうにもなりそうにない。
 とりあえずおにぎりを一つ奪いとって食べた。どっちにしろそんなに簡単にこの場所から解放されることはないのだろうから、エネルギー補給は必要だ。

「私もちょっと貰おうかな。千紗はどうする?」
「ごめん、私はちょっと食べられそうにないや。それより、そのペットボトルのはお水ですか?」
「これー? うん、水みたいだね」
「持ってきた本人が何か知らんとか、どないやねん」
「それ一本貰えます?」
「はい、どうぞ」
「ありがとう。ずっと何も飲んでなかったから、助かります」
「小早川さん、今なんて?」
「え? いや助かりますって」
「そうやなくて、何も飲んでなかったって?」
「うん、そうだけど?」
「さっきの紅茶も飲んでない?」
「飲んでないよ」
「なんで?」
「だってほら、それは……」
「ん?」
「ううん、ええとね……、私、ちょっと紅茶苦手なんだ」
「そうなんや。良かった」
「良かった?」
「いや、気にせんといて」

 少しだけ如何わしそうにこちらを見つめつつ首をかしげてから、小早川さんはペットボトルの水を一口飲んだ。

「あ、あー。会場内の皆さん」

 マイクから音声が発せられたので、自然とステージ側を確認する。そこに塗紙一が立っていた。

「先程、ありましたようにナンセンスな余興が始まってしまいました。この館内に隠されたカードキーを探し、寿命を表すというこの腕時計を外さなければ、今こうして生き残っている我々も同じように命を奪われてしまうようです」
「他人事みたいに言うな! これは元々十枚が企画していたものなんだろ?」

 どこからか野次が飛ぶ。それを片手を上げることで静めると、塗紙一が再び口を開いた。

「我々十枚がこのような余興を企画したという事実は一切御座いません。我々は純粋に皆さん方との交流を目的として、今回のパーティを主催するに至りました。等しく我々十枚もこの余興に強制的に参加させられてしまいましたので、皆さんと同じ状況です。ただ、皆さんと同じだからといって、このまま何もしないというわけにはいきません。主催者側として、一人でも多くの方をお救いするのが勤めだと考えております」
「じゃぁ、どうするって言うんだ! ? そこまで言うなら何かしら考えがあるんだろうな!」
「もちろんです。ええと、我々十枚のメンバーでこの会場内を捜索した結果ですね、カードキーを四枚発見致しました。既にこの会場から出てしまっている方もいらっしゃいますが、まずは皆さんお一人ずつこのカードキーで腕時計が外せないかをお試しください。我々十枚のメンバーがカードキーを発見した場合は、皆さんにお知らせし全員に腕時計が外れないか確認して頂きます」

 会場内が少しだけざわついたかと思うと、我先にとステージに向かって参加者達が押しかけ始めた。転がっている下半身や、円卓だったものを乱雑にどかしながら、他の参加者を押しのけながら群がっていく。その騒ぎの中で会場の中央付近で円卓だったものが倒された。もう円形ではなく、扇を二つくっつけたような形になってしまっている。今度は後方にあった円卓だったものが倒された。こっちは三日月のような形になっているのが見えた。

 ――ちょっと待て。
 すぐに近くの円卓だったものを片っ端から確認する。三日月、扇、半円、足だけになっているものもある。ついでに転がっている下半身の数も数えていく。二つ、四つ、六つ、八つ。残っている椅子の数も数えてみる。これはどうやら間違いなさそうだ。

「しーちゃんどうしたの? 急に」
「いや、ちょっと気になっただけやでバンチョ。あんまり大したことじゃないけどな、……うん、間違いない」
「うー? まぁいいか。でさー、あのステージ上の人が持ってるカードキーだっけ? あれ確認しに行かないの?」
「もう少し待って、人ごみが捌けてからがええと思う」
「そうだね、慌てても仕方ないし」
「ふー、食べた食べた」
「あんたはまだ食ってたんかい! マイペース過ぎるやろ!」
「あ、そうだ。さっきから言ってるさ、カードキーってこれのこと?」

 爽太がそう言いながら背中が破けてしまっているYシャツの胸ポケットから、無造作にカードキーを三枚出した。

「ちょっとあんた! これどうしたんや?」
「うーん、どうしたんだろうね?」
「いや、聞いてんのこっちやろ……」

 見えた。厨房の中で食料を確保しながら、調理台の下から一枚、シンクの中から一枚、冷蔵庫の中から一枚を見つけては胸ポケットに入れる爽太の姿が。

「なるほどな……。厨房で見つけて持ってきたわけや」
「そうなんだ!」
「とりあえず、四人の腕時計でこのカードキーを試してみよか」
「千紗ー、最初に試しなよ」
「……う、うん」

 時計の文字盤にカードキーをかざす。少し長くピーという音がするだけで、腕時計は外れなかった。二枚目も三枚目も結果は同じで、そこから順番に全員三枚とも確認してみたものの、誰の腕時計も外れることはなかった。あからさまに落胆してしまった小早川さんを、バンチョと私で支えるようにしながら、ステージ上にいる塗紙一にこの三枚のカードキーを渡すために移動した。



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