POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /25 -


ハコニワノベル

 若草色のドレスと思われる衣服を着たままの下半身と、かろうじて青地のチャイナドレスと分かる衣服を着た下半身が、目の前に転がっている。
 さっきまでそこに座っていたはずの、島崎先輩と王子先輩がいない。何かの間違いだ。きっとそうだ。今、目の前に転がっているのは、誰か別の参加者に違いない。祈るように、爆発によるものと思われる、歪な形になってしまった円卓の下を覗き込んでみたものの、そこには誰もいない。右を見ても、左を見ても島崎先輩と王子先輩がいない。

「嘘や……」
「静香」
「嘘や! こんなん嘘や!」
「少し落ち着こうよ」
「落ち着けるわけないやろ! こんなのは見えてへんかった!」
「見えてなかった?」
「……お前と一緒に行動するようになってからや、急に見えるのが遅くなった! お前、何者やねん! ?」
「僕は爽太だよ」
「そういうことを聞いとんのとちゃう!」
「それにしてもさー、これは何の騒ぎなの?」
「お前、いったいぜんたい何者や……うっ! ?」

 そこで言葉を失った。
 会場内をキョロキョロと見渡している爽太の背中がむき出しになっていて、傷だらけになっている。円卓や椅子の破片がそこら中に突き刺さっていて、Yシャツから透けて見えていた”うしろ”という文字も、今は傷や火傷によって見えない。あまりに生々しい傷で正視に耐えられず目を背けた。

「あんた、それ……」
「ん?」
「いや、その、背中……」
「あ、そうだ。静香、怪我はない?」
「うちは大丈夫やけど、あんたのその背中は……」
「そっか! 静香は怪我してないのか。よかった。よかった」
「いや、よくないやろ……」
「なんで?」
「……あんたは」
「ん?」
「……爽太は、大丈夫なん?」
「頭?」
「いや、背中やろ!」
「大丈夫なんじゃないかなー。だって、ほら、生きてるし」
「そうかもしれんけど、なんでそんなことに……」

 またリプレイ再生のように映像が見える。ドン! ドン! ドン!という爆発音、その爆発が起こるよりも早く、私は爽太に抱きしめられていたらしい。そしてこの円卓で起こった爆発による衝撃と私の間で、爽太がそのすべてを背中に受けている。

「あんた……」
「ん?」
「あんた、どうやって反応したんや? もしかしてあんたも、見えるんか?」
「見える? 何が? 視力はニ.〇だよ」
「いや、ええわ。今のは忘れといて……」
「ねぇ」
「なんや?」
「背中が痛いんだけど、何かなってる?」
「気付いてなかったんかい! あんた背中、大怪我してんねんで?」
「怪我? なんで怪我したんだろう?」
「知らんの? あんた、うちをかばって爆発から守ってくれたんやん!」
「そうなんだ!」
「……いや、うん。そうや」
「へぇ」
「いや、だからなんで自分でやったことなのに、今初めて知ったようなリアクションやねん」
「初めて知ったからだよ」
「は?」
「まぁ、今までは自分が何をやったかなんて知ることは出来なかったけどね」
「あんたそれ、どういう意味や……」
「それにしても酷い臭いだね。ちょっと外出て……」
「あかん」
「なんで?」
「あんたに勝手に動かれたら、うちらも爆発するらしいで」
「そうなの?」
「あんた、さっきの説明まったく聞いてなかったやろ」
「うん」
「うん。ちゃうわ。……はぁ。あんた、うちから十五メートル以上離れんといてよ」
「いいけど、なんで?」
「この時計に表示されてるのが、うちらの寿命らしいねん。ちなみに分表示や。だから今でいうと、残り4318分。これが十五メートル以上パートナーと離れると一秒で一ずつ減っていくらしいんよ」
「よく分かんないけど、分かった」
「あと、扉とかに書いてある数字が移動時に引かれるらしいから、勝手な行動はせんといて。じゃないと、うちが死んでまうから」
「それはダメだよ。静香は死んじゃダメ」
「なんやねんそれ。まぁええわ、とにかく勝手な行動は謹んでな」
「分かった」

 少しだけ冷静になっている自分に気がついた。黒煙が大量に立ち上るのは見えていたけれど、知り合いが犠牲になるのは見えていなかった。だからとはいえ少し取り乱しすぎた。目の前に転がっている島崎先輩と王子先輩の下半身に、少しだけ手を合わせてから席を立つ。隣で爽太も同じようにしていた。
 まずは現時点での状況を正しく把握することが優先だ。携帯電話の履歴から電話をかける。祈るように目を閉じながら応答を待った。

「しーちゃん?」
「バンチョ! 無事なん?」
「うん。無事……とは、ちょっと言えないかなー」
「どっか怪我でもしたん?」
「いや、そうじゃなくて千紗がちょっとね……。まぁ、一応二人とも大丈夫だよ。しーちゃんは?」
「うちも大丈夫や。ただ、同じ席に座ってた弓道部の先輩がな……」
「そっか。いいよ、それ以上言わなくて。しーちゃんは今どこら辺にいるの?」
「入り口に近いところにおるよ」
「私らは、会場の一番右側の真ん中あたり」
「分かった。今からそっち行くわ」
「了解」

 座っていた一番後ろの席から会場の右端へ移動し、円卓を一つずつ確認するようにしてバンチョ達を探した。
 どこの円卓でも爆発が起こったらしく、円卓が元の丸い形を保っているものは見受けられない。そこら中に円卓や椅子の破片、それから上半身を失った下半身が黒煙を立ち上らせながら転がっている。よく見ると、頭や腕などは転がっていない。どの被害者も、まるで上半身だけ消されたかのように上半身の痕跡は残っていない。それほど強烈な爆発だったのか。そうだとすると何か引っかかる気がしてならない。爆発の原因はアレだったはずだし――。

「しーちゃん!」
「バンチョ!」
「無事そうでなによりだよー」
「バンチョこそ。えーと、小早川さんは?」
「うん。あそこだよ」

 少し悲しそうな顔を見せながらバンチョが指さした先に、壁を背もたれにして膝を抱えて座り込んでいる小早川さんがいた。



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