POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /21 -


ハコニワノベル

「なぁ」
「……」
「おーい」
「……」
「聞こえてるやろ?」
「……」
「……爽太」
「なに?」
「なんで名前で呼ばなあかんねん」
「ねぇ、君」
「は?」
「君の名前は?」
「うちが名乗る義務はない言うてるや……」
「ずっと君って呼ぶけどいいの?」
「……」
「ねぇ、君? ねぇねぇ、君?」
「はぁ……」
「どうしたの、君? ねぇ、どうしたの、君?」
「……静香や」
「静香、いい名前だね。全然静かにしてないけど。ふふふ」
「ふふふちゃうわ! それにうちが静かやなくてもええやないか」
「あ! ねぇ、静香。もう会場みたいだよ」
「いや、軽くスルーすんなや」

 スナップを効かせて爽太の後頭部を叩いた。
 エントランスの階段を上ると、大広間の入り口が見えた。スタッフであろうと思われる黒いスーツの男が二人立っている。こちらに気付いたそのスーツの男に促されるようにして、入り口から大広間の中へと入る。
 鳳華中学の体育館よりも広い空間が目の前に広がり、白いテーブルクロスの円卓に八つ椅子が整えられ、それが綺麗に並べられている。ざっと見ただけで正確な数ではないけど、300人ぐらいはいるだろうか。着飾った参加者達が円卓に着席して談笑している。

「お? 七ノ宮ちゃん発見。おーい!」

 入り口から一番近い円卓から呼ぶ声に反応すると、若草色のドレスにクリーム色のスカーフで着飾った島崎先輩がいた。

「ここ二席空いてるから座っちゃいなよ」
「本当に空いてるから座ってしまうといい」

 隣には青地にピンクで刺繍が施されたチャイナドレスを着た王子先輩が座っている。スラッとした王子先輩にはよく似合っている。他には何度も顔の汗を拭くのが忙しそうな三十二、三ぐらいの太った男、その男を異常に心配している和服姿の女。スーツを着崩し、だらしなく座る浅黒い肌の男。身体のラインがはっきりでる黄色いドレスを着たケバイ女が座っている。
 別の席を探そうかと思ったものの、爽太が既に座ってしまったので仕方なく席についた。

「ねぇねぇ、七ノ宮ちゃん。その人は誰なのかなー? もしかして、いや、もしかしなくても……」
「トモ、野暮なことを聞くなよ。私は七ノ宮さんと同じ弓道部の、王子雛。こっちは島崎朋笑。あなたは?」
「僕は爽太だよ」
「ねぇねぇ、爽太さん。七ノ宮ちゃんとはどういう関係?」
「ん?」
「いや、だからほら、もしかして七ノ宮ちゃんの彼氏とか?」
「ん?」
「あれ? そういうんじゃないの? じゃぁ、兄弟とか? 親戚?」
「島崎先輩、こいつのことはいいじゃないですか」
「いや、よくないよ! 彼氏でしょ? ねぇ!」
「はぁ……、トモ!」
「げっ! 雛が怒った……」
「爽太さん、ごめんなさい。トモ、いつもこんな調子なんです。ほら、トモも謝りなよ」
「えー」
「トーモ?」
「あ、ヤバい! ご、ごめんなさい。許してネ!」
「はぁ、もう少しちゃんと謝ってくれよ」
「いいじゃない、ほら! 爽太さんだってニコニコして許してくれてるみたいだしさ!」
「あのー」
「あ、あれ? やっぱり怒ってる? え、えっとぉ、なんですか?」
「七ノ宮って誰ですか?」
『へ?』

 ゴンという音がした。久しぶりに人をグーで殴ったからだ。円卓にうつ伏せになるように爽太が屈んでいる。

「本当にこいつ変な奴なんで、気にしないで下さい」
「痛い」
「爽太さんは黙ってて下さいね」
「ね、ねぇ雛。七ノ宮ちゃんが怖いよ?」
「しつこく聞き過ぎたトモが悪い」
「私? 私は別に悪いことなんてしてないよ!」
「……あのー」
「なんですか? というより頭、大丈夫ですか?」
「もしかして、七ノ宮っていうのは、静香のこと?」
「そりゃぁ、それ以外ないですよ」
「そっか!」

 爽太がガバッと起き上がると島崎先輩の方を勢いよく向いた。

「な、なに?」
「静香とはね、一生一緒にいる関係だよ」
「え、それって……」

 ゴンという、いやガンという音だったかもしれない。爽太は再び円卓でうつ伏せになっている。

「ふっふっふー。そういうご関係でしたかー。七ノ宮ちゃんったら照れちゃって、ねー」
「流石に婚約者とは思わなかったな。驚いた」
「いや、ちょっ、違うんですよ」
「いいって、あからさまに誤魔化さなくて大丈夫だから」
「誤魔化すとかじゃなくて」
「この年齢で婚約者とは、いろいろ苦労もあるだろうし、他言はするなよトモ」
「はいはーい」
「他言は、するなよ?」
「は、はーい」
「お前なぁ……」
「い、言わなきゃいいんでしょ! か、簡単だよそれぐらい!」

 うつ伏せのまま微動だにしない爽太の耳元で「あんま、いらんこと言わんといて」とささやくと、小さくそのまま頷いて応えてくれた。なんだ、意外に素直な奴じゃないか。あとは島崎先輩の口止めをしないとだけど、多分無理だろう。王子先輩に出来る限り防いでもらうしかなさそうだ。

「ブフフ、ねぇママ。ボクさ、あのチャイナドレスの子、気に入っちゃったよ」
「あら、秀(すぐる)ちゃん。あんな子ダメよ、秀ちゃんに相応しいのはママぐらい素敵な女性なのよぉ?」
「だけど、あの子いいよ。気に入っちゃったんだもん。ブフフ」
「んまー、仕方ない子ねぇ。ちょっと、そこのチャイナドレスのあなた」
「私ですか?」
「あなた以外にチャイナドレスを着た人が近くにいますか? あのね、うちの秀ちゃんがあなたを気に入ったらしいのよ。あなたうちの秀ちゃんとお付き合いしなさい」
「なに言ってんのおばさ……」
「トモ、待て」
「だって」
「いいから」
「ほら、返事はどうしたのかしら? 佐渡(さわたり)家の御曹司が気に入ってくれたんですよ? もちろん返事は、はい。ですわよね?」
「あなたがどこの誰かは存じ上げませんが、私はそちらの方とお付き合いはできません」
「んまー! あなた秀ちゃんが佐渡家の御曹司だと知らなかったばかりか、秀ちゃんの交際申込みを断るなんていい度胸ね」
「はっ、ババアが何言ってんだよ! うるせぇから黙ってろ」

 浅黒いホストみたいな男が話に入ったところで、会場の照明がスーっと落とされた。

「ご静粛に願います。これより、十枚グループの主催によるスラッシュ\パーティを開始いたします。皆様、会場前方のステージ及びモニターを御覧ください」



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