POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /20 -


ハコニワノベル

 振り返った先にいたのは、ヘラヘラと笑う男だった。Tシャツにハーフパンツ、それからサンダルを履いているという、どこをどう見てもパーティに参加する者の格好ではない。ただこのラフ過ぎる格好の男こそが、この陽碧の館に入るときに現れた見知らぬ背中の持ち主だ。そのTシャツだけは見間違うことはない。無地の白いTシャツで、背中に手書きであろう文字で”うしろ”と書いてあるのだから。

「私の連れだと偽って中に入ったのはお前やな」
「ん?」
「はぁ、このやり取り何回繰り返したら気が済むねん」
「あ!」
「なんやねん、急におっきい声出すなや」
「あのさー」
「……なんや」
「君は、誰?」
「お前頭の中壊れてんのとちゃうか?」
「そうじゃなくてさ、君の名前は何?」
「なんで答えなあかんねん」
「なんで? さっき僕は名乗ったよ?」
「あのな、そっちが名乗ったからってこっちが名乗る義務はないやろ?」
「んー、そっか。ならいいや」
「いいんかい! だったら最初から聞くなや」
「さてと、早くパーティの会場に行こうよ」
「ちょい待った」
「ん?」
「なんでうちがお前みたいなやつと一緒に行かなあかんねん」
「僕は君と一緒に行きたいよ?」
「いやいや、お前の気持ちなんて関係ないやろ」
「そうなんだ。でも僕は君と行きたいな」
「お断りや、お断り。そもそもそんな格好でパーティに参加したらええ笑いもんやで。うちも一緒に笑われるんがオチやし」
「なら着替えてきたらいいんだよね?」
「そんな時間ない……っておらへんし」

 今さっきまで目の前にいた男が姿を消し、ため息を吐き出す間もなくまた姿を表した。もう驚くのも面倒になってきている。「これでいい?」と聞いてきている男の格好は、Yシャツとブラックスーツのパンツなのに、靴だけはさっきと同じサンダルのままだった。そして嬉しそうにヘラヘラ笑ってこっちを見ている。

「べ、別に着替えたら一緒に行くとは言ってへんからな。それにその服、勝手に持ってきてええんか?」
「え?」
「いや、その服勝手に持ってきたんやろ? ほら、エントランスの階段下から勝手に……」
「決めた!」
「はぇ?」
「僕さー、君と一緒にパーティ参加する。いや、パーティだけじゃなくて一生一緒にいることにする」
「ちょ、なんでやねん。なんでそんな話になんね……」
「僕さ、君のこと好き」
「はぁっ! ?」
「さ、行こうよ」
「待て待て待て。落ち着け、いいから落ち着け」
「ん?」
「お前がどこの誰かも知らないのに、なんで一緒に行かなあかんのか理解に苦しむわ」
「えーと、僕は爽太だよ」
「さっきも聞いたわ!」
「だから、オマエじゃないよ。僕は爽太」
「はいはい、分かったからあんたは勝手に行けばええやろ? うちは一人で行くから」
「無理だよ」
「なにがやねん!」
「だって立てないでしょ?」
「別にそんなことあんたに関係ないやろ。ほら、さっさと行った行った。今行けば、さっきしでかしたことは大目にみたるから」
「さっきしでかしたこと? やっぱりさ、僕は君に何かをしたの?」
「あーもうええって! その話終り。んー、せやな。うん。あのさ、悪いんだけど飲み物買ってきてくれへん? うち喉乾いたんよ」
「いいよ」

 そう言ってヘラヘラ笑いながら爽太とか名乗る男は廊下を曲がって行った。
 今のうちに大広間へ移動してしまおう。どこの誰かも分からない、かつ私に”見えない”やつの相手をする意味はない。さっきの着替はあの男が戻ってきてから、追いかけるように見えた未来だ。いや、未来というには追いつけていないので、いうなればリプレイと言ったところか。
 ようやく感覚を戻してきた身体を動かして、ふらつきながらもなんとか立ち上がった。廊下を曲がりエントランスへ向かおうとすると「お待たせ」という声が後ろから聞こえる。その声に振り向くと、そこに開けたてのラムネ瓶を二本もった爽太とか名乗る男が立っていた。

「いつからそこにおったんや」
「ん?」
「……」
「君が立ち上がろうとしてるときからだよ」
「お前、やっぱり変や」
「よく言われるよ」
「お前何者やねん! ?」
「僕は爽太だよ」
「三回も聞いたわ。そういう意味ちゃ……」

 立ち上がったばかりで大声を出そうとしたので立ちくらみがした。しばらくして身体が上下に揺れているのい気が付いた。またこれだ、爽太とか名乗る男の腕の上でお姫様抱っこ状態になっている。

「おい」
「ん?」
「どこ行こうとしてんねん」
「パーティ会場だよ」
「ちょっと降ろして」
「なんで?」
「ええから」
「いいよ」

 今度はゆっくり足から降ろされたらしく、なんとかそのまま立つことができた。爽太とか名乗る男は相変わらずヘラヘラと笑っている。このままじっとしていてもどこにも行ってくれそうにもない。

「悪いんやけど、もう一回飲み物買ってきてくれへん? お茶系のペットボトルのがええねんけど」
「分かったー」

 大きなため息を出してから、一番近い窓へ近づいた。外を見てみるともう参加者が入ってくる様子はない。そのほとんどはもう大広間へと移動し終えているみたいだ。

「お待たせー」

 音もなく、気配もなく、爽太とか名乗る男が戻ってきた。声のする方に振り返ると、ラムネを片手に一本ずつもってヘラヘラと笑っている。とりあえず殴っておいてから「お茶や、ペットボトルの!」と声を出したら目の前にペットボトルに入った紅茶が差し出された。

「あるんやったら最初から出しいや」
「それ飲んだらさー、パーティの会場に行こうよ」
「はぁ、そのラムネもこの紅茶も厨房から勝手に持ってきてるし、れっきとした窃盗やで自分」
「そうなんだ!」
「なんやねん、その自分がしたことを今知ったかのような反応は」
「決まりだな」
「なにがやねん」
「僕、君と一生一緒にいる」
「いや、だからな」
「決めた! 決めた!」
「いや、あのな」
「よっしゃ! 決めちゃったぞー!」
「いや……」
「ん?」
「……あーもぅ! もうええ、あしらうん諦める。ほらさっさと会場に入るで」
「はーい」

 前を歩くYシャツの背中に”うしろ”という文字が透けて見える変な男と、私は一緒にパーティに参加することにした。



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