POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /19 -


ハコニワノベル

 真っ黒から真っ白に見えているものが変わっていく。なんだろうこれは、何が起こってるのだろう。あまり思考がまとまらない。力が抜けて身体も動かせない。ただ、真っ黒だった見えていたものが切り開かれて真っ白になる。その真っ白の更に先で黒煙が立ち上っているのが見えた。更にその先を見ようとしてみると、まるで霧が晴れるように真っ白の先、黒煙のその先から何かが見えた。どうやらそれはカップのようだ。
 ――そこで意識が戻った。

「なにすんねん! お前!」

 両手と右足で相手を跳ね上げて距離を取り、ペチコパンツに仕込んだ弓矢を取り外して構えた。構えたものの、弓を引いた右手が震えている。今私は、弓を初めてから十年で初めての経験をしている。ほんの数メートル先にいる目標物に的中させるイメージがまったく湧かない。どんなときでも的中するイメージしか湧いたことがないというのに。射ったとしてもかすりもしないような気持ちになっている。弓は引いたままで、相手との距離を少しずつ開いた。

「なにしてくれてんねん」
「ん?」
「ん? ちゃうわ! お前、今なにしてん!」
「えーと? うーん、分からないね」
「分からないわけないやろ! あんなことしといて」
「あんなこと?」
「は、初めてやったのに! ってなに言わしとんねん! このどアホ!」
「いやぁ、それがさ……、本当に分からないんだよね」
「そんなみえみえの知らんふりすんな!」
「いや、だからさぁ、本当に分からないんだって」
「ほぉ? そんなにうちに殺されたいんやな?」
「殺される? 誰が?」
「お前や、お前!」
「殺してくれるの?」
「はぁ?」
「本当に殺してくれるの?」
「お前、頭おかしいんか?」
「大丈夫。頭はおかしくないよ。多分ね。でさ、どうせ殺してくれるなら、最後に教えてよ」
「何をや! ?」
「さっき僕は君に何かをしたの?」
「あのなぁ……、ふざけんのもたいがいにせぇや!」

 引いた弓から手を離す。シルエットの男に向かって矢が放たれた――はずなのに、一向に矢が飛んでいかない。「弓矢だ! かっこいい!」という声が聞こえ、弓から放たれた直後の矢を掴んでいる男の影だけが見える。さっき廊下を通せんぼしてきた変な男のように、こいつの動きも私には”見えていない”。まさか、こいつも十枚だろうか?

「でさ、僕は君に何かをしたの?」

 目の前、いや、目と鼻の先に男の顔が近付いていた。驚いて上半身を仰け反らせるようにすると、バランスを崩して後ろに倒れてしまった。相手が敵意をもって攻撃を仕掛けていないとはいえ無様過ぎる。咄嗟に反省しつつ受け身のことを考えた途端、私は背中から床に落ちることもなく、身体は斜めになったままで静止した。直後、浮遊感を感じたと思ったら、自分が抱き上げられていることにやっと気が付いた。これは俗にいうお姫様抱っこ状態だ。

「ちょ、な、なにすんねん、ボケ!」
「ん?」
「だから、ん? ちゃうわ!」
「えーと? うーん。なんでこうなってるんだろうね?」
「お前が聞くなや! うちが聞いとんねん! お前、なにしてくれてんの! ?」
「いやぁ、それがまったく分からないんだよね。だから教えてくれる?」
「なんで分からへっ……、ん! ?」

 また、しゃべれなくなった。柔らかい。二回目だ。いや、二回目だ、じゃない。なにを冷静に考えているんだ。そんなことを考えている場合じゃない。引き離さなければ、なんでこんなどこの誰とも知らない奴とこんなことをしなきゃならないんだ。腕で引き離そうとしても、うまく腕が動かない。蹴り倒そうにも、身体をひねろうとしても、拒否するために暴れようにも身体に力が入らない。そのまま一瞬だったのか、一時間だったのかも分からない時間が過ぎ、ようやく唇が解放された。

「……あれ? 僕、君に何かした?」
「ドあほか……、よぉこの状況で知らばっくれられるわ」
「うーん、分からない。なんでこんなことになってるんだろうね?」
「うちに聞くなや」
「ま、いいや」
「いや、よくないやろ」
「分からないことを考えても仕方ないよね」
「なんの開き直りや。なんやこれ、なんかこっちが悪い気がしてきたわ」
「君が悪いの?」
「んなわけあるかっ!」

 目の前のシルエットの男がヘラヘラと笑っているのが分かる。知らばっくれているわけでも、とぼけているわけでもなさそうだ。なんなんだろうこいつは。そしてなんなんだろうこの状況は。見えていたアクシデントを避けたはずなのに、避けられずにぶつかられるわ、押し倒されるわ、初めてを奪われるわ、初めて弓を外すわ、抱き上げられるわ、二回目も奪われるわ、もうなんやねんこれ。思い返しているうちに、怒りがぶり返してくる。

「いつまでこうしてんねん!」
「ん?」
「ん? ちゃう言うてるやろ!」
「ん?」
「二回言わすなや!」
「あー、なんでこうなってんだろうね?」
「だから、うちに聞くなや」
「うーん。なんで君は僕の腕に乗ってるの?」
「ちゃうわ! 逆や逆!」
「え? 僕が君の腕に乗ってるの?」
「あー、もうええわ。降ろせ! とにかく降ろせ!」

 そう言い終わるのと同時に気付いたのは、私は既に降ろされていたということだった。急激な変化に身体がついていかず、その場にぺたりと座り込んでしまった。仮にゆっくり降ろされていたとしても、今は身体に力が入らないので結局は立っていられなかっただろうけど。
 シルエットの男の姿が見えなくなったので、探そうとしてからすぐに辞めた。背中に温もりを感じたからだ。シルエットの男が、いや、今は位置関係が逆になったので見ようと思えばシルエットでない姿が見えるだろうけれど、振り返る勇気はない。なぜなら、その男が”いつの間にか”背中合わせに座っていたから。触れ合っていて温かいはずの背中に冷や汗を感じる。

「あ、そうだ。ねぇねぇ、教えてよ」
「……なにをやねん」
「あのさ、うーんとね」
「なんやねん。はっきり言いや」
「うん。あのね?」
「なんや?」
「君は、誰?」
「はぁ? そんなんこっちが聞きたいわ! お前こそ誰やねん! ?」
「あ、僕? 僕の名前は爽太(そうた)だよ」



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COMMENT

●じゅじゅさん

爽太がどうしてこうなのかは
いろいろと……げふんげふん。

爽太!キター!\(o ̄▽ ̄o)/ なんだー、「タノシソウ」どころか「スゴクヘン」だったんだねー、最初は^-^

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