POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /18 -


ハコニワノベル

 携帯電話を確認すると、バンチョから「どこにいるのー? 私たちはもう大広間入ったよー」というメールを受信していた。「こっちも、もうすぐ入る」とだけ返信して、マナーモードに一応設定しておいてから携帯をしまった。そのままエントランスの方へ戻ると、さっきよりも多くの人がいて、誰もが一様に階段を上って大広間の方へと吸い込まれて行くのが見える。その流れを縫うようにしてエントランスを通り抜け、さっきとは反対側の廊下を進む。
 この館の作りは左右対称になっているようで、さっきとまったく同じ作りの廊下が伸びている。等間隔に窓が並び、それぞれの窓に濃い緑色のカーテンが取り付けられている。数えてはいないけど、窓の数も同じなんだろう。そのまま廊下を突き当たりまで進むと、さっきとは反対側に折れ曲がっていて、そこをまた同じように曲がって進んで行く。すると、廊下の先に進めば進むほど暗くなっていく。それもさっきと同じだ。

「さっきはこの辺りやったかな」
「申し訳ない、立ち入り禁止だ」
「やっぱりか」
「悪いが、そうだ」
「てかどこにおんねん。まさか、また……」

 聞き覚えのあるセリフが聞こえた。恐る恐るさっきとは反対側になる左側のカーテンを確認すると、カーテンをマントのように羽織り、ストライプスーツの胸ポケットに真っ赤なハンカチを入れた、メガネの男がいる。これもさっきと同じだ。双子とかでなければ同一人物だろう。今から全力疾走で反対側の廊下に行ったらどうなるだろうか。と考えたけれど、無駄な体力を使う気も起きなかったので実行するのはやめておいた。

「こっちもあかんねや」
「すまない、決まりだ」
「さいですか、それはどうもすいません」
「分かったら、戻れ」
「あのさ、あんたはなにもんなん? もしかして、あんたも十枚の一人なんか?」
「それは、言わない」
「いや、そういう言い方するってことは半分肯定してるのと同じやで」
「それは、どうかな」
「いや、もう隠せへんやろ」
「なにも、隠してない」
「ということは、あんた十枚やな?」

 メガネの奥にある男の目が、少しだけ見開いた。かと思えば男はまた目の前から消え去ってしまい、目の前に続く暗闇の奥から男の声だけが聞こえてくる。相変わらず移動が”見えない”。

「それ以上は、入らないことだ」
「入ったらどうなるん? なにか罰則でも受けるんか? それともどこかに連れ去られるとか?」
「入ってみれば、分かる」
「そらそうやろ」
「とにかく、戻れ」
「なんでそこまで拒絶するん? 立ち入り禁止なんやったら、看板なり貼紙なりしておけばええのに」
「それも、そうだ」
「てか、ここから先は関係者以外立ち入り禁止ってことなん? 反対側の廊下の先も?」
「そういう、ことだ」
「なにが、そういう、ことだ。やねん」
「そういう、ことだ」

 あまり会話にならないので黙っていると、徐々に男が離れて行くのが分かった。それでも、そこから先に進む気は起こらなかった。さっきと同じように暗闇の奥で起こる未来を見ようとすれば、なぜか身体が震えだしてしまうからだ。まるで身体がそれを拒絶しているように思える。それと塗紙一から聞いた話から考えてみれば、十枚というのが道楽でパーティを主催してくれるような、お人好し集団でないのは明らかだ。今の男の話しぶりは少なくとも十枚と何かしらの関係があるというのが分かる。そうなってくると今ここで下手に手を出すのは危険だ。
 大きく息を吐き出してから回れ右をして、廊下をエントランス側へと戻って行く。歩きながら十枚というグループ、十人の十枚のことを考えていた。塗紙一はコーディネイトや、デザイン等を手がけていると言っていた。他の一族は何を手がけているのだろう。例えば一族の中に焼却とか、燃やすようなことを主にやっている一族がいれば、今日これから発生するであろう黒煙の犯人の目星になりえるのだけれど。それと一族内にはどれぐらいの人がいて、トップに立つというのはどういう意味を持つのかが知りたい。十数人ぐらいの中でトップを争っているレベルなのか、それとも数百人、数千人いる中で争っているのか。各一族ごとの確執などもあるのなら、今日のパーティで起こることの理由が見えてくるかもしれない。それが分かるだけでも、こちらの動き方が大きく変わる。いったいどんな理由なのだろうか。

 そもそも、誰が、なんのために、人の命を奪うのか。

 曲がり角が近付いたところでふと足を止めた。足を止めるだけでは足りなさそうなので数歩ほど後ろに下がった。なぜなら、真っ黒な何かが私にぶつかるのが見えたからだ。自分が怪我をするとか、何かしらの被害を受ける場合は、どんなに遅くてもそれが起こる前にその未来が見える。それを見越して対処すれば、無用なトラブルに巻き込まれることはない。そうやって今まで直接的なトラブルを被らないように生きてきている。いや、この時点までは生きてきていた――か。今まさにそれが過去のことに変わった。

 ――ドン。

 気が付いたら私は尻もちをついていて、なぜ尻もちをついたのかが分からず「何かにぶつかられた? いつ?」と状況の把握が出来ないままうろたえていた。キョロキョロと見回した中で人の気配があることに気付き、その気配の方へ視線を上げる。するとその先に誰かが立っているのが見える。窓から差し込む逆光のせいでシルエットしか見えないけれど、どうやら男のようだ。そのシルエットの男が私に近付いてくる。警戒を込めてじりじりと後退りしたものの、ほとんどその効果はなく簡単に追いつかれた。そしてそのシルエットの男が、なぜか私を押し倒した。

「な、なにすん……」

 そのまましゃべれなくなった。柔らかい。最初にそう思ってから、何が起こっているのかを理解するのにかなりの時間がかかった。いや、実際はどれぐらいの時間だったのかも分からない。ものすごく長い時間そうしていたような気もするし、ものすごく短い時間だったようにも思う。
 私はこのシルエットの男に唇を奪われていた。



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