POSITISM

適度に適当に。

09« 2017.10 »11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スラッシュ\パーティ - /16 -


ハコニワノベル

 我に返ってからすぐにさっきの背中を追いかけてみたものの、どこにも見当たらなかった。
 探すのを諦めて周りを確認しながら歩く。陽碧の館の中には入ったことが無かったけど、管理の行き届いているのがよく分かる庭が広がっている。庭の中央にはどこかの芸術家きどりな人間が作ったと思われる銅像が建てられている。きっと天秤を表しているのだろうけど、どうみても鍋にしか見えない。しかもそれが錆で血まみれになっているようだ。建てられた当初がどうであったにせよ、あまり趣味はよくない。
 手入れの行き届いた花壇を抜けると、植物で出来たアーチがあった。そのアーチを抜けると館の入り口が見えた。入口前にある噴水横で、何度も見た記憶がある服を着た二人組を発見した。

「あ、しーちゃん! やっほー!」
「やっほーちゃうやろ」
「しーちゃん随分ラフな格好だね」
「準礼装でええって書いてあったやろ? うちは中学生らしい格好の方がええわ」
「でもさー、たまにはこういうの着てみたいじゃん!」

 そう言うとバンチョが立ち上がってくるりと回って見せた。グレーのワンピースドレスに大きめのコサージュを胸元に付けている。「なんや、ココに付けなかったんや」と額をつんつんすると「つけませんよーだ!」と舌を出して拒否された。それにしても、小早川さんの変わりようがすさまじい。おしとやかに立ち上がるとシースルーの薄い青がまぶしいカクテルドレスに、大きめの桜色のリボンが目を引いた。胸元がかなり大きく開いていて、大人な雰囲気はばっちりなのだけど、どうしても背伸びし過ぎた感は否めない。

「どう?」
「いや、どう? って言われてもなぁ」
「可愛い?」
「……まぁ、そやね」
「ねぇ、可愛い?」
「いや、まぁ……」
「しーちゃん? 可愛い?」
「もうどないやねん! 可愛いって言われたいだけやんか」
「うふふ。だって言われてみたいんだもーん」
「ちょっと気合入りすぎちゃう? もっといつも通りのほうが、小早川さんは可愛いと思うで」
「しーちゃん、お世辞が上手ね」
「うわ、なんなん。バンチョ! 小早川さんどないしたん?」
「なんかさー、服買いに行ってから千紗のスイッチ入っちゃったみたいなんだよね」
「そういう願望があったんか……、人は見かけによらんとは言うけど」
「あ、そうだ。しーちゃんのパートナーはどこにいるの?」
「さっきまでおったで?」
「どんな人? もしかして男の人だったりして!」
「あー、もしそうならさ千紗、今日はお邪魔しちゃ駄目だぞー」
「一番邪魔しそうなのバンチョでしょ」
「あれ? バレた?」

 二人からやいやい言われながら「ほな、またあとで」と別れた。館の入り口から建物内に入ると、広々としたエントランスが広がっている。正面にカーブしている階段が左右に広がり、天井には巨大なシャンデリアが吊るされている。
 周りを見回しながらパーティの参加者と思われる人たちを確認していく。さっきの背中はここにはいないようだ。それにしても参加者がそれぞれに着飾って歩いているのを見るたびに、その多くの人が黒煙を巻き上げるのかと思うと滑稽に思えて仕方がない。黒煙の発生はこのエントランスではなく、もっと巨大な広間だった。スタッフだと思われる黒いスーツを着た人たちの説明によれば、パーティはさっきの階段を上った先にある大広間で行われるらしい。黒煙が立ち上るのはきっとそこだろう。
 ひとまず、ここに入る前に現れたあの背中を探すことにして、エントランスから廊下の方へ移動した。等間隔に窓が並び、それぞれの窓に濃い緑色のカーテンが取り付けられているのが見える。廊下を進みながら窓の方を確認すると、さっき歩いていた中庭が見える。中庭を横目に見ながら進んでいくと、趣味の悪い銅像が視界に入った瞬間に門が見えた。更にその門の外で黒煙巻き上げて燃えている人が二人。最初の黒煙はどうやら門の外で発生するみたいだ。
 視線を前に戻して廊下を曲がりさらに進んで行く。曲がってから人気がまったく無くなってしまった。そればかりか先に進めば進むほど暗くなっていく。

「申し訳ない、立ち入り禁止だ」

 突然聞こえた声の方を確認すると、ストライプのスーツに真っ赤なハンカチを胸ポケットに入れ、メガネをかけた男がいた。なぜかカーテンをマントのように羽織るようにしている。

「それはどうもすいません」
「すまない、決まりだ」
「ちょっと人を探してたもので。こちらには来ていないようなので戻ります。ご迷惑を……」

 軽く頭を下げようとすると、目の前から男がいなくなっていた。その直後に真後ろから声が聞こえる。

「悪い、時間だ」

 身体を反転させながら飛び退いた。ペチコパンツに仕込んだ弓矢を触って確認する。危険な予感がした。こいつは”私に見えない”移動を繰り返している。自分に振りかかる火の粉に関しては、今まで見たくなくても必ず見えていた。自分が怪我をするとか、何かしらの被害を受ける場合は、どんなに遅くてもそれが起こる前までにその未来が見えていた。だからこそ対処もできた。それなのに今、目の前にいる相手は、未来を見ることなく行動されている。こんなことはあり得ないはずなのに。

「お前か? さっきうちと一緒に入ったんわ」
「ごめん、人違いだ」
「さっきからなんやねんお前、ふた言でしかしゃべられへんのか」
「そうでも、ない」
「また、ふた言やないか」
「たまたま、だろう」

 そう言った途端、また視界から男の姿が消えた。廊下の先の暗闇から「それ以上は、入らないことだ」という声だけが聞こえた。徐々に男が離れて行くのが分かったものの、このまま先へ進んでいいことは何一つ起こりそうにない。それどころか、廊下の先で起こる未来を見ようとしてみると、身体が震え出してしまう。見ない方がいいということなのかも知れない。深追いをして知り合いを守れなくなるようなヘマはできないので、エントランスの方へ戻ることにした。



≪/15へ
/17へ≫

COMMENT

●じゅじゅさん

さて、誰でしょうか。ふふふ。

おぉ?((o( ̄ー ̄)o)) ワクワク
どっちだろ、S君かしら、Mちゃんかしら・・・((o( ̄ー ̄)o)) ワクワク

FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。