POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /12 -


ハコニワノベル

 真っ黒な何かが私にぶつかる。尻もちをついて見上げた先に真っ黒な何かがいる。徐々にその真っ黒な何かが私に近付いてくる。じりじりと後退りしているけれど簡単に追いつかれ、ついにその真っ黒な何かが私を――。場面は変わり、広い部屋のあちこちで黒煙が立ち上っている。焦げ付いた臭いと沢山の悲鳴の中でどうすることも出来ずに立ち尽くす。

「なんなんやろな、この未来……」

 詳細は分からないけど、例の招待状にあったパーティに参加さえしなければこの未来には辿り着かないはず。それでもこうして何度も見せられていることを考えると、回避できない何かがあるのかもしれない。
 ゴロゴロと遠くで雷が鳴っている。カーテンを少しだけ開けて外を確認すると、音もなく雨が降り注いでいた。携帯電話で時間を確認すると午前五時を過ぎたところだった。少しだけきつめに目を閉じて布団に潜り込んだものの、結局眠ったのか眠れなかったのか分からないまま起床時間を迎え、ため息と共に起き上がった。
 昨日寝る前に父が部屋の前までやって来たことを思い返す。「人が沢山集まるところに行くと危険なことになりそうだよ」と言っていた。父は私ほどではないけど、ほんの少しだけ未来が見えることがある。本人はそれが未来だとは言わないし、見えているとも言わない。多分、今までにそれを他人に言うことで様々なことを被ってきたからだと思う。最初は驚かれ、次に頼られ利用され、最後は恐れられ忌み嫌われる。抜け出せない負のスパイラル。

「人が沢山集まるところか……」

 横目で鍵付きの引き出しを確認する。疑いようはないだろう。世界を牛耳っているとまで言われるほどの権力をもった組織が主催するパーティなのだから、当然参加人数も多いはず。ただ、会場となる陽碧の館は何千人も入れるほど大きな館ではない。敷地内にという意味でなら可能だろうけど、パーティと銘打っているのだから室内だろうし、あの建物内で一番広い場所に入るとしても数百人程度なはずだ。
 宛名がないことから、あの招待状が誰宛のものなのかもまだ確定はしていない。祖母はまったく知らないようだったし、ここは父に確認をしてみた方が良さそうだ。制服に着替えてから父の部屋へと向かった。

「お父ちゃん」
「ん? 静香か?」
「おはよう。ちょっと入ってもええ?」
「ええよ……って、駄目! 今は駄目! 普段はいつ入ってもええけど、特に今は絶対に駄目!」
「別に今更隠したって遅いわ。入るで」
「あっ、だ、駄目ぇ!」

 朝から気分の悪いものを見てる。まぁ、あの未来よりはまだマシだから目をつぶろう。しかし、こうして目の前でアダルトな映像が入ったDVDを必死に隠す父の姿というのも滑稽なものだ。今までも隠せていないのだから、今更隠そうとするのは何のためなのだろう。しかもこの後、父は祖母にだけは言わないでくれ! それだけは勘弁してくれ! というようなことを、何度も私に言うことを既に知っている。それだけに余計に滑稽だなと思ってしまう。

「あ、ああ! あのね。お父ちゃんも、その、男だからさ」
「……」
「頼む! このことは母さんには内緒にして!」
「……」
「お願い! お願いだよ、静香」
「……」
「母さんにだけは言わないでくれ!」

 父が土下座しているのを朝から見てる娘というのはどうなんだろう。

「お願いします! それだけは、勘弁を!」
「……別に」
「ん?」
「別に言わへんよ」
「そうか! それは良かった!」
「良くはないやろ」
「え? あ、うん。そやね……」
「まぁ、ええわ」
「ほんと? 許してくれるの?」
「I don't forgive, I forget.」
「ん?」
「そのまんまの意味や」
「ん? んん?」
「そんなことよりも、お父ちゃん」
「なに?」
「とりあえず、パンツぐらいは履いてくれへん?」
「あ、き、キャー!」
「キャー! ちゃうし、胸なんか隠さんでええわ! 下やろ、下!」

 一発きつめにどついてから、十枚のことをそれとなく聞いてみたけど、父もパーティのことは知らない様子だった。となるとあの招待状は私宛のものだろうか。もしくはあちこちへ無造作に配られているものか。材質や文面から判断すればいたずらとは思いにくいし、見えてくる未来から判断すればいたずらにしてはことが大き過ぎる。あの招待状で二つ気になっていることは、十枚と呼ばれる世界を牛耳っているような組織が、より一層の親睦を深めるという目的のためだけにパーティを行うだろうか。もう一つは同じく招待状に書いてあった「大変重要な発表」という部分。それをわざわざ匂わせて内容を書かないところだ。宛名のない招待状を配って人を集めているし、パートナーと二人一組での参加を促しているのだから、ほぼ無造作に人を集めているように思える。無造作に人を集めて発表するぐらいなら、招待状に書いてしまっても問題なさそうなのに。

「考えるだけ無駄か……」

 吐き捨てるようにつぶやいてから、雨の中を学校へと出発した。
 そういえば今朝の朝食時は父がものすごくよそよそしくしていて「どうしたんや、大護?」と何度も祖母に言われ、何か話しかけられる度に私の方を確認してくるのが面倒だった。最終的には「なんや静香と喧嘩でもしたんか。どうせまたアダルトDVDでも見てたのがバレただけやろ」と断言されて、父は食後のお茶を盛大に吹き出していた。そんな父が少しだけ可哀想に思える。まぁ、自業自得やけど。
 あの未来を回避すればいいだけなのだから、帰ったら不参加の連絡をしてしまおうと決めていた。そうすれば無駄にアクシデントに見舞われることもない。それは間違いないはずだった。それなのに私は、この日家に帰ってから例のパーティに参加する旨の連絡をすることになる。そんなことになるとは見えていなかった。ただいつも通りの通学風景だと信じて疑わなかった。

「しーちゃんおっはよー! 雨だねー。あ、そうそう聞いて聞いて! 昨日さ、うちにパーティの招待状が届いたんだよ! それがなんかちゃんとした招待状でさ、宛名は書いてなかったんだけど私宛に間違いないよ、あれは。だからさ、私参加しますってすぐに連絡したんだ! すごくない? パーティの招待状だよ? あー、パーティなんて久しぶりだなー。楽しみー! あ、あれ? しーちゃんどうしたの? 怖い顔して……、あ、おなかでも痛いんじゃない? 食べ過ぎは駄目だぞー?」

 ほんの少し、黒煙がはっきり見えた気がした。



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