POSITISM

適度に適当に。

07« 2017.08 »09
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スラッシュ\パーティ - /07 -


ハコニワノベル

「あ、しーちゃんおはよう」
「おはよう、小早川さん」
「あれ? んふふふー」
「……どうしたの?」
「なんだろう、しーちゃんが嬉しそうだから、一緒に嬉しい気持ちになっただけだよ」
「私が?」
「なんとなくだよ、なんとなく。あ、バンチョだ。バンチョー! おはよう」
「おっはよー! あぁ! 静香様、静香様! ありがたや、ありがたや!」
「バンチョ、何してるの?」
「いや今朝さぁ、しーちゃんの予言のおかげで私は救われたんだよー」
「まったく話が見えないんだけど」
「今朝のびたがいなくなっちゃってさー」
「え、そうなの?」

 少しだけ二人から距離をとって歩く。最初は驚かれ、次に頼られ利用され、最後は恐れられ忌み嫌われる。それの繰り返し。呪文のように頭の中で繰り返す。

「どうしようもなくなってさー、しーちゃんに聞いたら一発だったんだよー」
「すごい!」
「だから、神様、仏様、静香様ってわけだよー。もう足向けて寝れないね。寝るかもしれないけど」
「たまに、しーちゃんって鋭いよね。それ以外のことはあり得ないって、まるで確信があるみたいに言い切ったりさ」
「……」
「そうそう、後で考えてみたらあの時! って思うことが多いよ」
「うんうん。もしかして本当に予言だったりして?」
「……」
「しーちゃん、実際のところどうなの?」
「私も気になる。ねぇ、しーちゃんどうなの?」
「……」
「んー?」
「バンチョ、しーちゃんの顔に近付き過ぎだって!」
「……」
「ま、そんなのどっちでもいいや。のびたは無事に見つかったんだから、それだけで十分」
「ははは。それもそうだね」

 ふいに祖母の言葉を思い返す。



「アホやなぁ。ええか静香、自分で生き辛くしたって何にもならん。そのままの自分を受け止め、受け入れてくれる人を探さなあかんで」



 その言葉と同時に見えた映像には、笑っているバンチョと小早川さんが見えた。それと、多分笑っている自分の後姿も。理由も分からないまま、今朝と同じように頬が濡れる。どうしようもなくなって立ち止まると、バンチョが駆け寄ってきた。お願いだから、今は側に来ないで欲しい。どうしていいのか、どういう顔をすればいいのか、なんと言えばいいのかさえ、今すぐには分かりそうもない。

「しーちゃん、どうした? むー、やっぱりさっき聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな? ごめん! 誰にだって聞かれたくないことや言いたくないこと、一つや二つ、いや三つ四つは……、ま、まぁ何十個かはあるよね」
「私も調子に乗り過ぎちゃって、その、ごめんなさい。しーちゃん、これで拭きなよ」

 差し出されたハンドタオルを受け取ると、思わず「おおきに」と言ってしまった。

「あれ? あれれ?」
「どうしたのバンチョ?」
「今さー、しーちゃん関西弁でしゃべんなかった?」
「そうだね」
「しーちゃんってさ、もしかして普段は関西弁でしゃべるのかな?」
「……」
「あのさー、もっかいしゃべってくれないかなー、関西弁」
「しつこいよ、バンチョ」
「私さ、関西弁というか方言大好きなんだよね。可愛いじゃん!」
「……どこが可愛いねん」
「キャー! 千紗今の聞いた? んもー、超可愛い!」

 いきなり抱きつかれて呼吸に困った。「ほんまにやめて……」と言ったあと、小早川さんがバンチョを引き離してくれるまで、ほとんど息が吸えないほど強く抱きしめられた。なんだか耳のあたりがそわそわする。

「殺すきか!」
「うぉー! 本場のツッコミだよ! 本物だよ! スナップが効いてるねぇ」
「ええかげんにせぇ!」
「うわー、しーちゃん顔真っ赤だよー。ますます可愛いねぇ」
「頭、なでんなや!」
「よしよし」
「……ぅ」
「バンチョ、ほんとにいい加減にしなさいね」
「うふふ、はーい」

 なぜかそのままバンチョと手を繋いで歩くことになった。振り解こうとしても離してもらえなかったので、抵抗するのはすぐに諦めた。昇降口でやっと手を解放してもらい、日焼けしたかと思うほどに熱くなっている顔に戸惑いながら、こっそり深呼吸をする。さっきから変だ、自分で自分を制御できていない。

「あー、そう言えばさー」

 上履きにはきかえながらバンチョが口を開く。

「駅前の本屋で昨日ボヤがあったらしいよ」
「あ、それ私も聞いた」
「なんか大騒ぎになったんだってー」
「突然燃え出したんだってね」
「爆弾じゃないかって話も聞いたよー」

 昨日見えた黒煙を思い出した。分かっていたことだけど、やはりボヤが起きたらしい。だけど爆弾みたいなものが原因では無かったように思う。少なくとも爆発物によって立ち上った黒煙ではなかったはず。それに燃えていたのは確か、本ではなくて――。そこまで思い出していると、目の前に別の黒煙が立ち上る映像が見えた。場所はトイレだ。その映像を注意深く見ると、更に分かったことがある。どこか見覚えのあるそのトイレは、この学校にあるトイレだ。黒煙に邪魔されてどこのトイレかまでは特定出来なかった。
 こういったアクシデントには極力関わらないようにしているけれど、場所が場所だけにこの二人が巻き込まれる可能性がある。集中して二人の未来を見ようとしてみたものの、さっきの黒煙の影響なのか黒くかすんでいてはっきり見えない。使いたいと思ったときに使えない力ほど役に立たないものはない。とにかく、今はこの二人を危険な目に合わすわけにはいかない。この二人はもしかすると私を受け入れ、受け止めてくれるかもしれないのだから。

「バンチョ、小早川さん」
「わわ! しーちゃんが私のことバンチョって呼んでくれたよ! 感激!」
「バンチョはちょっとだまっといて。今日トイレに行くときは私と一緒に行くって約束して」
「トイレ? うん、別に私は構わないけど」
「そりゃ一緒のタイミングだったら別にいいけど、そうじゃないときもあるよー?」
「とにかくトイレに行くときはうちと一緒に行動して」
「私はオッケーだよ。三人一緒だと楽しいしね」
「しーちゃん、そんなに私達と一緒にいたいんだね。やっと、やっと心を開いてくれたんだね。それと自分のことをうちって言うの可愛い」
「そんなん今はええねん。その、なんとも言えんけど、嫌な予感がするんよ」
「千紗、聞いた?」
「うん聞いたよ、バンチョ」
『静香様の予言だ!』
「やかましいわ!」



≪/06へ
/08へ≫

COMMENT


FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。