POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /05 -


ハコニワノベル

「ただいま」
「静香さん、お帰りなさい。お庭の方で大奥様がお待ちになられてますよ」
「すぐに行くって伝えといて」
「かしこまりました」

 家政婦である三杉さんにそう伝え、自分の部屋に入る。荷物を置いてから道着に着替えて、庭へと向かうと祖母が仁王立ちして待ち構えていた。

「お帰り」
「ただいま」
「部活は入部したんか?」
「したよ。弓道部」
「弓道部か、どんな感じやった?」
「んー。設備は大したことないかな。あと部員が私入れて五人。けど、雰囲気は悪くないよ」
「そうか、それはなにより」
「あと、顧問の本間先生がおばあちゃんによろしくって言ってたよ」
「本間? もしかして一朗太か?」
「うん、そう」
「あの古狸、まだ生きてたんか。それは愉快愉快」
「あの人、誰なん?」
「若い頃にな、お互いに弓で競い合った仲や」
「競い合ったって……、おばあちゃんと張り合える人いたんだ」
「静香、アタシを誰だと思ってんねん。アタシが弓で負けるとでも思うか?」
「ううん、思えへん」
「せやろ。もちろんアタシの全戦全勝や。せやけどあの古狸な、知り合ってからずっと、負けると分かってても挑んできよんねん。その根性だけは認めたらなあかんな。随分ご無沙汰やから、今度遊びに行ったろ」
「ええけど、うちがおらんときにしてや?」
「なんや、まだ学校で地を出してないんか」
「出すつもりないもん」
「アホやなぁ。ええか静香、自分で生き辛くしたって何にもならん。そのままの自分を受け止め、受け入れてくれる人を探さなあかんで」
「いないよ。おばあちゃんみたいにしてくれる人なんて。これから先でもそんな人、見えたことないし」
「ほぉん、まぁ……ええけどな。さぁて、ほな今日も弓の稽古始めよか」
「はい。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

 二百射して、的中も二百。三歳から始めた弓は、四歳のときには既に百発百中になっていた。そもそも、三歳の私に弓を教えてくれたのが祖母で、祖母が言うには「アタシの次に才能がある」ということらしい。才能の有無は分からないけれど、それから十年間毎日弓を引いてきた。今までは友達らしい友達もいなかったので、弓が一番の友達とも言える。
 道着を脱いで、浴室に入った。手早く髪と身体を洗って、三杉さんが準備してくれた湯船にゆっくりと浸かる。

「十年か……」

 弓を初めてから十年。人生に絶望してから十年。あっという間のようにも感じるし、やっと十年経ったようにも感じる。大きく息を吐きながら湯気の立ち込める天井を見上げた。



   ◆



「なんでも未来が見えちゃうそうよ」
「しかも的中率は百発百中らしい」
「それなら今週末勝つ馬でも教えてもらうかな」
「そんなことしたら、変な呪いでもかけられるんじゃないか」
「それにしても母親がいないんじゃねぇ」
「アレが母親を殺したって噂もあるぞ」
「やめろよ、縁起でもない」
「大護もとんでもない娘を授かったもんだな」
「まぁ、そのおかげで死なずに済んだんだろ」
「逆を言えば、見えたことを偽れば、誰でも殺せるんだよ」
「やめなさいよ」
「でもそうだろう? 今は三歳だからいいけど、これから大きくなるにつれて悪知恵も付いてくる」
「そうだな、そうなると手が付けられなくなるな」
「だから、いっそのこと今のうちに……」



「あー、バケモノだー」
「バケモノ! バケモノ!」
「……」
「お前がバケモノだって知ってるぞ! だってお父さんが言ってたし」
「バケモノ退治だ!」
「喰らえ、バケモノ!」
「うぁ、睨まれた! 呪われるぅ」
「早くお祓いしないと!」
「もう、バケモノは死ねよ」
「そうだ! そうだ!」



「死ね、死ね、早く死ね!」

「死ね、死ね、早く死ね!」

「死ね、死ね、早く死ね!」



   ◆



「誰が死ぬか、どアホ」
「なんや、またいらんもんでも見えてたんか?」
「……おばあちゃん。いつの間に」
「隙だらけやったで」
「見えてたんじゃなくて、思い出してただけ」
「それはそれで珍しいことやな。学校でなんかあったんか?」
「ううん。そんなんとちゃうよ」
「まぁ、なんかあったとしても、アタシは知ったこっちゃないけどな。ふっふっふ」
「……」
「なんやその目は」
「別になんでもない」
「ふぅん、なかなか生意気になってきたやないか。ええこっちゃ、ええこっちゃ」
「うち、先あがるね。おばあちゃん、のぼせないように気を付けてよ」
「了解、了解。おおきに、おおきに」

 身体をバスタオルで拭き、下着と肌着を着ただけの格好でドライヤーを手に取る。髪の毛を乾かしている自分を鏡で見つめながら、さっきまで思い出していたことを思い返した。いつだってそうだ、最初は驚かれ、次に頼られ利用され、最後は恐れられ忌み嫌われる。それの繰り返し。小学生になってからは未来が見えることは誰にも言っていない。ただ、見えてしまったことをそれとなく教えてしまって気味悪がられたことが多々ある。そこから呪いだとか、祟りだとか騒がれて、それが過ぎ去ると私の周りには誰も寄り付かなくなっていた。その方がこちらも気が楽だったから、あえて他人と関わろうとは思わなかった。
 成長するにつれて、見えてくる未来もはっきりした映像になった。十年前と比べたら、いつ誰に、何が起きるのかという、細かな部分さえ分かるようになった。昔は側にいる人の未来が無造作に見えていたけど、感情や思考を落ち着かせることで、ある程度見える範囲を自分のみに狭めるようになったのもつい最近の話。未だに怖くて試したことはないけど、集中すれば辺りにいる数十、いや数百人の未来だって見えるとは思う。それが出来たとして、何も変わらないことは分かっている。誰かに心から信頼されることなんてない。所詮、私は人外の存在なのだから。



   ◇



「はじめましてー! 私、千代っていうんだ。よろしくね」
「……」
「あれれ? もしかして人見知りちゃんなのかな? 大丈夫、安心して! 私はとっても優しい心の持ち主だから、怖くないよ」
「……」
「んもー、無視しないでよー。ねぇねぇ、私と友達になろう! うん、そうしなよ! ね?」



   ◇



「どうせ、同じことの繰り返しになるだけや」

 パジャマに着替えて自分の部屋へ逃げるように戻った。その日は夕飯を食べずにそのまま眠りについた。



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