POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ\パーティ - /03 -


ハコニワノベル

 見えていた通りの授業が終り、終礼を終えてから渡り廊下を歩く。そのまま各部活動の部室として主に使われている旧校舎を抜け、鳳華中学の敷地内で最も奥に位置する弓道場へと移動した。鳳華中学では一学期の中間テスト終了後に、各部活動への入部を行うようになっている。別に部活動に入る必要性はまったく感じないのだけれど、育ての母である祖母に「絶対に入らなあかん。あんたのためや」と、やんわり脅されたので弓道部を選択した。祖母に逆らおうとすると散々な未来が即座に見えてくるので、今まで一度も逆らったことはない。それでなくても祖母は私の人外な部分を知りつつ、特別扱いや忌み嫌うこと無く接してくれる人で、祖母がいなければとっくの昔に自分で人生に幕を下ろしていたのだろうから、感謝してもしきれないし、尊敬しているので逆らうつもりはさらさら無い。
 弓道場に足を踏み入れてみると、かなり古いらしく建付けが少し悪くなってきている印象を受けた。しかし倒壊してしまうような未来は見えていないので、道場としてはしばらくは機能するだろう。射場の床はあまり清掃されているようには見えず、矢道にはチラホラとゴミが見える。的場は一応近的と遠的があるものの、安土の状態はあまりよろしくない。今朝、紫ノ宮泉に言われたことを思い出した。「この鳳華中学の弓道部は設備も環境もよろしくなくってよ?」だからどうした、そんなことは知っている。別に私は所属するだけで構わない。

「あれ? ねぇねぇ雛、あの子入部希望者かな?」
「ん? どうだろ。あんなに小さかったら引き分けすら出来ないんじゃない?」
「ちょっと聞いてみるよ。へーい彼女ー! 入部希望者かーい?」

 袴姿の女子二人組がこちらに近付いてくる。二年生らしいので先輩ということになりそうだ。

「えっと、私は弓道部二年の島崎朋笑(しまさき ともえ)、でこっちが」
「王子雛(おうじ ひな)、トモと同じ二年だ」
「どうも」
「で、わざわざこんな奥地まで来てくれたあなたの名前は?」
「一年五組、七ノ宮静香(ななのみや しずか)です」
「もしかして、入部希望者?」
「えぇ、まぁ」
「やったー! やったよ雛。これで団体戦に出られるね」
「トモ、ちょっと待てって。いくらなんでも先走り過ぎ」
「とりあえず入部届けは受け取っておくよ! ふふふ、これでもう逃げられないからね」
「腹黒い部分が出ちゃってるぞ、トモ」
「えっと、七ノ宮ちゃん。弓道の経験はあるのかな?」
「はぁ、まぁ」
「あるんだ! やった! 雛これで来月の大会は団体戦もエントリーできるよ!」
「だから待てって。七ノ宮さん、突然で悪いんだけどさ、ちょっとさ射ってみてくれないかな。そこの近的で、射法のみでいいから」

 ――スタン! スタン! スタン!

 とりあえず三度矢を放っておいた。今日も百発百中やな。振り返ると二人が口を開けたままで的を見つめている。

「ぜ、全部中白だよ雛……。私、今まで同じ的に連続して中白に当てたことなんてないよ」
「私もないな……。七ノ宮さん、弓道の経験あるって言ってたけど、どれぐらい?」
「十年」
「じゅ、十年? 私らより経験年数あるんだ……、だからか。ほぇ、びっくりしたよ」
「トモ、さっきは先走り過ぎって言ったけど訂正。これはいけるぞ」
「だよね、だよね。えっとね七ノ宮ちゃん、来月さ規模は小さいんだけど弓道の大会があってね……」
「上坂弓道大会ですね」
「そう! その大会に私たちも出場するんだけど、今部員が四人しかいなくてね、団体戦にエントリー出来なかったんだよ。七ノ宮ちゃんが入部してくれたからさ、憧れの団体戦に出られそうだよ! ありがとう」
「ちょっと待て、トモ」
「なに?」
「あのさ、七ノ宮さん。ご覧の通りうちの弓道部は設備も悪いし、団体戦に出場できないほど部員数もいないようなレベルの低い部活動だよ」
「ちょっと雛、何を言うつもりなの?」
「七ノ宮さんレベルの弓術があるならさ、もっといい環境で練習すべきじゃないかな。低いレベルの環境で練習するよりもさ」
「ちょ、ちょっと雛! そんなこと言って入部取り消されたら困るんだけど!」
「だけどさぁ、上を目指せる人は上を目指すことが出来る環境で練習すべきだと思うぞ、私は」
「それはそうかもしれないけどさぁ……」
「あの」
「はい、なんでしょう」
「私が入部したら困りますか?」
「全然、まったくそんなことはないよ。ね、雛」
「まぁ、入部したいって言うなら止めはしないさ」
「良かった。それじゃぁ、よろしくお願いします」
「ほんと? やった!」
「本当にいいのか?」
「えぇ、元々入部する気ですし、仮にここで断っても島崎先輩が入部届けを勝手に出すでしょうし」
「え? なんでバレたんだろ?」
「悪いな、トモは自然と腹黒いことをしでかす奴なんだ」
「そんなことはありません。私は純白な心の持ち主ですよ」

 残り二人の部員も二年生で、私と同学年での入部希望者は今のところないらしい。ちなみに、今年はこれ以上部員が増えないことがさっき見えたので「入部希望者が来たってことは、あと何人か来るかも!」と喜んでいた島崎先輩の思惑は外れる。もちろんあえて言うつもりはない。

「おぉ、お客さんとは珍しい」
「イチロー! 聞いて、聞いて! あの子、入部希望者だよ。ほら、これ入部届け」
「それはまた更に珍しい。どれどれ、七ノ宮?」
「一年五組、七ノ宮静香と申します」
「あぁ、思い出した、思い出した。この間の中間テスト、学年一位の子だね」
「えぇ! 学年一位……。雛、恐ろしい、恐ろしい子だよ、この子は」
「学年一位は凄いなぁ。文武両道ってやつだ」
「だけどねぇ、わざと間違えちゃいかんよ。静香ちゃん」
「え……?」
「まぁ、いいか。それと、お婆さんは元気にされとるかな?」
「祖母をご存知なんですか?」
「まぁねぇ、古い付き合いだよ」
「祖母は毎日元気です。元気過ぎるほどに」
「はっはっは、そうかそうか。それはなにより。本間一朗太(ほんま いちろうた)がよろしく言っていたとお伝えて下さい」
「はい、伝えておきます」

 本間先生は国語を専攻していて、もうじき定年を迎えるお爺ちゃん先生だ。物腰が柔らかいのに、瞳の奥は芯が通っていて嘘は通用しそうにない。その証拠に、中間テストでわざと不正解を記入していたことが見破られている。一年生の国語を担当しているのは若松という女の先生なので、本間先生は私の中間テストには直接関わってはいないはずなのに。流石は祖母の知り合いだというだけはある。これで次回以降のテストで手を抜くことができなくなってしまった。一瞬、紫ノ宮泉のくやしがる顔が浮かんでしまい、ため息を出さないようにするのが大変だった。



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