POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /67(最終話) -


ハコニワノベル

 目が覚めて驚いたのは、泥のように眠っていたように感じているのに、翌日の昼だったということと、今回の騒動がまったくもって世間に露呈していないことだ。あれだけの死者を出して、あれだけの破損や被害があったにも関わらず、新聞はおろかニュースや、ネットに至るまで、どこを探しても情報らしきものは出まわっていなかった。まるで、昨日一日が夢だったのかと思うぐらいだ。それと、僕があれだけ活躍したという事実が闇の中に葬られるのは、どうにも納得がいかない。
 更に納得いかないのは、僕が入院している病室が六人部屋で、三好と高畑、あとは全員おじいさんとの同部屋ということだ。比較的軽症で済んだミッチー先輩と、ほぼ無傷の静香は入院の必要がなく、重症だった智子さんは集中治療室。残りの六人は森本部長と長谷川さん、ルー姉さんとじゅじゅさん、黒瀬さんとのんさんがそれぞれ二人部屋ということらしい。全身を包帯で巻かれた三好と高畑がそう言っていた。
 そして、これらを軽く超えるほど理解できないことがある。それは今、目の前で僕の検温をしてくれようとしている看護師が、ミッチー先輩だということだ。

「おっ、爽太目が覚めたんだ。元気ー? はーい、今から検温するからねー」
「何してるんですか?」
「ん? 検温だけど?」
「いや、そうじゃなくてその格好……、コスプレ?」
「何言ってんのよ。お手伝いよ、お手伝い」
「いやだからって、勝手にしたらマズいでしょ」
「大丈夫。私、昨日からここの病院で働いてるから。丁度さぁ人手不足だったんだって! 私も仕事なくなっちゃってたし、調度良かったよ。うん」
「それでもそんなに急に働けるもんなんですか?」
「大丈夫、大丈夫。だってここ、私の実家だしね」
「はぁっ?」

 ベッドに書かれている病院名を確認すると、上坂西病院とある。ここらじゃ一番大きな病院じゃないか。確か、両親が地元で医者をやってるとか、なんとか言っていたような気がするけれど、地元ってここらのことだったのか。間違いなくいいとこのお嬢さんじゃないか。

「あの、検温ならカーテン閉めなくていいと思うんですけど……」
「あぁ、暑いなぁ」
「今、冬ですよ? 暖房そんなに効いてないですし、暑くはないでしょ……って、ちょ……なにボタン外してるんですか……」
「あのさー、婚約者がいるってだけで、婚姻届けはまだ出してないんだよね?」
「まだ出してないですね」
「それならまだ、私にもチャンスあると思うんだ……」
「残念やったな、そんなチャンスはないで? おばさん」
「えっ! ?」

 思いっきりカーテンが開かれると、そこに無表情の静香がいた。隣のベッドから三好の「お、百点に限りなく近い美少女! ねぇ、君。俺と付きあわない?」という声が聞こえてうんざりする。そして、今この状況にもうんざりだ。

「静香ちゃん、……それでも私、諦めないからね」
「まぁ、好きなだけ誘惑したらええけど……、命の保証はせえへんからな、爽太の」
「あ、やっぱりこっちの命なんだ」
「あ、た、り、ま、え、や、ろ?」
「それでも諦めないからねーだ」

 ミッチー先輩はボタンを外したままの素敵な格好で、どこかに行ってしまった。そして目の前には、ものすごく冷たい視線を突き刺してくる、とてもとても愛しい人だけが残っている。あぁ、僕の命は大丈夫だろうか。

「久しぶり、静香」
「いつまで寝とんねん」
「さっき起きたとこだけどね」
「で、あのおばさんに誘惑されたんが、そんなに嬉しかったんか?」
「へ?」
「ちょっと心揺れたんと違うか?」
「何で?」
「そ、その……、ソレ」
「あぁ、コレ? コレは男の生理現象だから、気にしなくていいよ」
「誰もそんな気持ち悪いとこの話してへんやろ!」
「危なっ! 静香、病室内で弓射るのよくないと思う。ほら、周りに人もいるんだからさ」

 隣から「百点に限りなく近いけど、俺は遠慮しとくわ」とか聞こえたあと、静香が弓を引くのを止めるのにかなり手間取った。どうにもご機嫌が悪いらしい。なぜだろう、思い当たるふしはまったくないのだけれど。

「どうしたの? ご機嫌斜めだね」
「ソレ、さっき付けられたんか?」
「ん? どれのこと?」
「とぼけんなや!」
「いや、本当に何の話?」
「……なんで左頬にキスマーク残してんねん、死にたいんか?」

 静香がカバンから取り出した鏡を突き付けられて、初めて自分の左頬にキスマークが残っていることに気が付いた。多分、僕が眠っている間に、勘違いを通り越して自己催眠に陥ったミッチー先輩が付けたのだろう。やれやれだ。

「言い残したいことがあるんやったら、今のうちやで?」
「おぉ……、七ノ宮の巫女さんじゃ」
「え?」

 その後、同じ部屋のおじいさんが呼び寄せたと思われる、病院中のおじいさん、おばあさんが静香を取り囲み「ありがたや、ありがたや」と唱えだしてくれたおかげで、僕の命は助かった。そのまま静香に捕まっていると命の危険なので、他の病室へ遊びにいくことにする。「爽太、待ちぃや! ……だから弓は新年になってからやって言うてるやろ!」しめしめ、静香は身動きが出来ないらしい。これはおあつらえ向きだ。
 まずは集中治療室へ移動して中を伺う。が、中は見えない。こっそりと中を覗いてみると、様々な機器を取り付けられた智子さんの姿が見えた。在命であればそれに越したことはない。たまたま通りかかった看護師の方に話を聞いてみると、智子さんは怪我をした直後に運び込まれたので、一命を取り留めたらしい。のんさんが作り出した時間のゆっくり流れる世界のお陰だ。
 その足で黒瀬さんとのんさんの病室へ向かったものの、中に入るのは辞めた。廊下まで聞こえるイチャイチャした声と雰囲気だけでお腹が一杯になったからだ。まったく、そういうのは退院して家に帰ってからにしてもらいたい。
 次に、森本部長と長谷川さんの病室へお邪魔して、お茶とカステラを頂いて軽く話をした。森本部長はしばらくの間はマナー教室の講師になるらしい。妖精さんはゆっくりと趣味でもあるガーデニングをしながら、これからのことを考えるそうだ。
 最後に残った病室には、別に入る必要性はないと思って一度は通り過ぎた。しかし、一応形だけでもお見舞いしておくかな、などと考えたのが間違いだった。まぁ、こうなることは分かってて病室に入ったのだけれど。

「お、やっと目覚めたのか」
「いい所に来たね、爽太」
「あ、お元気そうでなによりです。それじゃぁ……」
「誰が逃がすかよ! おいルティ、やれ!」
「任せなさいっ!」

 簡単に、というかほぼ抵抗なく捕まってしまったけれど、一つだけ言っておきたいことがある。病室でムチを唸らせるのはどうかと思うんだ。

「あのさ、私もお前に質問があるんだけど、いいよな?」
「僕もじゅじゅさんに聞きたいことがありますよ」
「なら丁度いいじゃないか、まずこっちから聞くぞ。あいつにした最後の質問ってのはなんだ?」
「厳密に言うなら、あの場面では一つ目ですね」
「はぐらかすなよ、メンドくせぇ」
「確認ですよ、確認」
「確認? 何のだよ」
「願いを叶えてもらえるかどうかですよ」
「……ふぅん。なるほどな、だから”心配しないで下さい。私が保証しましょう。”か……」
「そうらしいですよ。じゃ、こっちも聞きたいんですけど」
「なんだよ」
「依り代、V2、V1って何ですか? 元、帝園グループ本部第二研究室室長殿」
「また下らないことだけはしっかりと覚えやがって、気持ち悪いな」
「答えましょうよ。じゃないと、言い振らしますよ?」
「更にメンドくせぇこと考えるなよ。ったく……、依り代ってのはな、作り出された神だよ」
「神ですか。じゃぁ、V2とか V1っていうのは?」
「verging on god。つまりどれだけ神に近いかって意味だよ。数字が小さい程、神に近いってわけだ」
「へぇ、そうだったんですか。あぁ、だからあの三本腕のバケモノがV1なんですね。あと、ちなみに本部に所属していたときに、じゅじゅさんが依り代を作ってたんですか?」
「……まぁな」
「そうなんですか。あ、SWSでしたっけ? あれって、じゅじゅさんは使えないんですか?」
「私がいたころは、あんなに簡単に、しかも安定して発動できるような代物じゃなかったんだよ。あれは私が抜けてからの技術だろうな、呼び名も変わってたし。私がいたころはハコニワ・システムという呼び名だったさ」
「ふむふむ、ついでにもう二ついいですか? 室長」
「おい! 二度と、私をそう呼ぶな。それを誓うなら、一つだけ答えてやってもいいぞ」
「誓いますよ、じゅじゅさん」
「やけに素直で気持ち悪いな……。まぁ、いいか。で、なんだよ?」
「どちらか答えたい方でいいんですけど、一つは十枚ってなんですか? それともう一つは、二把咬のみこっちゃんのことなんですけど」
「……それなら、十枚にしておくかな」
「じゃぁ、それで」
「十枚ってのは、帝園グループ本部を指揮する、いわゆる上層部だよ」
「へぇ。本部の上がいるんですか……」
「ちなみに十枚ってのは総称で、正しくは十のグループで構成されている。呼び名としては一族だけどな。ま、これ以上は下手に知らない方がいい。だから答えてやるのはここまでだ」
「まぁ、大体分かったんで許してあげますよ、じゅじゅさん」
「生意気だな。しっかしまぁ、尊敬するわ」
「何がですか?」
「いや、ルティに逆さ吊りにされた状態で、平然と会話していることにだよ」
「これぐらい、僕みたいな紳士中の紳士にとっては当たり前ですよ」
「はっ、何が紳士だ」
「あの、聞かないんですか?」
「何をだよ」
「僕がバケモノなのかどうかってことをですよ」
「はぁ? 何を言い出すかと思ったら、下らねぇ」
「いやぁ、普通は聞くんじゃないですかね。昨日も一度聞いてきたじゃないですか、依り代なのかどうかを」
「……まぁ、あのときはな」
「じゃぁ、何で今は聞かないんですか?」
「お前だって、私が過去に犯したバケモノじみた部分を聞こうとしねぇじゃねーかよ」
「それはほら、僕が紳士中の紳士だからですよ」
「はっ、お前なんかに気を使われてると思うと、おぞましい気持ちになるわ」
「僕はいつだって、周りに気を使っていますよ……。というか、そろそろ降ろしてもらえませんか? ルー様。そろそろ血流がヤバいんですけど……」
「それが人にものを頼む態度なのかぁい? イケナイ坊やじゃないか、もっとお仕置きが必要だねぇ」
「いやほんと、マジで勘弁してください」

 そこから解放されたのは、何度か意識が飛んだあとだった。解放されて病室を後にしようとドアに手をかけると「そう言えば、どうなった?」とニヤニヤしたじゅじゅさんが聞いてきたので、「何がですか?」と聞き返す。すると、とんでもないことを言ってきた。

「修羅場になったか? お前の左頬に付けた、私の熱いキスマークのおかげでさ。小谷の背中もかなり押しといてやったぜ」
「超人的な嫌がらせですね、じゅじゅさん」
「おばさん呼ばわりする方が悪いんだぜ」
「気にしてたんですね……」
「ま、頑張ってくれたまえ、色男君」

 僕の入院生活は、やたらと積極的に迫ってくるミッチー先輩と、毎回ナイスタイミングでそれを阻止しにくる静香との板挟みで大変なことになった。まったく、あの企画部一課の課長め、とんでもないクリスマスプレゼントをくれたもんだ。入院は十二月三十日までのほぼ一週間で、なんとか静香に命を取られることなく、最後は無事に退院することができた。
 じゅじゅさんが仕組んだ三角関係は、最終的に静香の目の前で、ミッチー先輩にきちんと断りを入れることで終りを告げた。最後の最後までじゅじゅさんはずっと笑いっぱなしで、いつかきちんとした仕返しをしようと思う。――いや、辞めておこう。何十倍にもなって返ってきそうだ。
 ちなみに、僕はこの三角関係の騒動中に、静香から全身にキスマークを付けられたのだけど、それは秘密ということになっている。だからこの話は他言無用だ。



  十二月二十三日、スラッシュ/ゲーム開催日の二十三時に場面は戻る。
 誰もいないKGCの二階フロア内に、一台だけ電源が入れられたままのPCがある。その画面にGSからのメッセージが表示されている。



   ◇



 スラッシュ/ゲーム 最終勝ち抜け参加者 各位


 黒瀬 渉(クロセ ワタル)
 
 願い:運がなくても報われるんだ!
 
 願いが抽象的なため、当面の生活(新しい働き先、家、食料、衣類)を帝園グループが保証します。


 小谷 美知恵(コタニ ミチエ)
 
 願い:引っ越ししたい。
 
 引越しで発生する全費用を帝園グループ本部が負担します。


 近重 純(コノエ ジュン)
 
 願い:忘れたい
 
 忘れたい記憶を申請後、帝園グループ本部が記憶除去処置を行います。


 高畑 義昭(タカハタ ヨシアキ)
 
 願い:ライトセーバーが欲しい
 
 使用されていたライトセーバーを寄与します。


 田中 瑠伊(タナカ ルイ)
 
 願い:おまえ100まで、わしゃ99まで
 
 本人及び配偶者の健康管理、健康診断を帝園グループ本部が一生涯保証致します。


 中居 智子(ナカイ トモコ)
 
 願い:流氷にのりたい。
 
 流氷に乗るための旅費、及び全サポートを帝園グループ本部が保証致します。


 野々村 杏(ノノムラ アン)
 
 願い:元彼とよりを戻すこと。
 
 既に願いが叶っていると判断し、お二人が結婚される場合には全費用を帝園グループが負担します。


 長谷川 琉々(ハセガワ ルル)
 
 願い:瞬間移動
 
 帝園グループ本部が研究開発を進めているワープ装置の実験参加を認めます。


 森本 麻里子(モリモト マリコ)
 
 願い:全身サイボーグ化
 
 帝園グループ本部による、サイボーグ化改造手術を受ける権利を認めます。


 三好 信彦(ミヨシ ノブヒコ)
 
 願い:一生遊んで暮らせるお金
 
 一千億円を指定口座に振込ます。※仮に足りなくなった場合に再度申請することが可能です。


 ×× 爽太(** ソウタ)※ミョウジ ニュウリョク ナシ
 
 願い:出世したい
 
 辞令、四月一日より右の者、帝園グループ本部、第二実働部隊への異動を命じる。


 以上。



   ◇



 To Be Continued






 ハコニワノベル最終章 第一部「スラッシュ/ゲーム」 完



≪/66へ

COMMENT

●scaさん

読んで頂いてありがとーでした。
個人的にも、少し長すぎたなと思ってます。
読みやすさ等も考えていきます!


●ミッチーさん

ミッチー先輩は相変わらず扱い易かったです。
振られたというか、元々が勘違いだというww


●樹さん

ありがとーです。
個人的に五月はインプットの期間かなと。
第二部はそれ以降に書き始める感じです。


●じゅじゅさん

全部明かしてしまったら
二部、三部がかけなくなりますからねw
続きをお楽しみに。(当然、何も考えてないw)


●まりモさん

まだ続きますよー。
きちんと最後まで書き終わりたいなと思ってます。
読了ありがとーでした!

うは~♪一部おわっちゃった~♪

ほんと面白かったです!
マイミクさんの日記読まずに、まっさきにこっち見てました。爆

そして、これがまだまだ続くんですね?

楽しみです!

でも、とりあえずお疲れ様でした♪

高畑の願いがツボすぎます、しのめんさん(笑)ところで爽太は「出世」したんですね?本部で働くんですね?いいんですか、爽太くん?

お疲れちゃんでした( ̄▽ ̄)ノ面白かったー!でも謎が残ったー!くそー!
第二部、楽しみにしてます(* ̄ω ̄)v

第1部おつかれさまでした。
続きを楽しみにしています!
  • 2010.04.17[土]

おつかれっしたー!
話にぐいぐい引き込まれて、更新が毎回楽しみでした。
第二部、第三部も楽しみにしてます♪
ミッチー先輩ついに振られたwww
最後までキャラが…げふんげふん(笑)

お疲れ様でした。
お疲れかどうか微妙にて不信です(笑)
爽太さん並みにパワーあるように感じますです( ̄∀ ̄;)
第2部、第3部、楽しみにお待ちしています。少し短いほうが良いです(笑)ウソデス
おもしろかったでーーーす\(^O^)/
  • 2010.04.17[土]
  • sca

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