POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /66 -


ハコニワノベル

 ザァザァという雨音の中で「ククク、いいでしょう。三つだけ、お答えします」と薄ら笑いのまま、白髪の男はこちらに振り向いた。表情は笑っているけれど目は笑っていない。そしてそのままの表情で「四つ目の質問がされた場合、血の雨が降ることになりますがね」と楽しそうに言った。

「それじゃぁ早速、一つ目なんですけど……」
「どうぞ」
「あなた何者ですか?」
「そう言えば、名乗っていませんでしたね」
「名乗ってないですよ。未だに僕の中ではオフィス荒らしという認識が強いですし」
「ククク。確かにオフィス荒らしと思われるのは、私としても心外です。いいでしょう、お答えします。私の名前は二把咬、尊と申します」
「にわかみ、みこと……ね。で、何者なんですか?」
「それは、二つ目の質問と捉えてよろしいですか?」
「んー……。それならその質問はいいや」
「そうですか。では、二つ目をどうぞ」

 どうやら完全にこちらに対して攻撃しようという気持ちはないらしい。きっとそれも、今に限った話だろうけれど。ついさっきまで感じていた、あの背筋が震えるほどの殺気は感じられない。それに、この段階で静香が何も言ってこないのだからきっと大丈夫だろう。――大丈夫だよね? 心の中で聞いてみたけど、静香は答えてくれなかった。

「……爽太、もう辞めろ」
「? どうしたんですか、じゅじゅさん」
「そいつとそれ以上しゃべるな」
「どうしてですか?」
「……もう関わるな」
「あの、二把咬って人を知ってるんですか?」
「……し、知らない」
「なら別にいいじゃないですか。僕にはあと二つ、どうしても聞いておきたいことがあるんですよ」
「あのな、私だって正確には知らない。知らないが、二把咬と言えば……」
「おっと、近重純。それ以上のおしゃべりは禁物ですよ。私が今発言を許しているのは、そこのおかしな人だけです」
「……くっ」
「ククク。理解が早い人は嫌いじゃないですよ。さて、二つ目はどうしましたか? どうしても聞いておきたいのでしょう? それとも、私を引き止めるだけの時間稼ぎだったりするんですかね」
「違いますよ」
「そうですか。少し安心しました。ですが、あと五分とさせて頂きましょうか。無制限に待たされるのは非効率ですので」
「なかなかケチですね」
「こちらも忙しいのですよ。さぁ、二つ目をどうぞ」
「二つ目は……、どうして真樹さんを殺したんですか?」

 視界の中でミッチー先輩が大きく動いた。落ちていたままの槍を拾って構えながら「爽太、本当にこいつなの! ?」と叫んでいる。ミッチー先輩をなだめるように手で合図しつつ、視線の先は白髪の男を捉えたままにしておく。

「真樹? それはいったい誰ですか?」
「女性、日本庭園、滝の上」
「あぁ、あの女性のことですか」
「あなたでしょ?」
「どうしてそう思うのですか?」
「そこの人と同じなんですよ」

 指を指す。その指先が指し示す先に、雨と血が混ざってできた大きな水たまりの中で、うつろな目を開いたままの紙咲さんが横たわっている。そして紙咲さんの胸には、直径十数センチの穴が空いているのが見える。あのとき、真樹さんの胸に空いていた穴に酷似している。

「なるほど」
「あなたでしょ?」
「ククク。ご名答です」
「質問に答えて下さいよ。どうしてですか?」
「あの女性の願いが危険だったからです」
「願いが危険?」
「あの女性の願いは”夢の中で逢いましょう”でした。困るんですよ”夢の中”という願いは」
「どういう意味ですか?」
「逢おうと思えば、故人にでも逢えることになるわけですからね。例えば、帝園グループの過去を知っている人と逢われたら、面倒になるのが目にみえています」
「いや、真樹さんはそこまで考えていなかったはずですよ」
「それは関係ありません。可能性がある。それだけで十分です」
「……」
「もう少し言っておくと、あの女性といつも一緒にいた、もう一人の女性も排除する予定でした。しかし、私が手を下すまでもなく、アガタに喰われてしまいましたね」
「それは……、朋美さんのことですかね? それも願いが関係してるんですか?」
「そうです。その方の願いは”願いが叶う”というものでした。無尽蔵に願いを叶えられては、帝園グループの被害も甚大なものになりますからね」
「……なんとなく、あなたがどういう人なのか分かりましたよ。じゅじゅさんが止める理由も、なんとなくですが、理解しました」
「ククク。あなたは見た目と普段の言動からは想像できませんが、頭のキレは良いみたいですね」
「なんですか、その頭のキレだけは良いみたいな言い方は。失礼だと思いますよ、まったく」
「これは失礼。しかし一番恐ろしいのは、この状況下であっても軽口を叩けるその度胸です。ククク、益々楽しみですよ。あなたみたいなのと再び相まみえるのが」
「そうですか。まぁ、いいや。……んーと、とりあえず質問は以上です」
「……それは冗談のつもりですか? あなたは三つ質問があると私を引き止めたんですよ?」
「冗談? まさか、そんなつもりはこれっぽっちもないです」
「と言うことは、三つ目の質問はそもそも無かったということですか……。少しガッカリですね」
「何を言ってるんですか」
「?」
「三つ目の質問は既にしてますよ。だから答えて下さい」
「既に? ……! ククク。なるほど、そういうことですか。それであれば”心配しないで下さい。私が保証しましょう。”と回答しておきましょう」
「それを聞いて安心しました」
「最後の最後まで抜け目の無い人ですね、おかしな……。そうだ、こちらも一つ質問させて頂きましょう」
「なんですか?」
「レディと、あなたのお名前をお聞きしたい」
「……だってさ、静香」
「七ノ宮静香や」
「これはこれは、ありがとうございます。レディ、以後お見知りおきを」
「お断りしたいところやけどな」
「ククク。さて、それからおかしな人、あなたのお名前は?」
「爽太」
「……フルネームでお答え願えますか?」
「僕の名前は……」

 口を開くと一瞬の閃光のあと、ほぼ同時に雷鳴が轟いた。

「……爽太」
「ククク、覚えましたよ静香さんに、爽太君」
「馴れ馴れしいわ。気持ち悪い」
「そうだそうだ! 馴れ馴れしいぞ、みこっちゃん」
「一応確認しておきますが、みこっちゃんというのは……」
「え、尊って名前なんでしょ? じゃぁ、みこっちゃんでいいじゃないですか」
「そちらこそ、馴れ馴れしい。これはお互い様というやつですか……ククク、しかし悪い気分じゃない。いずれにせよ、またお会いしましょう」
「それじゃぁね、みこっちゃん。出来れば二度と会いたくないけど」
「ククク、その願いは残念ながら叶えて差し上げられませんね。……それでは皆さん、ごきげんよう」

 白髪の男が溶けるように闇に消えて行った。さっきまでそこにいたはずなのに、まるで最初からいなかったようにも感じる。少しだけ伺ってみたけれど、気配はまったく感じなかった。全身から力が抜けて「やれやれ」と口からこぼれたのと同時に、その場に座り込んでしまった。
 ザァザァと降り続いていた雨は、さっきの雷鳴のあとから少しずつ弱まってきている。

「爽太、あんた大丈夫なの! ?」
「ミッチー先輩、ちぃーっす」
「ちぃーっすじゃなくて、……というか他のみんなも大丈夫?」
「一番大丈夫そうなのは小谷みたいだな」
「あれー? じゅじゅさん随分疲れてません? いつもなら颯爽と登場するとこですよ、ここは」
「タコ、こっちだってボロボロなんだよ、誰かのせいでな」
「もしかしてそれ、僕のせいだって言いたいんですか?」
「そりゃそうだろ、お前がそのなんだったっけ? ムカムカだとかムラムラをさっさと使ってれば、私がここまでボロボロになることはなかっただろ」
「ムシャクシャですよ、無尺者。とある深い事情があってですね、使えなかったんですよ。まぁ、ムラムラなら基本的に毎日してますけど」
「出し惜しみか? 辞めろよそういう主人公っぽいこと」
「僕はいつでも主人公ですけどね」
「あの、あのね、あのぉ、そのね、爽太」
「なんですか? ミッチー先輩」
「その子は誰なのかなぁ? もしかして……彼女?」
「え? あぁ、違いますよ」
「そ、そそ、そうなんだ。良かった……あ、じゃなくて、そうだったんだー、へぇー。だったら誰なの? 余計に気になるんだけど……」
「ただの婚約者ですよ」
「へぇ、婚約者なんだ。ふぅーん……って、えぇ! ?」
「お前なぁ、どう見てもこの子、十代だろ……? 犯罪じゃないか?」
「十八や」
「十八! ? もしかして高校生?」
「せやで。三月で卒業やけどな」
「ほんとにこいつの婚約者なのか?」
「……それは、そ、そー、そうやけど?」
「……」
「おい、小谷! どうしたんだ? おい! しっかりしろ!」
「ミッチー先輩、何やってるんですかまったく」
「小谷! おーい、小谷? 聞こえてるか? 気絶しやがった、まったくなんなんだよいったい。……あ! そう言えば……」
「どうしました?」
「ねぇ、お嬢ちゃん」
「なんや?」
「あなたさっき、私のこと”おばさん”って呼ばなかった?」
「は? 空耳違う?」
「そうよねぇ、そうに違いないわよ……ねぇっ!」
「痛い……。なんで、僕がヘッドロックされないといけないんですか?」
「お前の未来の奥さん、なかなか度胸が座ってるじゃないか」
「……でしょう? って、痛いんですけど」

 その後、しばらくして雨は上がり、どこからともなく現れた大量の本部社員によって、いわゆる後片付けが行われた。噴水公園内の破損した部分はそのままになったけれど、あちこちに散らばっていた遺体や、依り代だったものなどは綺麗に痕跡が消されてしまった。それから、最後まで残っていたミッチー先輩に長谷川さん。三好に高畑、森本部長とルー姉さんとじゅじゅさん。黒瀬さんとのんさん、それから重症ではあるけれど智子さん。更に僕と静香の十二人は、有無を言う暇もなく、本部社員によって全員一緒に病院へと搬送された――らしい。
 僕の記憶はこの辺りで一度途切れてしまっている。



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COMMENT

●樹さん

ゲスト内で最初の被害者だったので
個人的にも重要な位置付けでした。

みこっちゃんは、私も好きです。
実在したらご遠慮しますがw


●じゅじゅさん

それらは最終話を読んでみてくださいませませw

あれ?てことは、生き残った人たちの願いは叶えられるんですよね?誰か「全身○○○ー○化」って願ってた人居ませんでしたっけ?闘いが終わったのに全身○○○ー○化してもらってもありがた迷惑ですよねー( ・_・)

で、そのぷつっと切れた記憶がどこに繋がるのか、楽しみです ^ ^
それにしても、殺されちゃった人たちのことを考えると、かなりへこみますね( ̄・ ̄*)

思わぬところで、再登場!!

あれじゃあ、エクスカリバーで切り上げても無理ですね、残念。

ちなみに、みこっちゃんタイプは読み物内限定で好きなキャラですよ、ふふふ。
  • 2010.04.16[金]

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