POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /60 -


ハコニワノベル

「近重純のお気に入りだけあって、なかなかしぶといじゃない。だけどね、どうせ逃げられないのよ? もう諦めたら?」
「何を、ですか?」
「生き残ることをよ! あの女のせいであなたたちは殺されることが決まってる。どうやっても勝てないし、どうやっても逃げられない。何をしたって見逃してさえもらえない状況なのに、なぜ諦めないの? 馬鹿みたい」
「見かけによらず、紙咲さんって頭悪いんですね」
「はぁ?」
「どうして、じゅじゅさんのせいになるんですか?」
「あの女が、私の十枚入りを台無しにしたからよ!」
「だから、僕たちが殺されると。いやいや、そうじゃないですよ、紙咲さん」
「?」
「あなたが、あなたの責任で、認められなかっただけです。そこにじゅじゅさんはまったく関係ない」
「……何を知ったような口を!」
「仮に僕たちがここで殺されるとしましょう。だけどそれは、じゅじゅさんのせいではなくて、明らかにあなたのせいですよ。こんな簡単なことも分からないだなんて、やはり紙咲さんって頭悪いみたいですね」
「……あんたに何が分かる? あんたに私の何が分かる? 私の十年間の苦しみの、何が分かるっていうのよっ! ?」
「さぁ? 何一つ、分かりませんよ。そんなもん、分かりたくもないですし」
「さっきから何をしてるんだバケモノ! さっさとこのゴミを殺してしまえっ!」

 しかし、階段の中腹あたりにいるはずのバケモノが動く気配はしない。「バケモノ! 聞こえてるでしょ! 早くしなさいっ!」声を荒らげて紙咲さんが叫ぶ。それでも、バケモノは動かない。

「それは無理よ」
「誰だ! ?」
「あの生き物は”命令のない世界”に行きました」
「あぁ。すみませんね、こんなとこまで出張ってきてもらって」
「気にするな。あれがラスボスってとこだろ? 少しぐらい俺たちも協力するさ」
「爽太君、あの子のことは心配しなくて大丈夫だからね。今も”時間がゆっくり流れる世界”にいるわ」
「ありがとうございます。黒瀬さん、のんさん」
「ど、どこから湧いてきてるのよ! さっきからチョロチョロと目障りだわっ!」
「依り代……、でしたっけ? あれがいないなら僕たちにも勝機ってものがありそうですね」
「私があの世界を解除しない限り、もう出てくることはないわ。本部のあなた、もう諦めなさい」
「……世界ぃ? あぁ、その武器はアダプターだね? ふぅん。あなた、アダプターがあるとはいえSWSを発動できるなんて才能あるわよ? だけど残念ねぇ、そんな大きさのSWSじゃ……、私に楯突くこともできないわっ! !」

 紙咲さんがパチンと指を鳴らすと、バケモノを囲んでいた四角い物体が、モザイクが晴れるように消えてなくなった。その中から三本腕のバケモノが出てくると「来い」という紙咲さんの声に即座に反応して、紙咲さんの側に飛んで行ってしまった。少しだけ見えた勝機が、見えただけで消えてしまった。

「そんな……、なんで?」
「SWSで作られた世界の中は、その世界のルールに縛られる。それが絶対のルール」
「だったらなぜ! ?」
「分からない? あなたが作った世界を、私が作った世界の中に入れたのよ。私の世界の中は、私がルール。あなたみたいな小さな世界、取るに足らない子供だましだったってことね。アハハハハ! 勝ち誇ってたみたいだけど、所詮はゴミが増えてもゴミね」

 気だるそうに紙咲さんが左腕を上げると、街灯に照らされて光りながらワイヤーが伸びて行く。「うぉ!」という黒瀬さんの声に振り向くと、のんさんと一緒にワイヤーで絡め取られてしまっている。まるで手品のように、スルスルとのんさんの世界の杖が空中に浮かんでいき「これは邪魔ね」と紙咲さんが左手の人差し指をクイと動かした途端、世界の杖が大噴水の中に放り込まれてしまった。

「さぁて、邪魔者はいなくなったわね。これでやっと君が栄えある百二十九人目になれるのよぉ。そ・れ・よ・りぃ、さっきなんだか生意気言ってたから、ちょっとお仕置きしてあげないとねぇ」
「いや、遠慮しますよ」
「遠慮する権利なんてあるわけないでしょ。さぁバケモノ、あのゴミを捕らえなさい。いいこと? 殺すんじゃないわよ?」

 ゴボウを構える暇すら無く、気が付いたときにはバケモノの巨大な腕で身体を掴まれていた。そういえば、イギリス庭園で見かけた三人の死体は、ことごとく骨を折られた状態だった。あれはまるで、巨大な腕で握り潰されたみたいに。
 ――残念なことに、その想像は間違いではないらしい。

「捕まえたぁ! ほぉら、近重純! 見えるかしらぁ? ちゃんと見ときなさいよ。あなたのお気に入りが、今から弄ばれて死んでいくところをねっ!」
「……ちっ」
「バケモノ、少しずつ握る力を強くしていきなさい。一思いにやるんじゃないわよ? ジワジワと強めていきなさい」
「ぐっ……、あぁ!」
「あらぁ、いい声出すじゃない。私、そういう声が聞きたかったのよ。気絶なんてしないでね、ボクぅ」
「あぁっ……がっ」
「いいじゃない、いいじゃない。苦しみなさい、苦しみなさい。近重純に聞こえるように喘ぎなさいっ! アハハハハ! アハハハハハ! アハハハハハハ!」
「……くそっ」
「あら、近重さん。何かおっしゃったかしら? 言いたいことがあるなら言って頂いても構いませんよぉ?」
「ぎぃっ! あがっ……っ!」
「あらあらボクも必死ねぇ。何も考えずに抵抗するの辞めちゃえばいいのにぃ。何したって結果は変わらないのよぉ?」
「……音々! もう辞めろっ……辞めてくれっ! お前の望む通りに私が従うから……、だからもう辞めてくれっ!」
「えぇー? 何ぃー? 全然、聞こえないんですけどぉ? アハハハハ!」

 身体の骨が軋む音しか聞こえない。ゴボウがほんの少しだけつっかえ棒のようになってくれているけれど、こうもゆっくりと力を加えられていくと、ゴボウ自体が曲がってしまってあまり効果がない。奥歯を噛みしめて声を出さないようにしてみるけれど、骨が軋むたびに襲いくる慢性的な痛みが、僕の顎をこじ開けてしまう。それから、痛みを感じるのと同時に、意識が飛びそうになる。
 このままだと、――また。



   ◆



(これはもう、どうにもならないね)

「さぁ、それはどうだろう」

(この状況なら、考えても考えなくても同じじゃないかな?)

「だったら、考える方を選ぶよ」

(強情だね)

「責任感が強いのさ」

(無駄な努力だと思うけど)

「やってみなきゃ分からないよ」

(やってみてこの結果だろう?)

「……」

(君は頑張ったよ。もう十分なほどにね)

「……」

(もうそろそろさ、休憩してもいいんじゃないかな)

「……」

(無駄なことを考え続けるの、辞めちゃいなよ)

「……ははっ」

(何がおかしいのさ?)

「いやぁ……、別に」

(もう疲れてるんだよ。考えるのを辞めて、本気を出せばいい)

「いやだ」

(なぜ?)

「なぜって? いやぁ、それがさぁ、それどころじゃなくなったみたいなんだよね」

(殺されそうなのに?)

「まだ殺されかけてもいないよ。それは多分これからだ」

(どういう意味だい?)

「あれが見えない?」

(あれ? あれってなんだい?)

「赤いなぁ……、なんであんなに赤いんだろう」

(赤い?)

「赤過ぎるよなぁ、あれ」

(……)



   ◆



 意識が完全に落ちようとしていた間際に、僕の視界に入ったものが意識を現実に引き戻した。意識が戻ってくると、今度はその現実に「……ははは」と、笑うしかなかった。

「あらぁ? まだ意識があったのぉ? こんな状況で笑っちゃうなんて、可哀想に。もう壊れちゃってるわねぇ、この子」
「……それ、は……、どうですか……ね」
「まだ強情な口が聞けるなんて信じられないほどしぶといわね。それとも今生のお別れでもしたいのかしら? いいわよぉ、死ぬ前に近重純への恨み言でも言っておきなさい。あなたさえいなければ良かったのに! とかね? アハハハハ!」
「……」
「ほら、早く言いなさいよっ!」
「……くっ、苦し……くて、声が……」
「バケモノ! 少し力を緩めなさい、逃がさない程度によ。……さぁ、恨み言を吐き出しなさい。そして近重純を苦しめるのよ。アハハハハ! いいわよ! いいわ! 最高の気分!」
「……はは。あの……、紙咲さん」
「私にじゃなくて、近重純に言いなさいよ」
「そ、うじゃ、なくて……。紙咲さん、あな、たの負……けみたいですよ」
「私が負ける? どうやって? もう私を、ううん。そのバケモノすら倒せるような参加者は残っていないじゃない。それとも何かしら、あなたが今からそのバケモノを倒してみせてくれるのかしら?」
「赤い……」
「は?」
「赤いよ……なぁ」
「なにこの子、幻覚でも見えてるんじゃない? せっかく、近重純への恨み言が聞けると思ったのに……。まぁ、いいわ。これ以上妄言に付き合ってられないし、そろそろ殺してあげる」
「音々! 辞めろっ!」
「だから聞こえませぇーん。アハッ!」
「……どうりで数が足りないわけだよな。はははっ! ……最悪だ」
「また意味不明なこと言っちゃってるし。もう、そういうの聞きたくないわ。バケモノ、もう一思いにそいつを潰して……」

 息を吸え、しっかりしろ。じゃないと殺されるぞ。
 短く考えて実行に移す。息を吸って、思考を回転させる。駄目だ、どんなことをしても、どんなことを言ったとしても、殺されるイメージしか湧かない。「はははっ!」笑えて仕方がない。これはもう――駄目だ。

「紙咲さん。僕は今、たった今、今日一日で初めて死を覚悟してますよ」
「それはそうでしょう。だって、君は今から死ぬんだからね!」
「それにしてもアレは、やり過ぎだろ……」
「はぁ?」

 僕の視線が明後日の方向を向いているのが気になったのか、紙咲さんが僕の視線の先を確認する。僕の視線の先には、葉の落ち切った大きなイチョウの木が並んでいるのが見えている。奇妙なのは、そのイチョウの中の一本が赤々とライトアップされていることだ。更にその赤いイチョウの木の上に、キツネのお面を付けた巫女さんの姿が見える。赤い光に浮かび上がるその異様な姿は、恐ろしいほど美しく、恐ろしいほど猛々しい。お稲荷様がそこにいた。
 やれやれ、これは本当に死を覚悟しなければならないな。



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COMMENT

●scaさん

お出ましになりました。
第五話からずっと決めてたタイミングですw


●じゅじゅさん

盛り上げて、最後にスッと収めたい。
そんな心持です。

来た、来た♪やっと来たー~( ̄▽ ̄~)(~ ̄▽ ̄)~
こっからががーっと盛り上がりそうだー♪

まぁ、素敵♪こんなところにお出ましになるなんて・・・。とても楽しみにしておりましたわ。次がとても気になりますぅ~♪
  • 2010.04.07[水]
  • sca

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