POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /58 -


ハコニワノベル

「え? じゅじゅさんって紙咲さんと知り合いなんですか?」
「まさか再会するとはこれっぽっちも思ってなかったけどな」
「どういう関係なんですか? あの人と」
「腐れ縁だろ。それ以上も以下もない」
「どうやら忘れてしまっているみたいね。あなたのおかげで十枚になることも出来ず、今もこうして私は本部の中間管理ばかりする羽目になってるのよ? 少しは思い出してもらえたかしら? 元、帝園グループ本部第二研究室室長、近重純」
「じゅじゅさんって、昔本部にいたことがあるんですか?」
「さぁ? 人違いじゃないか?」
「ふざけないでよ! 私があなたにされた仕打ちによって、十枚になるチャンスを失った。私はね、あなたを絶対に許さない」
「……」
「十三年前、私とあなたは未来の十枚入りを競い合っていた。周りからもどちらかが十枚に入るのは間違いないだろうとまで言われていたわ」
「……」
「あなたはなんでもテキパキとこなして、どんどん評価を上げていく。それこそなんでもよ」
「……ろ」
「あなたに会うまでの私は常にトップだった。それなのに、あなたが本部に入ってきてから私の影は薄くなってしまったのよ! 企画で負け、設計で負け、運営でも管理でも、経理でさえも負けた」
「……めろ」
「だから私はあなたが出来ないことに没頭したの。潜入、詐欺、略奪、分解、殺人。汚い仕事ではあなたに負けることはなかった。それなのに……」
「……やめろ」
「私が苦労して積み上げた功績を、あなたはたったの数回の仕事で越えてしまう。それまで汚い仕事をしなかったのは、出来ないからじゃない。やれば簡単に出来るから……。あなたが抜けてから十年過ぎたけど、未だに本部であなたの記録を塗り替えた人はいないわよ?」
「やめろって言ってるだろ?」
「私が言うのをやめても、あなたの過去は変わらない。そうでしょう? 一日だけで百二十八人をたった一人で始末した過去は変わらないわ」
「……」
「その頃にはもう、次の十枚入りは近重という話ばかりで、私の名前はどこからも聞かなくなった……。だけどね、私は別に負けを認めていたし、あなたが十枚に入るなら仕方ないとさえ思っていたのよ? それなのに、それなのに……」
「……」
「急に嫌になったとか言って、あなたは本部から抜けた。十枚入りの誘いがあったのも蹴ってね。あの後、本部はあなたをかなり探したのに見つけられなかったから、十枚からかなりの重圧がかかったわよ。それから、あなたがこなしていた仕事が、全部私のところにくるようになった。くるようになったけれど、私がその仕事を終えると決まって言われたのは、”近重じゃないからこの程度なのは仕方ないか”ってね! どんなに完璧にこなしても”近重じゃないから”と言われるこの苦しみが想像できる? 完璧に仕事をこなしているのに、私には十枚入りの誘いがかからなかった……。全部、全部あんたのせいよ! 近重純! !」
「……話はそれだけか?」
「それだけ? 私の全てがそれだけで済まされると思わないでよ! ?」
「あのさ、熱く昔話を話してくれたことには感謝しとくけど、私にはもう関係ない話だな、それ」
「……アハハハハ! 相変わらず憎たらしい女ね。だけどね、関係ないで済まされないわよ? 今回のスラッシュ/ゲームが、なぜ上坂ガーデンカンパニーで行われると思う? もしかして本当に業績不振が原因だとか考えてるのかしら?」
「お前、まさかっ! ?」
「アハハハハ! その顔、最高よ。今現時点で何人が死んだと思う? 百二十八人よ、百二十八人。あなたがいるせいで、罪もない人が百二十八人死んだの。だけど安心して、あなただけは死なないから。十年間も塗り替えられることのなかった記録を、あなた自身が塗り替えるのよ。そのためだけに、あなたが存在していたというだけのために、このスラッシュ/ゲームは開催されたのだからね!」
「……下衆野郎っ」
「アハハハハ! アハハハハハ! アハハハハハハ! なんだか生存者を増やそうと努力してたみたいだけど、あと一人で十年間塗り替えられなかった記録が更新されるわ。既に逃げ場はないし、生き残ったゴミたちは全員死ぬの。あなたという存在がいたためにね! これからはたった二日で二百五十六人以上を殺したという事実を背負って一生苦しみなさい。私の十枚入りを台無しにしたんだから、これぐらい当然の報いよ」
「……くそっ」
「ほらほら、ぼやぼやしてると新記録達成になっちゃうわよ? そのショットガンで私の依り代と戦ってみる? そう言えば弾切れなんでしたっけ? アハハハハハハ! 他の生き残ったゴミが死んでいくのを、そこで何も出来ずに見てなさい」

 隣でじゅじゅさんが震えている。きっと寒いからじゃなくて、怒りによるものだろう。百二十八人の命が奪われた理由が、こんな個人的なことなのだから、じゅじゅさんが怒るのも仕方がない。それにしても、僕以外の参加者をゴミと呼ぶのは感心しない。僕のように高貴な紳士ではないにせよ、みんなそれぞれに一生懸命生きているのだから。そんな一般人をそれこそ本当にゴミのように扱うような奴の方が、よっぽど下衆だと思う。

「じゅじゅさんって元本部の人だったんですか?」
「さぁな」
「しかも、第二研究室の室長とかで?」
「さぁな」
「依り代、V2、V1。ふむふむ」
「……うるさいぞ爽太、少し黙ってろ」
「あー、そういうことを言っちゃいますか?」
「?」

 じゅじゅさんに「怪我人は、ここにいてくださいね」と、貸していた肩を返してもらった。「ちょっと待て、お前何するつもりだ! ?」と聞かれたので「百二十九人目には、ならないつもりですよ」と返した。
 ゴボウを構えつつ紙咲さんの方へ近付く。さっきまで暴れまわっていた三体目のハンターは、紙咲さんの側で大人しくなっている。大人しいと言うよりは、電源の入っていない機械か何かのように微動だにしていない。さっき”私の依り代と戦ってみる? ”とか言っていたのだから、ある程度は言うことを聞かせられるらしい。やれやれ、随分と厄介な状況だなこれは。

「あらあら? 近重さんのお気に入りの坊やが、栄えある百二十九人目になってくれるのかしら? ウフフフフ、それも楽しそうね」
「ま、待て!」
「あれあれ? どうしたんですか、そこの怪我で動けない近重さん。何かお話でもあるんですかぁ? アハハハハ! 私には待つ理由も! 意味も! 意義も! 義務も! 義理も! 何一つない! 行きなさいバケモノ! あの坊やをたっぷりイジメてから、近重純の見ている目の前で殺しなさい」

 微動だにしていなかった三本腕のバケモノが、首だけ動かしてこちらを確認してくる。そして徐に三本目の巨大な腕を引きずりながら近付いてくる。――ズリズリ、――ズルズルという音を何度か続けて鳴らした後で、その巨大な腕を振り上げながら「クケケケェーーーッ!」と二つの口でステレオのように叫んだ。そして振り上げた腕を振り下ろし、地面に叩きつけた反動で一気に目の前に飛び込んで来る。

「おわっ!」

 なんとも言えない言葉を発しながら、その突進をまともに喰らって吹き飛ばされる。突進自体はゴボウで受けたので大したダメージではない。しかし、その吹き飛ばされている最中の僕の視界に、更に加速して飛びかかってくるバケモノの姿が映った。こちらは空中にいるので避けようがない。加速した反動を乗せた巨大な腕が一直線に僕を狙って振り下ろされる。その腕を斜めに構えたゴボウで弾くように防ぐも、完全に勢いを逃がせられずに地面を擦るように叩きつけられた。そのまま飛行機の着陸時のようにズルズルと地面を滑り、見えない壁に背中からぶつかって止まった。
 その衝撃で意識が薄れかけるのを必死に堪えた。

「もうやめてくれ、音々!」

 じゅじゅさんが叫んでいる。それをとても嬉しそうに横目で確認しながら、紙咲さんがこちらに近付いてくる。

「頼まれて、はいそうですか。と引き下がるとでも思ってるの?」
「……」
「さぁ、トドメを……」
「それならここで死んでやる! 百二十九人目は私だ!」
「チッ! そうはさせないよっ!」

 突如、じゅじゅさんの身体が空中に浮かんだ。

「なっ?」
「残念でした。既にここは私の世界。あなたの思い通りには何一つならないのよ。アハハハハ! もう身動きもできないでしょう? そこでちゃんと見ときなさい! あなたのせいで死んでいくゴミたちの最後をね! さぁ、あの坊やの息の根を止めなさい!」

 バケモノが再び飛びかかってくる。起き上がろうとしても身体が思うように動かない。

「爽太! 逃げろっ!」



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COMMENT

●じゅじゅさん

音々はかなりねじ曲がってますねぇ。
嫌われるという意味では、悪役として合格点かなと。

その他いろいろについては
終盤のため、うっかり書けない内容が多いので
割愛しますw


●のんさん

もう、本当に終盤ですがあとちょっとで終り!
というわけでもないんです。展開としては終盤ですが
まだ書く内容は多い感じですかね。

もう少し、お付き合い頂ければと思います。

いわゆる「悪者」に、ちゃんとむかつけるのは、凄い文章力なんだろうなと思います。
どういう結末になるのか楽しみだけど、終わってしまうのは寂しいですね(´・ω・`)

音々はあのミユキよりタチ悪い!感情移入するなって方が無理ですよ、しのめんさん。10年も前のことをいつまでもぐちぐちと・・・ヾ(`◇´)ノ 「悪者」にもね、なんか理由があるんだろうなとか最初から悪い奴じゃないんだろうなとか、こう、情状酌量したくなる時があるんですけど、音々は許さん、ですよ。きっとね、僻み妬み嫉みで出来てるような女に決まってますよ。
話は変わりますけど、しのめんさんのストーリーはこっちの深読みを小気味よく裏切ってくれるんで毎回楽しみです ^ ^ちょこちょこ出てくる謎のフレーズを必死にググる楽しみもあるし、うん、いいわぁヽ( ̄ー ̄ )ノあの「十枚」がまさかの「座布団十枚」じゃないことを切に願ってます(* ̄m ̄) 

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