POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /57 -


ハコニワノベル

「じゅじゅさん、残念なお知らせがあるんですよ」
「なんだ?」
「実はですね、誰も逃げていないんです」
「なんでだよ! ?」
「正確に言うとですね、逃げられないんです」
「あぁん? それはどういう意味だよ」
「見えない壁みたいなもので、全員が中央広場に閉じ込められてるんですよ」
「見えない壁だぁ?」
「説明するよりも体感してもらった方が早いと思いますけどね」

 中央広場を越えて見えない壁のある地点まで移動すると、じゅじゅさんは僕を放ったらかしにして壁へと向かう。ショットガンの柄で何度か壁を叩いて確認すると、突然至近距離から発砲した。

「ちょ、じゅじゅさん! 跳弾したら危ないですよ」
「ちくしょう! 袋の鼠かよ」
「あの、さっきのハンターを倒して、元来た通路を戻れませんかね?」
「あれは無理だ。倒せる見込みがない」
「そんなにデタラメなんですか? 今までの二体も相当だと思いますけど」
「クラスが違い過ぎる。音々の野郎、あんなの連れ出すなんて何考えてるんだ」
「さっきから言ってる音々って誰ですか?」
「……とにかくだ、三体目のハンターとは戦わずに、なんとかここを切り抜けるぞ」
「切り抜けるって、どうやってですか?」
「……私が囮になる」
「で、その間にみんなで逃げろってことですか……。そのアイディアには乗れませんね」
「じゃぁ、他に何か方法あるのかよっ! ?」
「じゅじゅ、落ち着けよ。あんたらしくないじゃないか」
「くっそ、なんでショットガンなんかにしたんだろうな。バズーカかなにかにしとけば良かったぜ」
「バズーカだったとしても、ハンター相手に効果があるのかは微妙だと思いますよ」

 ――ズリ、ズリズリ。
 階段の下から何かを引きずっている音が、はっきりと聞こえる。隣にいるじゅじゅさんが「最悪だぜ」とか言っているけれど、その最悪な状況を実感していない。とりあえず、三体目のハンターがどんなやつなのかを確認してみるべきだ。立ち上がって階段の方へ移動しようとした。

「爽太、辞めとけ。近付くのは自殺行為だぞ」
「この状況なら、遅かれ早かれ近付かれますよ」

 いきなり襲いかかられたらこまるので、ゴボウを目の前で構えつつ階段に近付く。相変わらず何かを引き摺る音だけが聞こえる階段下を、覗き込むように確認した。そこには一人の人が歩いているだけだった。

「じゅじゅさーん、あれがハンターですか? ただの人にしか見えないんですけど」
「ただの人? はっ、よく見てみろよ」

 そう言われたのでもう少し確認してみる。街灯による逆光で顔はよく見えないけれど、身長は高くも低くもないし、身体は引き締まっているぐらいで、変な感じはしない。あぁ、よく見れば衣類を身に付けていないので、ただの人ではないな。変態だ。レディもいるというのに全裸なのだから間違いない。動きは遅くて、僕が普通に歩くよりもかなり遅い。こんなに遅ければ、走るだけで逃げられる気がする。

「あのー、全裸ってこと以外はただの人だと思うんですけど……。参加者と見間違ってないですか?」
「そんなバケモノが人間なわけないだろ……。とにかくもう離れとけ、やられちまうぞ」

 その言葉に対して「あれだけ遅かったら大丈夫ですよ」と返して、再び階段の下へ向き直る。しかし、そこにさっきまでいた全裸の変態がいなくなっていた。

「爽太! 上だ! !」
「へ?」

 言われるままに上を確認すると、僕の真上に全裸の変態がいた。いや、前言を撤回しなければならない。今、僕の真上にいるのは全裸の変態ではなくて、紛れも無く三体目のハンターだ。振り下ろされるハンターの拳をギリギリで避けつつ、距離を取る。振り下ろされた拳は、中央広場の石畳を大きく陥没させてしまっている。首を動かしてこちらを確認すると「クケケケッ」という重なった声を出した。声というよりも音に近い。その後、ゆっくりと立ち上がったハンターの姿が、中央広場の街灯によって映し出されていく。もはやこれは人の姿とは呼べるものではない。
 顔に目が四つ、鼻が二つ、口が二つ付いている。それでも、それらは一般的な人と比べた場合でも些細な違いでしかない。明らかに違うのは左肩だ。その左肩の後ろ側から、ハンター自身の身体よりも巨大な腕が、もう一本生えている。さすがにこれを人と呼ぶことは難しい。
 ズリズリ、ズルズルと巨大な腕を引きずりながら、ハンターが近付いてくる。その動きは最初に見たときと同じでかなり遅い。さっきはいったいどうやってあんなに上空まで跳び上がったのだろうか。相手と同じ早さで後ろに下がりつつ、さっきまでいたはずの階段部分を確認すると、さっき拳を打ち下ろされた場所のように、階段の一部が陥没して崩れているのが見えた。

「爽太!」

 再度叫ばれて視線を戻すと、またハンターの姿が消えていて、その代わりに石畳が陥没した状態になっている。上を確認してみたけれど、真っ黒な空しか見えない。右にも、左にもその姿がない。残っているのは後ろだけ――。
 振り向いたときには既に巨大な腕が襲いかかっている状態だった。ギリギリでゴボウで受け止めたのだけど、ゴボウを持っている腕の骨がミシミシと音を立てているのが分かる。踏ん張ってみたものの抵抗むなしく、身体はすぐに浮いて吹き飛ばされた。吹き飛ばされながら、階段の方へ飛ばされたのはラッキーだなと思った。上手くいけば元来た道から、見えない壁の外へ出られるかもしれない。
 ――その考えは階段を下りきった場所で終わった。なぜなら吹き飛ばされたまま空中で、何かにぶつかって下に叩きつけられたからだ。どうやら見えない壁で取り囲まれてしまったらしい。この壁がハンターでないとすれば、ある意味でこの展開は有り難いものかもしれない。

「みんなコイツに近付くなよ? さっきの爽太みたいに殺されるぞ」

 じゅじゅさんの声が聞こえる。聞こえたけれどその内容は事実ではないので、これは人権侵害だ。死人に口なしとは言うけれど、僕はまだ生きているのだから、もちろん口はある。それに事実無根は正さなければならないだろう。階段を駆け上がってから力強く叫んだ。「残念ですが、生きてます!」言い終わりと同時に目の前が真っ暗になった。
 気がつくと階段の下にいて、何かが僕の上に乗っかっている。その何かをどけるために手を出した。

「なに人の素敵なヒップを触ってくれてんだよ?」
「……あぁ、触りたくなかったなぁ」
「滅多に触れるような美尻じゃねーんだ、有り難く思えよ」
「無事ですか? じゅじゅさん」
「お前のおかげで無駄な怪我はしなくて済んださ」
「とりあえず、そこどいてもらえますか?」
「あぁ、悪い」

 少しだけ舌を出して謝ってから、じゅじゅさんが立ち上がる。それに続いて僕も立ち上がった。

「あれはナニモノなんですか?」
「ハンターだろ」
「そういう意味じゃなくて……、ってその腕! どうしたんですか! ?」
「ん? あぁ、ちょっとヘタこいただけだ。気にするな」
「いやいやいや、それ折れてますよ確実に」
「仕方ないだろ、腕でも犠牲にしなきゃ今頃オダブツだったんだし」
「ショットガン使いましょうよ」
「……もう弾切れだったんだよ」
「もしかして、さっきの壁に向かって撃ったのが最後の一発ですか?」
「……残念ながらな」
「冷静になりましょうよ。焦って行動するとロクでもないことにしかならないんですよ? 知らないんですか?」
「悪かったって。流石のじゅじゅさんでも動揺することもあるさ」
「依り代、V2、V1ですもんね」
「……お前さぁ」
「なんですか?」
「一般的に大切で忘れないことを簡単に忘れやがるくせに、一般的でないどーでもいいことだけは忘れないのな」
「あとは音々でしたっけ?」
「はっ、そこまで覚えられてるとは、じゅじゅさんもまだまだってことだな」
「とりあえず、広場に戻りましょう。みんなが心配ですし」
「悪いけど、肩貸してくんない?」
「もしかして足も……」
「みんなには内緒な? かっこ悪いから」

 じゅじゅさんに肩を貸しながら階段を上っていくと、突然「アハハハハ!」という笑い声がした。階段の上から聞こえるその声の方を見ると、薄ら笑いを浮かべた女性が立っている。

「イイザマね。あなたが苦しみもがく姿は最高よ、近重純」
「ふん。やっとお出ましか? 紙咲音々」



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COMMENT

●じゅじゅさん

ほんの少しでも感情移入してもらえてたら
書いてて幸せだなーと思います。

終盤なので最後まで頑張りまーす!

だからブスはいやなんだよ、ブスは!(純ちゃん、負けるなー!)

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