POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /55 -


ハコニワノベル

 辺りがこんがりと香ばしい香りに包まれている。その香りの中で鈴木部長が「なかなかいけるぞ」と言いつつ、焼いたペリカンを食べている。これじゃあまるで、鈴木部長はハンターを狩るハンターじゃないか。携帯電話で調べてみたところ、中世のアラブでは一般的に食用されていたことがあるらしいので、食べられないわけではなさそうだ。ただし、今焼けているのはペリカン――のような生き物であって、ペリカンという保証はまったくない。完全に焼けたあとは脈動も確認できなかったし、焼けた状態から再生もしなかったので絶命はしていると思われる。
 その肉にかぶり付く鈴木部長は一旦置いて、森本部長を中心に今後の対策を話し合う。

「中居はそのなんだっけ、野々村の作った世界? だとかでしばらくは無事なんだな?」
「一応は無事だと思います。ただ、それでもなるべく早く病院に行かないとマズいですよ」
「爽太の考えでいくと最後のハンターを倒してしまえば、本部の社員が出てくるってやつだけど……、そんな簡単に本部の社員が現れるかねぇ?」
「そこは間違いないと思うぞ、ルティ」
「何か根拠でもあるのですか? 近重さん」
「本部側からしたら、ハンターがいなくなってしまうと、そのままゲーム終了時間まで参加者が生き残ってしまいますからね」
「えっと、例えばですよ? 例えば、新たにハンターが投入されるっていうのもあり得るんじゃ……」
「それはない」
「じゅじゅさん、何でまた断言を?」
「三体で限界だ」
「へ?」
「……要するに、あんなバケモノをそう簡単に増やしたりはできないだろうってことだよ」
「何か事情を知ってるようで……って、ヘッドロック! 辞めましょうよ、本気で痛いんですよそれ」
「ただのスキンシップだって。それにお前がしゃべりだすと面倒くさくなるしな」
「じゅじゅ、それから爽太も暴れるな」
「まずは一旦、現時点で生き残っている参加者で集まるべきですね。それから最後のハンターに対する対策をみんなで考えましょう」
「あ、あの! 森本部長。集まると言っても、どこに集まるんですか? ここに制御室内にいる三人を呼ぶのは厳しいと思うんですけど」
「制御室内に重症の中居さんがいるのでしょう? だったら私たちが中央広場の方へ移動する方が早いですね」
「でも中央広場だとハンターに見つかりやすいですね。それから生死不明ですけど、あとニ名ほど参加者が残ってます。仮に生き延びていたとしたら、そのニ名が僕らを狙わないとも限りません。もっと別の場所にした方が良くないですか?」
「最後のハンターがどんなバケモノか分からない以上、迂闊な行動はしない方がいいかもね。だけど、こんなゲームはもう終わらせるべきだと思う」
「ルティの言うように迂闊に動いてやられるリスクはある。だけどな、最後のハンターがあのペリカンみたいに狭い場所であればあるほど凶悪なやつだったら、隠れていてもやられるのがオチだ。だからこそ早く全員で集まって対策を練るべきだ」
「それでも中央広場は危険じゃないですか?」
「確かに発見されやすい場所だけどな、逃げる方向の選択肢は多い。ここ以外の庭園内じゃ、門を抑えられただけで逃げられなくなるしな」
「なるほど。それで全員で集まったとして、有効な対策を練れますかね?」
「それぞれの武器を知るだけでもかなり違ってくるだろ」
「爽太さん、リスクは承知の上です。それとお恥ずかしい話ですが、あのペリカンのような攻撃をもう一度されたら、長時間音波を緩和するほどの体力が私には残っていません。実力行使に出るのはあまり好きではないのですが、早い段階でハンターを倒してしまう方法を模索しましょう」
「まぁ、そんなに心配するな爽太! ハッハッハッハ! これでも食って落ち着け」

 鈴木部長がペリカンの足を差し出しながら近付いてきたので、軽く左右に手を振って拒否しておいた。続けざまにじゅじゅさんに差し出したものの、同じく拒否されたそのペリカンの足をボリボリと頬張りながら「男はうじうじ迷わず突撃だ」とか言っている。紳士中の紳士で、男の中の男である僕にそんな説教は必要ないのだけれど、確かにあれこれと考えていても仕方がない。僕は「それじゃ、行きますか」とつぶやいた。すぐに「なんでお前が決定権持ってるみたいなこと言ってんだよ!」とじゅじゅさんにヘッドロックされた。きっともう、人類の未来を左右できるほどの脳細胞は、僕の頭の中には残っていないだろう。
 ベンチで寝ていた長谷川さんを起こし、簡単に状況の説明をして移動を開始した。正門側から中央の通路を通って中央公園を目指す。先頭はじゅじゅさん、最後尾は僕という隊列で移動していく。最後尾から見ていると、全員ボロボロになっているのがよく分かった。着ている服だって所々破れているし、傷の大小に違いはあるものの、無傷の人は一人もいない。携帯電話で確認した時刻は二十時を回ったところだ。体力のゲーム開始からまだ三時間しか過ぎていない。それなのにこの状況だ。二十五名いた参加者も、分かっているだけで十三人が命を落としている。既に生存率は五十%を切っているということになる。

「爽太君」

 話しかけてきたのは僕の前を歩いていた長谷川さんだった。起こされてすぐの状況説明になったので、説明をしているときも「うん、うん、うん……え?」という相槌ばかりだった。きっと何か分からないことでも聞きたいのだろう。

「どうしました?」
「あのね、よく分からないんだけど……、私と一緒にいた三人はどこに行ったの?」
「あー、あのですね……、僕はそのとき一緒にいたわけじゃないのでよくは知らないんですよ」
「そっかー。ちょっとだけしか話してないんだけど、ガーデニングが好きだって言ってたから、お友達になれそうだなぁって思ってるんだよー」
「そうだったんですか……、へぇ」

 軽率な発言がよろしくない結果に繋がることは、今日、既に経験済みだ。同じ轍は踏まないようにしよう。妖精さんに残酷な現実を突きつけても仕方がない。今のうちに話題はそれとなく変えておこう。

「ガーデニング流行ってますよね」
「そうだね、本格的にやってる人も増えてるんだよ」
「僕にはできそうもないですよ。水やりとかすぐ忘れちゃうだろうし」
「そういう人は多肉植物がいいよ。水やりの頻度も多くないし、小さな鉢で育てられるしね」
「多肉植物って、サボテンとかですか?」
「そうそう。名前付けて可愛がってあげればどんどん成長してくれるよ」
「名付けまではまだまだできそうもないですけど、機会があれば花屋にでも行ってみます」
「なんだったら私が育ててる多肉のレベッカちゃんを、増やして持ってきてあげる」
「レベッカちゃん……ですか、それはどうもどうも」

 よし、なんとか話題は別の方向になったな。やれやれ、変に気を使った会話は疲れるので苦手だ。元々、長谷川さんと会話するときはペースを握れないことが多いので、こちらが疲れてばかりだったりするのだけれど。

「爽太君……」
「どうしました? まだ気分が悪かったりします?」
「何か、聞こえない?」
「えぇ? 耳鳴り音はしてませんよ」
「そうじゃなくて……、何か変な音……」
「うーん……」
「ほら! やっぱり聞こえるよー」

 ――ズル、ズルズル。
 何かを引きずっているような音が聞こえた。「この音ですか?」と聞くと「うん」と長谷川さんは答えた。その音は僕の後ろから聞こえてきている。後方を注視しながら、徐々に歩く速度を上げて先へと進む。気が付いたら先頭にいたじゅじゅさんに追いついてしまった。

「おいおい、なんだよ。そんなに私と一緒じゃなきゃ嫌なのかぁ?」
「じゅじゅさん、後方から何かが近付いて来てます」
「冗談……、じゃなさそうだな」
「残念ながら」
「流石にここで追いつかれるのはマズいな……。よし。みんな! ちょっと急いで中央広場まで移動してくれ! 森本部長、あとはお願いします。あ、健ノ介は残れよ」

 その声にみんな困惑していたのだけれど、長谷川さんが走ったのをきっかけに、それぞれがバタバタと駆け足で進んでいく。じゅじゅさんがそれに続こうとしないので僕も残ろうとしたら、じゅじゅさんから綺麗なローキックを喰らわされた。

「あのー、痛いんですけど?」
「お前は先に行け」
「時間稼ぎするんですよね? そう言うヒーローっぽいのは、僕にも噛ませてくださいよ」
「駄目だ」
「なんでですか?」
「お前の武器じゃ近距離にならないと何も出来ないだろ。ここは私と健ノ介がやる」
「おぅ、ここは任せとけ」

 ――ズルズル。
 正門側の暗闇から徐々に音が近付いてくる。

「爽太、いいからさっさと行け!」
「無茶はしないで下さいよ」
「ある程度、時間を稼いだらすぐに行くさ。心配しなくて大丈夫だ、ハッハッハッハ!」
「爽太は先に行った連中に状況説明な。それと発砲音が聞こえたら、今後ろにいるのはハンターだってことになるからな。発砲音がしたら全員で逃げる準備を整えろ!」
「……了解しました。先、行きます」

 じゅじゅさんがショットガンを、鈴木部長がM60を暗闇に向けて構えた。その後姿を確認してから僕は中央広場の方へと走る。しばらく進むと中央広場にある街灯の明かりが近付いてきているのが分かる。さらに走って近付くと、その街灯の明かりの中にいる森本部長たちの姿を確認した。
 それとほぼ同じタイミングで僕の後ろから

 バーンッ!
 バババババババッ!

 と、銃声が聞こえた。
 振り返らずに中央公園へ駆け込む。



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