POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /54 -


ハコニワノベル

 街灯の明かりで改めて確認すると、薄い灰色だったペリカンの身体が、うっ血によってか青紫色に変わってしまっている。三つの頭それぞれにある大きなクチバシから大量の泡が出ているところを見ると、酸欠も酷かったのだろう。そんな状態になっているというのに、ペリカンの身体から脈動を確認できる。ここまでされて死ねないのもかわいそうだな。

「ルー……様? 姉さん?」
「あー、今はもう、姉さんでいいよ。ちょっと冷めちゃったし」
「プライベートだと、ああいう感じになるんですか?」
「ん? それはどうだろうね……」
「普段はあんなもんじゃないぞ、爽太」
「あら、じゅじゅ起きちゃったの? もう少し寝てても良かったのに」
「あんだけパッシーン、パッシーンとかやられたら寝てらんないね。私もイジメるの大好きだからさ」
「それはゴメンなさいね。だけどもう、イジメおわっちゃったわよ」
「いや、そうでもないぜ? ルティ」

 後ろの方で頭を押さながら座り込んでいる、ミッチー先輩の方へじゅじゅさんが近付いて「小谷、これちょっと借りるぞ」と、ミッチー先輩の近くに転がっていた槍を手に取って戻ってきた。

「んふふふふー」
「じゅじゅのやり口はエグイからなぁ」
「一応聞いておきますけど、それで何をするんですか?」
「決まってるだろ。こうするんだよっ、と」

 ペリカンの首の付け根から身体の中心を通って、突き刺した槍でペリカンを貫いていく。「なかなか突き破らないなぁ」とか楽しそうにグリグリと槍を動かしているじゅじゅさんは、さっきのルー姉さんのように楽しそうだ。こんなことを楽しく感じるなんて、精神的に大丈夫だろうかと心配しそうになったけれど、心配するだけ無駄な気がするので辞めておいた。そんなことを考えているうちに「お? 出た出た。突き破ったぞー!」とか嬉しそうな報告と共に、首を縛られたペリカンの串刺しが出来上がってしまった。

「これでよし。しかしなぁ、ここまでされてるのに生きてるとか、バケモノだろ……ったく、これV2とかじゃねーか?」
「なんですか、そのV2って?」
「ん? あぁー、あれだよ、あ、れ! 二体目のハンターに勝ったからV2ってやつだ、うん」
「その誤魔化しかたはどうかと思いますよ、じゅじゅさん」
「あぁん? お前まだ何か文句あるのか?」
「そもそもですね、ヨリシ……」
「なぁ爽太、お前って串刺しにされたいの? ペリカンばっかり私らがイジっちゃってるもんだから、寂しくなっちゃったのぉ?」
「あの、目が笑ってないんですけど、冗談ですよ……ね?」

 そう聞いたのに、まったく目が笑っていない笑顔のままで「もちろん冗談だよ、半分は」とか言われたので「よっしゃー! V2! V2! 二体目倒したぞー!」とあからさまに叫んでおいた。

「そうそう、なかなか素直でよろしい。従順な方が長生きできるってことだ。な、ルティ」
「私はあまり従順な子は好きじゃないけどね」
「そう言われたらそうだなー。よし爽太、やっぱりお前、串刺しにする」
「駄目っ!」
「お? い、いや小谷どうした? ん? わ、分かってるって、冗談だよ冗談。だから、なんだ、そんな目で睨むなよ……」
「小谷は爽太のこと、好きなんだね」
「い、いや! そ、そそんな、そんなことじゃななな……」
「あはははは、普段はテキパキとしてるのになぁ。色恋となるとこうもあたふたするのか。可愛いじゃないか」
「ととと、とにかく! 爽太をこれ以上イジメないで下さいっ!」
「ま、分かったよ。だから小谷、そう睨むなって。それ以上睨まれたらさぁ……イジメたくなるだろ?」
「ミッチー先輩、あの人なら本当にイジメ兼ねないんで、もう辞めといた方がいいですよ」
「だ、だけど……」
「じゅじゅ、あんまり私の部下をイジメてやらないでくれる?」
「悪い悪い、ちょっと興奮してたもんだからさ」

 じゅじゅさんとルー姉さんが愉快そうに「若いっていいねぇ」とか「私たちも昔はあんなだったはずなのにな」とかガハハと笑っている。確かに、ミッチー先輩をイジったりイジメたりするのは楽しいと思う。リアクションが大げさで分かりやすいし、からかえばからかうほどに、自ら墓穴を掘っていくのは見物だ。だけど、ミッチー先輩は時折本気だったりするからやり過ぎは良くない。からかうつもりで言った冗談を、ずっと本気にしてしまうような人だからだ。確か今も、何か行き当たりばったりで言ったことを誤解されっぱなしになっている気がする。いや、気がするだけかもしれない。

「大丈夫?」
「えっと何がですか? あ、智子さんのことですか? 智子さんなら、今は制御室内でのんさんに……」
「あ、あんたのことを聞いてるの!」
「僕ですか? まぁ、至って普通ですよ」
「傷は?」
「傷? 何のことですか? あ、心の傷ってやつですか? ほら、僕ってガラスのハートを持ってるものだから……」
「あんた肩に怪我してたでしょ?」
「大丈夫ですよ、とくに痛みはないですし」
「ちょっと見せて」
「いや、だから大丈夫ですって」
「いいから、早く! ほら、脱ぎなさい!」
「おー、なんだ小谷もイジメる側だったのか」
「だからかー、自分のイジメる相手を奪われそうになったから、私たちに噛み付いてきてたのか。ふふふ。益々、可愛いな」
「ちがっ! 私はただ、爽太の傷の具合を……」
「お二人とも、ちょっとおふざけが過ぎますよ」
「お前にだけは言われたくないな」
「でも、ちょっと悪ふざけし過ぎたね。小谷、それから爽太も悪かった」
「小谷、ゴメンな?」
「じゅじゅさんは、なぜ僕には謝ってくれないのか理解に苦しみますよ」
「なぜお前に謝らないといけないのか、理解に苦しむな」
「じゅじゅ?」
「嘘、嘘、冗談だって。悪かったよ爽太ちゃん」
「最初から素直に謝ればいいも……、じゅじゅさん? 僕は今、なぜにヘッドロックされているのですかね?」
「仲直りのスキンシップに決まってるだろー」

 しばらくしてからヘッドロックを開放すると「一応こいつにトドメ刺しておかないとな」と、じゅじゅさんが串刺し状態のペリカンをグイグイと持ち上げて揺らした。

「トドメって、どうやって刺すんですか? そいつ、物凄い勢いで再生してしまうんですよ? その槍に突き刺さった状態で生きてるぐらいなんですから」
「暴れられないようにしてしまえば方法はあるだろ。それにしてもあの野郎……。おい! 健ノ介! お前いつまで寝てるんだよ、さっさと起きろよな!」

 じゅじゅさんが茂みの方に向かって大声を出すと「んー? おぉ? 起きたか近重!」という野太い声がして、鈴木部長がガサガサと音を立てながら戻ってきた。「いいのが顎に入っちまってな。悪い悪い、ハッハッハッハ!」と笑っている。「ったく、図体だけデカイんじゃ使えねーんだよ」と、じゅじゅさんが悪態をついているというのに、鈴木部長はまったく気にせず「悪い悪い」と笑っている。この人、底抜けに豪快な人だな。もしくは馬鹿なのかもしれない。

「ライター」
「なんだ純、タバコか?」
「いいからライターを出せって」
「ふふん、俺のライターがそんなに見たいのか? そらよ」
「サンキュー、健ノ介」

 じゅじゅさんが受け取ったライターを手馴れた様子で開けて、中に入っていた液体をペリカンに振り掛けた。「な、何するんだお前!」と鈴木部長が慌てているのを気に留めることなく、借りたライターを投げ返して今度は自分のポケットからライターを取り出して火を付けた。オイルによって勢いを増しながら、炎がペリカンを包んでいく。

「爽太、お前鶏肉好きだろ? ほら、打ち上げのときに食べてた唐揚げをさ、ジューシーだ、ジューシーだとかって言ってただろ」
「それ、食べるつもりですか?」
「せっかく焼くんだ、そのまま焼き尽くしたらもったいないと思わないか?」
「いや、そもそもペリカンって食べられるんですかね?」
「さぁなー。でも、食って食えないことはないと思うぞ?」
「いや、遠慮しておきますよ」
「そんな遠慮することないって。こいつ倒せたのも、お前が頑張ったからだろ? だからご褒美だよ、ご褒美」
「だから、遠慮しておきますって」
「お? それなら俺が食うぞ。意外に美味いかもしれんだろ? ハッハッハッハ!」
「……爽太、気をつけろよ。健ノ介はな……馬鹿だ」
「なんとなくそんな気がしてました」
「その判断はとても正しい」
「なんだ? 何か言ったか?」
『いいえ、まったく』



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