POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /52 -


ハコニワノベル

「つまり、マリモちゃんに叫んでもらいながら、あのペリカンに近付いて攻撃をしかけるわけか」
「とにかく、攻撃を当ててみないと硬いのかどうなのか、倒せるのか倒せないのか分かりませんし」
「ギリギリまで近付いた距離が、それなりに離れていたらどうする?」
「まずは鈴木部長のM60を使ってみてもらって、それで効くようならそのまま倒してもらいますけど、効かないとなったら意識をギリギリ保てる距離まで僕らが近付いて攻撃する流れですかね」
「まぁ、あれこれ考えていても状況は変わらんだろう。まずはやってみんとな。 ハッハッハッハ! これは腕がなるぞ」

 森本部長にはルー姉さんが説明してくれて、森本部長は片手の親指を立ててこちらに了解を示してくれた。今の話は長女出産から名付けのエピソードに入ったところだ。
 森本部長を先頭に鈴木部長、ルー姉さんと続いて最後尾は僕という一列隊形になった。ペリカンに近付けば近付くほど、耳鳴り音が聞こえてくる頻度が増えてきている。今までずっと森本部長があの拡声器形の武器で耳鳴り音を中和してくれていたのだろう。ペリカンまでの距離は目測で十四、五メートルぐらいだ。

「ここらが限界だね。しかし、これは頭が痛いな……」
「鈴木部長、とりあえずM60を撃ってみてもらっていいですか?」
「おう! 任せとけ」

 鈴木部長が肩に担いでいたM60をガシャンと地面に下ろした。二脚をしっかり固定すると、うつ伏せになった状態でM60を構える。「うぉぉぉぉっ!」という無駄に大きな叫び声と共に、バババババババッという射撃音が連呼する。ベルトに取り付けられた弾薬を一本丸々撃ち終わったところで、射撃音が収まった。目の前のペリカンの周りにかなりの数の薬莢が散らばっているものの、薬莢はペリカンから一定の距離だけ離れた場所に散らばっている。どうやらここからの攻撃も届いてはいないらしい。「駄目だな」と鈴木部長が新しい弾丸ベルトを装着しながらつぶやいた。

「森本部長がやられてしまうと一気に全滅してしまう恐れがあるので、森本部長にはここで待機してもらいましょう。ここから先は三人で行くしかないですね」
「しかしなんだな、近付いて見てみると気味の悪い野郎だね。頭が三つもあるのに、無理やり取り付けられた感じの頭だね」
「この生物は本部によって人為的に作られたものかもしれん。あれだけ巨大な組織なんだから、遺伝子操作ぐらいならやっているだろう」
「あぁ。ちなみに聞きたいんですけど、お二人はヨリシロって知ってます?」
「ヨリシロ? なんか霊的なものじゃなかったか? 取り憑くとか憑依みたいなそんなイメージだな」
「俺はオカルト方面はさっぱりだな。それで、それがどうしたんだ?」
「いえ、なんとなく聞いてみただけなのでお気になさらずに」
「?」
「?」

 ヨリシロ――、依り代。
 神霊が依り憑く対象物のことで、神体や場合によっては神域をしめす。らしい。携帯電話にはそう表示されている。まぁ、今は考えても仕方がないか。鈴木部長とルー姉さんが不思議そうな顔をしているので、これ以上聞いても何も知らなそうだ。思考を切り替えて話を続ける。

「森本部長の話は……、今は部長に昇進したときの話になってますね。ここまで来てもたもたしていても仕方ないです。さて、誰から行きますか?」
「俺が最初に行こう。どのみち今ある武器で一番強力なのはこいつだろうしな」
「了解です。じゃぁ、僕は二番目に行きます。ルー姉さんは、もし鈴木部長と僕がやられた場合、一度森本部長と引いてください」
「分かった。分かったが、加勢した方がよさそうなら私も出るからね」
「それはとても心強いですね」
「おぉし、それじゃぁ早速行くかな!」

 威勢よく声を上げて、鈴木部長は両手の人差し指を耳の中に入れてグリグリとしてから「行くぞっ」と叫んで飛び出した。ずんずんと勇ましくペリカンに近付いていき、両手で抱えるようにして構えたM60を数発撃ち込む。さっきよりもペリカンに近い位置で薬莢が散らばっていく、それを見てさらに鈴木部長はペリカンに近付いていく。もう数メートルも離れていない位置まで進むと、さっきと同じようにM60を地面に下し、バババババババッという射撃音が鳴り響かせた。
 ペリカンの三つある頭の一つに弾丸が突き刺さる。

「ガァァッ!」

 初めて届いた攻撃に驚いたのか、ペリカンが大きく鳴き声を漏らしつつ体勢を崩した。そのままM60の銃撃は二つ目の頭部を打ち抜く。再度「ゲギャァァッ!」という鳴き声と共に、撃たれていない最後に残った頭部を振り回して鈴木部長に襲いかかる。その反撃を無視して銃撃は続き、最後に残された頭部にも連続して弾丸が打ち込まれた。今度は鳴き声を漏らすことなく、ペリカンの身体が地面に倒れ込む。

「よぉし!」

 撃ち尽くした弾丸ベルトを取り外して、地面に転がったペリカンの側で鈴木部長が親指を立てて合図した。僕とルー姉さんは喜ぼうと思っていたのだけれど、森本部長の「鈴木部長、離れて下さい!」という声によって中途半端なタイミングで止まってしまった。
 鈴木部長のいる方を確認すると、さっきまで地面に倒れていたペリカンが起き上がっている。しかも、さっきあれだけの銃撃を受けていたはずなのに、その傷すら確認できない。

「鈴木部長! 一旦ここまで逃げて下さい!」

 僕の声が鈴木部長の耳に届くより早く、鈴木部長はペリカンの横殴りのような頭突きによって吹き飛ばされてしまった。
 攻撃は届いていた、さっきの攻撃によって倒れ込んでいたのだから、間違いなく効果もあったはずだ。それなのにまるで無傷の状態で起き上がってきた。最初に遭遇した巨大な犬のようなバケモノは、体表が異常に硬くて攻撃を受け付けない奴だった。今度のは不死身とでもいうのだろうか――。
 とにかく、このまま引き下がってしまったら対策を講じる手段がなくなってしまう。男には引くに引けないタイミングってやつがある。それが今だ――と、思う。やれやれ、これはまた覚悟を決めなくてはいけなさそうだ。
 ゴボウを確認するように握り直す。

「ルー姉さん、森本部長をお願いします」
「ちょっと待て爽太! 今無理に出て行ってどうする! 一旦引いて対策を練るべきだ!」

 ルー姉さんの静止は敢えて無視して、ペリカンに向かって走る。ペリカンまでの中間地点を過ぎた辺りで、ペリカンが僕を認識した。こちらに向きを変えて三つの頭がそのクチバシをモゴモゴと動かしている。どう見ても嫌な予感しかしない。こう言う場合の嫌な予感は大抵その通りになるので、進行方向を左に九十度回転させて飛び退いた。
 ペリカンがクチバシをパカっとあけたかと思うと、さっきまで僕がいた場所を突風が通り抜けた。後ろからルー姉さんの「うわっ」という声が聞こえた。だけど、今は後ろを確認している暇はない。視線をペリカンに向けると、続けてクチバシをモゴモゴし始めている。一旦スピードを緩めてから今度は百八十度反対側へ方向転換をした。後ろ側にあった右足が突風を感じてぐらついている。
 最初の突風が通った場所の地面が軽く削り取られているのが分かる。あのペリカンは耳鳴り音だけでなく、クチバシから吐き出す風圧でも攻撃可能ということらしい。付け加えるならば、鈴木部長を吹き飛ばした頭突きという、近距離用の攻撃手段まで持っている。さらに不死身かもしれないという要らないおまけ付きだ。はっきり言って、現時点でこのペリカンを倒せる見込みは無い。

「爽太! 戻れっ!」

 後ろからルー姉さんの声が聞こえてくる。どうやら無事のようでなによりだ。それでも今は戻れない。何かこのペリカンを打ち倒すヒント得なければ、遅かれ早かれ追い詰められるのが目に見えているからだ。今退くのは悪手でしかない。とにかく自分の目で見て、触ってみて情報を得なければ。
 最初の突風を避けた場所で、再度ペリカンのいる方向へ進路を変える。次の攻撃がくるまでになるべく距離を詰めるしかない。息を止めて足に力を入れる。視線の先で三度目のクチバシモゴモゴが始まった。ギリギリまでペリカンに向かってから、今度は右に避けるために方向転換をした。その移動と同じタイミングで、ペリカンも同じ方向へ向きを変えてきた。「あ、ヤバいかも」のんきにつぶやきつつ、ゴボウをペリカン側に構えて突風に備える。
 一瞬、吸い込まれるような感覚の直後に空気の壁を感じ、すぐに身体が浮きあがって枯葉のように吹き飛ばされた。後頭部に鈍い痛みを感じたので確認すると、防御壁として並び替えられていた茨の植え込み部分まで吹き飛ばされていた。



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COMMENT

●ともさん

おぉ! 有り難いお言葉!
やっと書きたかった場所に入ってきてるので
作者側も楽しんで書いております。

頑張って続き書いていきますね!

爽太がペリカンに向かって行くところからグイグイ引きこまれてしまいました。
早く続きが読みたいです!

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