POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /49 -


ハコニワノベル

「えっ?」

 のんさんではなく、僕がそう言った。さっきあれだけ何度も何度も、面倒になったとか言っていた黒瀬さんが、最後の最後に言ったのはなんだったのか、もう一度咀嚼しながら思い返してみたけれど、何度思い返しても「結婚しよう」という言葉だった。それでも聞き返さずにはいられない。

「……なんで?」

 今度はのんさんが言った。僕も同じことを言いたかった。

「だからもう面倒なんだよ、お前のそういう勘違いやズレてる感覚に合わせるのは」
「……」
「だから結婚しちゃえば、毎日会えるよな? 毎日一緒にいられるよな? そしたら杏も納得がいくだろ?」
「……う、うん」
「もう疲れたんだよ、面倒なことは終りにしよう」
「うん」
「もう一回言う。杏、結婚しよう」
「……はい」
「はぁー、やっとヤボ用が終わったな」
「えへへ、私、渉のお嫁さんになれるんだね」
「えーと、お二人さん……。これ以上は外でやってくれませんかね?」
「悪かった。変なもの見せたな」
「いや、まぁ、それはもういいですけどね……。あ、ご結婚おめでとうございます。と、一応言っておきますね」
「一応は余計だろ」
「爽太君、ありがと。それから、えーっとなんだっけ。その、ごめんね」
「もういいですって」

 やれやれ、ここに入ってから今までの時間はなんだったのだろう。今日はいろんなことが起こってはいるけれど、今のが一番疲れた。今は和やかな雰囲気になっているけれど、さっきまで命を狙われるという状況だったじゃないか。できればこんなことは二度と経験したくない。頼まれたって経験するものか。まぁ、さっきも頼んではいないけど。
 そんな僕の心情は伝わっていないのか、目の前の二人は幸せそうに見つめ合っている。ほんとに外でやってくれればいいのに。

「ごほっ、ごほっ!」

 智子さんが大きく咳き込んだ。よく見てみれば顔色がかなり悪くなっている。あれだけの出血を考えれば仕方がない。僕は目の前で、既にウェディングベルが鳴っているとでも思っているような、絵に書いたようなバカップルのことは忘れて、智子さんの様子を伺う。もっと早くからこうしておくべきだったのに、それに気付かずに放置してしまっていたのだから、僕はまだまだナイトとしては未熟だな。いや、今はそんなふざけたことを考えている場合じゃない。
 智子さんの額に手を乗せてみると、かなりの熱だということが素人でも分かる。いくらなんでもこの熱は高すぎるだろう。このままだと、智子さんは遅かれ早かれ――。
 携帯電話のデジタル時計は十九時十分を示している。日の出まではまだ十二時間もある。それまで智子さんをこのままにしておくわけにはいかない。しかし、どうしたものか。

「その子、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですよ。片足失ってますし、出血量が尋常じゃないですからね」
「病院へは連れて行けないの?」
「この会場、つまり噴水公園から出たら”命はないものとお考え下さい”っていうルールがあるじゃないですか、だから今はどうしようもないんですよ」
「仮に会場から出たらどうなるんだろうな……」
「多分ですよ? これは単なる予感ですけど、首を落とされると思います。今までのゲームみたく」
「なんでそう思うんだ?」
「/3」
「は?」
「いや、だから/3ですよ。”すらっしゅさん”」
「いや、だからなんだよそれ……。あ、GSに表示されたリンクの文字列か」
「そうです、それですそれ」
「でも待ってくれ、それがなんで首を落とされる予感に繋がるんだ? あ、もしかしてスラッシュってslashか。それが首を切るって意味なのか?」
「違いますよ」
「それだと、あの文字列がさっきの予感にどう繋がってるのかさっぱりだな」
「さっきのはですね、”まったく繋がってない”ですよ。だから、特別な意味なんてない予感ですよ。まぁ、そんなことよりもですね、明日の日の出よりも早くゲームを終了させる方法ってないですかね?」
「終了? それって確か、生存している参加者が一人になったらゲーム終了になるってやつでしょ?」
「それだと意味がないんですよね……。ゲーム終了後に、智子さんを病院へ連れて行く人までいなくなってしまいますから」
「うーん、もう一つあるとすれば、本部の社員を全員始末する方法かな」
「そっか! こんなゲームを開催してる本部を片付けちゃえば、ゲーム自体も終わるもんね。渉、頭いいね!」
「いや、それがですね……。この体力のゲームが始まってから、もう少し正確に言うなら噴水公園に入ってから、一度も本部社員の姿を見ていないんですよ。どこかで本部の社員を見かけたりしました?」
「そういえば見てないな」
「でしょ? 今までのゲームのことを考えると、そこが明らかに違うんですよ」
「それは……、俺たちに武器が与えられたからだろうな」
「でしょうね」
「え? それってどういうこと? 私、あまり付いていけてない……」
「要するに、今まで強制的なルールに為す術もなく従うしかなかった参加者側が、武器を手に入れることによってルールの放棄、つまり本部の社員に対して、従う以外の選択肢が選べる状況になったんだよ」
「今まではルールによって本部社員は守られてきてますからね。武器を手に入れた参加者が反旗を翻す可能性を考慮して、今回は姿を隠してハンターなんてのを投入してきたんでしょうね。自分たちに危険が及ばないように」
「そっか、中にいるのが参加者のみになれば、最後の一人になるまで参加者同士で争うか、夜明けまでにハンターによって数を減らされるしかないってことね……。あれ? あれれ? あ、あのね、もしかしてさ……。このゲームって生き残れる可能性の方が、かなり低くなってない?」
「そうなってますね」
「わ、やっぱり!」
「杏、お前気付いてなかったのか……」

 結局、現時点では智子さんを病院へ運ぶ手立てが無いのことは変わらない。まだハンターが二体残っている状況で、本部社員が出てくることはないだろう。きっと本部は、参加者の願いをできる限り叶えたくないはずだ。それは、ここまでのゲームでの犠牲者数が物語っている。ということは、残り二体のハンターを片付けてしまえば、本部社員が残りの参加者を減らすために噴水公園内に入って来るかもしれない。今考えられる最短のゲーム終了へのシナリオは、これしかなさそうだ。
 残っている問題は、智子さんに残された時間がごくわずかだということだろう。このままだと一時間は持たないかもしれない。一時間以内にハンター二体を片付けて、本部社員も片付けるのは不可能だ。とにかく時間がない。

「こ、このままじゃ私たちも殺されちゃうじゃない!」

 のんさんが叫んでから力なくぺたりと座り込んだ。そしてカランと何かが転がる音。先端に丸い球体が取り付けられた杖のような――、これだ!

「のんさん!」
「な、なに?」
「この杖で、ものすごく時間がゆっくり流れる世界って作れます?」
「え? えぇ? ……う、うん。作れると思うよ」
「ものすごくゆっくり時間が流れるんですよ? 例えば普通の世界でいう一時間が一日ぐらいに」
「……うん、思い描きやすいから作れるんじゃないかな」
「ほんとですか! あの、その時間がゆっくり流れる世界の中に、智子さんを入れてくれませんか?」
「……なるほどな」
「え? うん、いいよ。あまりよく分かってないけど」
「時間はゆっくりであればあるほどいいんで、一分が一年とか。とにかくできる限りゆっくりでお願いします!」
「で、お前はどうするんだ?」
「残り二体のハンターを片付けて、本部社員を引きずり出します」
「確かに、それが一番早そうだな」
「黒瀬さんはのんさんの護衛に回ってもらっていいですか? 僕はとりあえず森本部長のところに行ってきます」
「分かった」
「爽太君! わ、私、頑張るからね!」
「期待してますよ、のんさん」

 随分と久しぶりだなと感じながら制御室の外に出た。空が真っ黒になってはいるけれど、雨はまだ降っていない。



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COMMENT

●じゅじゅさん

どうかなってますよー。
あちこち共に。

で、行ってみたら森本部長グループがどうかなってた、ってのは勘弁してください(ノ△・。)

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