POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /48 -


ハコニワノベル

 他人の痴話喧嘩ほど見ていて見苦しいものはないと思う。あれからずっと同じような言い争いが続いていて、少なくとも僕は辟易している。どうしてもっと簡単に喧嘩が終わらないのだろうか。僕と静香の喧嘩なら、いつも数秒で終わる。大抵喧嘩になる理由は僕にあって、静香が「死にたいんか? ええで、一思いにやったるわ」と言えば、あっという間に首筋に矢が突き刺さって喧嘩終了だ。長引かないぶん、後腐れもない。その代わり何度も同じことで喧嘩になるのだけれども。

「だから、私は渉のことを心配してるのに……、渉は私のことを気にかけてなんてくれないじゃない! いつもいつも、忙しいとか仕事だとか言うだけで、私が何かしてあげようとしても、別にいいとかしか言わないじゃない……」
「それはお前に迷惑かけたくないからだ。せっかくの休みなのに、俺のせいで一日潰させたくないだけだよ」
「そんなの私の勝手でしょ? 私がそうしたいんだからいいじゃない。なのに、休みの日に私を避けてるのは別の女の子がいるからなんでしょ? だから、私とは会いたくないのよ!」
「だから違うって言ってるだろ!」
「なによ! 都合が悪くなるとそうやって怒鳴って! 怒鳴ればこっちが大人しくなるなんて思わないでよね!」
「都合が悪くなったから怒鳴ったんじゃない!」
「じゃぁ、なんで怒鳴るのよ!」
「それは……」
「それは? ほら、やっぱり都合が悪くなったからじゃない」
「……あぁ、もう!」
「なに? 今度は黙り込むわけ? 渉って大事なところで逃げるよね、いつも」
「だからっ! ……」
「だからなによ?」
「……面倒なんだよ」
「……」

 決定的だった。それまで大声を出していたのんさんが「……そっか」と小さくつぶやくだけになった。それぐらい決定的な一言だった。黒瀬さんは別に好きな人ができたわけじゃなくて、単純にのんさんのことが面倒になっただけらしい。やれやれ、それならそれでさっさと言ってしまって喧嘩を終わらせてくれればよかったじゃないか。僕は別に二人の関係がどうなろうと興味はない。それよりも早く、この居たたまれない空気を変えて欲しい。

「他に好きな人ができたわけじゃないんだ……」
「あぁ」
「……私、渉が最初の人だった」

 突然のカミングアウトだ。あの、申し訳ないけれど、これ以上は外でやってくれないだろうか。そう強く思った。

「私、男の人と付き合ったことなくて、付き合うなら生涯付き合える人じゃないと嫌だった。沢山の人が私に声をかけてくれたけど、なにか違うなーって思ってたんだ」
「……」

 黒瀬さんはずっと黙ったままだ。もちろん僕も黙ったままで、淡々とつぶやくようにのんさんだけが言葉を発している。

「二年半前、私が新人だったときの新人歓迎会でさ、私は上司や先輩にお酌をして回ってた。みんな可愛いとか、綺麗とか適当なことを私に言ってきて、私はちょっとその雰囲気が苦手だった。だから愛想笑いだけして、次々にお酌していったの。そのとき最後にお酌したのが渉で、他の人と違って何も言わなかった。最初はね、こんな人この会社にいたっけ? って思っちゃった。そのあとも、私はいろんな人に呼ばれてお酌してたから、結局ほとんど座れないままで二次会に行くことになって、その途中で貧血で倒れちゃってさ。さっきまで私に何度も声をかけてきたくせに、誰も私が倒れてることに気付かず行ってしまって……。大げさかもしれないけど、私このまま死ぬんじゃないかなって思ってた。そしたら、誰かがこう言うの。大丈夫? って。なんとか顔を向けたら渉がいて、それで私タクシーで家まで送ってもらったんだよ。渉はもう、そんなの覚えてないかもしれないけど、私にとっては絶対に忘れられない。それから少しずつ渉のことが気になって、半年間ずっと悩んで何度も迷って、それからやっと決心して告白して、私たち付き合ったじゃない。ずっとこのままの幸せが続くと思ってた、一生続くと思ってた……のにっ! っひ、ぐ……」

 ついにのんさんが完全に泣き出してしまった。こうなると男は弱る。男同士なら拳で語ってしまえることが、相手が女性であるだけで出来なくなるし、別にこちらに非がなくても負い目を感じるのだから、多少なりでも非があると自覚していれば、その負い目は確固たるものになってしまう。女性の涙はそれほど威力が大きい。
 制御室内にのんさんの泣き声が響いていて、雰囲気は最低だ。できることならここから出たい。

「杏」
「……なに」
「俺な、お前のそういうところが面倒なんだよ」
「……ぞんなのっ、何度っも、っひ、っひ、言わないでっ、よっ」

 鬼畜だ。黒瀬さんは鬼畜だと思う。
 ここまで追いつめた相手を更に突き落とすなんて、さすがの僕でもなかなか真似できそうにない。のんさんの泣き声が大きくなっていく。それを見つめながら黒瀬さんがのんさんに近付いた。

「俺がなんでこのゲームに参加したか知ってるか?」
「……じらなぃ」
「杏が参加するって知ったからだよ」
「……なん、で」
「お前ってさ、俺が最初の彼氏なんだろ?」
「……そっ、ぅだよ」
「で、お前の中で付き合うっていうのは、最終的に結婚するってことなんだよな?」
「……うん」
「あと、お前の中で一週間連絡が取れなくなったら、別れたことになってるよな?」
「だって、そうっ、じゃない」
「それはな、一般的じゃないんだよ」
「……?」
「お前の恋愛に対する感覚は、世間一般から大きくズレてる」
「……う、うそ」
「嘘じゃない、そうだよな?」

 突然話をふられたので「えぇ」と言いながら頷くことしかできなかった。のんさんは「えっ、え? 嘘……、ほんとに? なんで?」とか言ってる。どれだけ箱入り娘だったのだろうか。ということは、さっき言っていた最初の人とかいうのも、最初の彼氏っていう意味なのか。やれやれ、世間知らずにも程があり過ぎるじゃないか。もっと恋せよ、レディ。

「そういうの、全部面倒になったんだよ」
「……」
「付き合ったって言っても、夜の十時には家に帰っちまうし、キスだってしてない関係だろ?」
「……だ、だってそういうのは結婚してからだって、お父さんが……」
「ズレてるんだよ、そういうの。そんなのこっちだって面倒になるだろ」
「……で、でも」
「とにかく、面倒なことは終わらせる」
「……そ、それって私と、わか、わ、別れるってこと?」
「お前の中だと、もう別れてるんだろ? 俺たち」
「だ、だけどそれは私の勘違いで……その」
「もう面倒なんだ、耐えられないんだよ」
「……ぅっ」

 単純計算すれば、この二人が付き合った期間は二年ほどになるはずだ。その二年間、黒瀬さんはずっとこの調子で振り回され続けていたのかと思うと、心底同情してしまう。それに引き換え、ここまで来るとのんさんは、精神的な病に侵されているとしか思えない。付き合う定義の一般的なものがどんなものであるか、僕には言い表すことは出来ないけれど、のんさんの基準がそれから大きくズレているのは言うまでもない。まぁ、さっき黒瀬さんがはっきり言っていたことだけれど。
 黒瀬さんは、もう泣くこともなく、心ここにあらずで床に座り込んでいるのんさんに、更に近付いていく。もうこれ以上、のんさんを突き放す必要はないとだろう。下手をすれば、のんさんが自棄を起こして無理心中しようとするかもしれない。あの杖でさっきみたいなことをされたら、僕はおろか智子さんまで巻き添えになってしまうじゃないか。それだけはなんとしても止めないと。
 僕は「黒瀬さん、もうそこまでにしときましょうよ」と言い出そうとした。その言葉は喉から口へ移動して、外に飛び出そうとしていた。だれど僕は、その言葉を無理矢理飲み込んで止めた。その努力のおかげもあって、なんとか言葉のマーライオンにならずに済んだ。
 そして僕は今、耳を疑っている。なぜなら今、黒瀬さんが信じられないことを言ったからだ。

「杏、結婚しよう」



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COMMENT

●黒さん

確かに二年は厳しそうですw
基本的にゲストキャラについては
その人のことを考えてキャラクターを作るので
ある程度は似てるかもですね。
(人によっては性別すら変わってしまう場合がありますが)


●じゅじゅさん

これはドラマじゃないよ物語だよ。
誰が生き残って、誰が消えるのか
一応、頭の中では最後まで思いついているものの
書き出して展開によってどうなることやらw

うふふふふふw

あー、こう言うカップルってドラマの中にしか居ないと思ってたwww
あ、そうか、これはドラマだ、うん( ̄-  ̄ )
杏ちゃんと黒瀬さんがウェディングまで無事生き残れることをお祈りしてます(Φ∀Φ)

やっぱりそうきたか。
いやー、しかし同じ様な性格してるなぁ。
2年とか耐え切れないだろうけどw
  • 2010.03.18[木]

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