POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /47 -


ハコニワノベル

 作業服を着つつ、さりげなくのんさんと黒瀬さんの間に入る。これで、のんさんが黒瀬さんを狙ったとしても、なんとか防ぐことができるだろう。この僕がいる限り、ここでは思い通りにはさせないぜ。ふふふ。とか考えていたら「ち、ちち、ちょっと! 普通下着から履くでしょ! ……バカッ!」と叫ばれた。のんさんは物凄い勢いで壁側を向いた。
 まさに計算通りだ。これでしばらくは、のんさんの動きを封じることができる。まぁ、計算なんかはしていないことは、ここだけの秘密だ。まぁ、結果オーライだから問題はない。
 それにしても、この拒絶っぷりはどうなんだろうか。KGCに訪れた男性のお客さんのうち、実に六割が口説こうとするほどの女性であるのんさんだというのに。もしかして、逆に男性恐怖症だったりするのだろうか。とりあえず今は拒絶してくれる方が助かる。

「その杖、なんなんですか? 乾燥機を作ったように見えましたよ」
「……世界の杖」
「世界の杖、なるほど! ……えーと、それってなんなんですかね?」
「私が参加表明時に書いたのは文字通り”世界の杖”って書いたよ。だからこの武器を見つけたときは、地球儀が付いてるだけの杖かと思ってた」
「あぁ、その球体は地球儀だったんですね。なるほど、地球がくっついてる杖だから世界の杖か。いや、だからってさっきのはなんだったんですか? 魔法でも使っちゃったとか? あ、もしかしてのんさんって魔女っ子?」
「別に魔女じゃないよ。……あのね、爽太君。私このゲームにどうしても勝ち抜けたいの」
「いつも大人しいのんさんが、勝ち負けに貪欲なのは珍しいですね」
「どうしても、どうしても叶えたい願いがあるの」
「そのどうしても叶えたいっていうほどの願いっていうのは、どんな願いなんですか?」
「それは言えない。言えないけど……、どんなことになったとしても、絶対に、絶対に叶えたい願いなのっ!」
「それはつまり……えーっと、そのですね、つまり……」
「……つまり、なに?」
「黒瀬さんを殺してでも叶えたいんですか?」
「……」
「もしもその願いが叶わないなら、黒瀬さんを殺すつもりですよね?」
「……そうよ! でも、なんでそれを爽太君が知ってるの? ……そっか、渉から聞いたのね」
「違いますよ」
「え?」
「今朝、一階と二階途中の階段と、運力のゲームが始まる前に三階で電話してませんでした?」
「……聞いてたんだ」
「聞いてたわけじゃなくて、聞こえたんですよ」
「……ふふふ、あはははは!」
「どうしたんですか、突然笑い出したりして。僕はまだ絶妙なボケはしてませんよ?」
「バレてるなら仕方ないわ。爽太君には恨みなんてないけど、私の邪魔をするならあなたも一緒に……」

 世界の杖を振りかざしながら、のんさんが振り向く。

「一緒に殺して……! !」

 こういうときの言い争いで強烈な言葉を言ってしまうのは、大抵の場合気持ちの裏返しだ。だから今のんさんが言っているのは本音じゃない。その証拠に、振りかざされた世界の杖は振り下ろされていない。直後、再び「きゃーっ!」という悲鳴。振り向いたのんさんが、僕の姿を目視したとたんに悲鳴をあげて、また壁側を向いてしまった。

「どうしたんですか、何かいました?」
「あ、あのねぇ、何度も言ってるじゃない! 下着、履きなさいよっ!」
「まぁまぁ、どんな順番で服を着るかなんて、人それぞれの自由じゃないですか」
「だ、だからって上着まで着てるのに、のに……、どうして下は丸出しなのよっ!」
「いや、だからですね、どんな順番で服を着てもいいじゃないですか」
「へ、変態!」
「僕は変態じゃなくて、紳士でかつナイトですよ」
「と、とにかく早く下着を履きなさい!」
「下着だけでいいですか?」
「あのね、いい加減にしないと、本当に……殺しちゃうんだからね?」
「その杖で、ですか?」
「そうよ、この杖さえあれば私に不可能なんてないんだから」
「ということはやはりその杖は、ただの杖じゃないんですね」
「この杖は、私が思い描いた世界を作れる杖よ」
「思い描いた世界?」
「さっきはカラカラに乾燥した、砂漠のような世界を思い描いて作ったから、君の服がすぐに乾いたの」
「へぇ、それは面白い武器ですね。……あ、じゃぁ黒瀬さんが突然豹変したのって」
「そうよ。私がこの制御室内を”殺さなければ殺される世界”にしたの。だけど、私のイメージが曖昧だったみたいね」
「ふーん、つまりその杖で作れる世界は、のんさんが思い描けない場合は作れないわけですか……。あれ? さっき僕もここにいたんですけど、僕は別に変化なかったですよ?」
「あまり大きな範囲で世界は作れないから、爽太君とそこに寝てる子は、その範囲に入らなかったのかもね」
「なるほど、なるほど。世界の杖か……、便利ですねそれ」
「だから私がその気になれば、後ろを向いたままでも君を殺すのは簡単なの。例えば、この部屋から空気がなくなったら、どうなると思う?」

 背中を向けたままで、のんさんが世界の杖を振った。空気がなくなる? そんなことできるはずが――。のんさんを中心に四角い物体が広がって、僕はその物体に飲み込まれた。それと同時に視界が歪む。何が起きているのか分からない。もしかして、本当にこの部屋から空気がなくなった? これは――考えること――さえ、難しい。
 目の前に広がっていた四角い物体が、音もなく消えてなくなった。

「ほ、ほら……ほらね。はぁ、はぁ……、これで分かったでしょ」
「……かはっ、はぁ、はぁ。……本当に魔法の杖じゃないですか……、それ。だけど、自分も空気のない世界に……、入っちゃうなんて、のんさんって魔女っ子じゃなくてドジっ子ですね」
「だってそれは、爽太君が下着を履かないから……って、イヤーっ! なんでまだ履いてないのよ!」
「いや、履く暇なかったじゃないですか、さっきの今じゃ」

 これ以上この方法で時間を稼ぐのも、そろそろ限界だろう。僕は下着を履いて、それからズボンも履いた。ふかふかのほかほかになった服に身を包まれて、さっきまであった下腹部あたりの強烈な寒さからやっと開放された。少しだけ身震いがする。それを恐る恐る確認してからのんさんが振り向いて「とにかく、邪魔はしないでね」と言ったときだった。

「杏、いいかげんにしろ」
「黒瀬さん! 無事ですか?」
「渉……」
「お前がどうしても叶えたい願いって、俺だろ?」
「ちょっと黒瀬さん、目覚めた途端にナルシスト過ぎるでしょ、それ」
「……そうよ! それが悪い! ?」
「え、そうなんですか? のんさんの願いが黒瀬さん? だったらなんで殺そうと思うんですか、矛盾してません?」
「渉が、私を一方的に捨てたのが悪いのよ!」
「黒瀬さん、それは幾ら何でも酷いですよ」
「だからそうじゃないって何度も言ってるだろ」
「のんさん、それは勘違いらしいですよ」
「じゃぁ、どうしていつも連絡しても繋がらないの?」
「ほら黒瀬さん、正直になりましょうよ」
「だからそれは仕事だって」
「システム部は毎日深夜作業なんですよ。のんさん知らないんですか?」
「週末に連絡しても、いつも忙しいしか言わないじゃない」
「流石に毎週末仕事っていうのはおかしくないですかね、黒瀬さん」
「疲れててゆっくり休みたいんだよ! だからそれに関しては謝っただろ?」
「それについては謝罪したそうですよ」
「あのね……」
「あのな……」
『お前(君)は黙ってろ(て)』

 見事にハモって言わなくてもいいじゃないか。だいたい痴話喧嘩なら、他人に聞こえない場所でやるべきだろう。勝手に巻き込んでおいて爪弾きにするなら、最初から巻き込まないで頂きたい。巻き込まれる側のことも少しは考えて欲しいものだ。
 僕は仲裁に入るのを諦めて、智子さんが寝ている仮眠用ベッド横に座り込んで「仲直りしたら教えて下さいね」とだけ言っておいた。今の二人に、果たしてその言葉が聞こえたかどうかは怪しいところだ。



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COMMENT

●黒さん

一応フィクションなので
まんま、ではないと思いますよ。うん。

私の性格まんまな気がするんだぜ。
  • 2010.03.18[木]

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