POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /45 -


ハコニワノベル

 こういう場合に焦って行動するとロクでもないことにしかならない。だからこそ冷静になる必要がある。これは今までの経験で培ってきたことだし、今日一日だけでもそれが間違いのないことだということが、痛いほど証明されている。
 叫ばないように気を付けながら、その声の主に訪ねてみる。

「あの、どちら様でしょうか」
「……一人、いや二人か」

 その声が後から聞こえたので、相手を驚かさないように気をつけながら振り返った。なぜなら、僕の後ろには智子さんが寝ていて、今の僕は智子さんを護衛するナイトだからだ。もしも声の主が智子さんに危害を加えようとするなら、すぐに駆けつける必要がある。そんなことを考えていた直後、慌てて振り向かなくてよかったと痛感した。刃渡り数十センチの鋭利で巨大な刃物が視線のすぐ先に見えたからだ。
 制御室内は薄暗いので、相手の姿を完全に捉えらきれていない。しかもこちらは下着とインナー姿で、ゴボウは智子さんが寝ている仮眠用のベッドに立てかけているという、読んで字のごとくに丸腰状態だ。今攻撃されたら一溜まりもない。更に思い出したけれど、この状況はとても寒い。いろんな意味で。

「もしかして、最初からここにいたんですか?」
「突然誰かが入ってきたから、隠れただけだ」
「つまりここの鍵を開けたのはあなたということですか」
「そうだ」
「ふむ。とりあえずですね、僕はこの服を絞ってまた着たいんですけど」
「服? ってなんでそんな格好してるんだ、冬だぞ? ……ん? なんだ、お前だったのか」
「へ?」

 視線の先に見えていた巨大な刃物が下がり、それを持っている人が近付いてきた。扉側から入る薄暗い光を頼りに、ようやくその男の姿を捉えることができた。

「なんだ、黒瀬さんじゃないですか」
「よぉ」
「脅かさないで下さいよ。……てか寒いんで、これ絞っちゃってきていいですか?」
「さっさと行け。早くしないと風邪引くぞ」

 そのままの格好で扉を開け、作業服をこれでもかと絞って中に戻る。まだ濡れてはいるけれど、さっきよりは随分マシだ。「ほら、これで身体拭いとけ」と黒瀬さんがタオルを投げてくれた。「ありがとうございます」と言って思い切り身体を拭きだしてから、そういえばと声を出した。

「このタオルって黒瀬さんのですか?」
「いや、誰のかは知らんよ。そこの棚に入ってた」
「ふむ、まぁ別に誰のでもいいんですけどね」
「相変わらずだな」
「黒瀬さんはずっとここにいたんですか?」
「最初に運良く武器が見つかったから、そのあとすぐにここに入ったよ」
「でもここって元々鍵がかけられてませんでした?」
「かかってたさ」
「壊したんですか? それともピッキング?」
「人聞きの悪いこと言うなよ。これだよ、これ」

 そう言って黒瀬さんが指先にブラつかせていたのは鍵だった。タグに噴水公園制御室と書かれている。黒瀬さんの話によると、運力のゲーム後で次のゲームが噴水公園で行われるということを聞いたあと、一階に降りる前に三階の運営部フロアに立ち寄って、この鍵を持ち出したらしい。なんという抜かりのない人だろうか。思考がロジカルにできているに違いない。
 まだ濡れたままの作業服をロッカーの扉にかけて、タオルで身体を拭きつつ黒瀬さんの隣に座った。

「でも、鍵って金庫に保管されてるんじゃないんでしたっけ? まさか、ピッキング? それともバールのようなもので……」
「だから人聞きの悪いことを言うなって。電子ロックの金庫だからな、暗証番号知ってれば誰でも開けられるよ」
「許可は取ったんですか?」
「許可? 取る必要ないだろ。既にKGCは会社として機能していないんだからな」
「まぁ、確かにそうですけどね。あ、そうだ。さっき僕たちがここに入ってきたときはどこに隠れてたんですか? 誰もいなかったと思うんですけど……」
「あぁ、ここだよ」

 黒瀬さんが言いながら指さした場所に、マンホールのような丸い穴がある。その横に外されたと思われる蓋もあった。「なんですか、ここ?」穴の中をのぞき込みながら聞くと「噴水のポンプ室への出入口だよ」と黒瀬さんが蓋を閉めながら教えてくれた。

「ショットガンを持った奴が突入してきたから隠れたんだよ。普通、えげつない武器をもった奴が現れたら逃げるなり、隠れるなりするだろ?」
「それは確かにそうですね。ふむ、こんなところにポンプが設置されてたのか」
「制御室と呼ばれてはいるが、実際に行う制御っていうのはポンプを操作することだからな。で、さっきのショットガンを持ってた奴は一体誰だったんだ?」
「企画部の近重さんですよ」
「あぁ、あの人か……。しかしあの人、どこかで訓練でもしてたのか? 素人じゃないだろあの動きは」
「僕もそう思ってます」
「あとは小谷と、そこのケガ人か。それにしても、このケガは尋常じゃないな……。誰にやられたんだ?」
「智子さんはハンターにやられたんですよ。他には秋山さんとか朋美さんとか、真樹さんもハンターにやられちゃいました……」
「そうか……」

 お互いにそこから言葉が続かなくなって、制御室内が静かになった。地下から噴水のポンプ音と、浅く短い智子さんの呼吸音だけが聞こえる。この重たい空気の中で過ごすのも耐えられそうにないので「それって青龍刀ですか?」と聞いてみたけれど「多分な」としか返ってこなかった。そして室内が再び静かになる。

 ――ガチャ。

 唐突に入り口のドアノブが回される音が鳴った。「じゅじゅさんかな?」とつぶやきかけたものの、すぐに黒瀬さんが青龍刀らしい刃物を手に取ったので飲み込んだ。黒瀬さんはすぐに壁を背にして息を殺している。じゅじゅさんもそうだけど、この人もどこかで訓練されていると思う。とても素人とは思えない。とりあえず僕もゴボウを手に取った。

「入ってこないな……、ちょっと様子を見てくる」
「無茶しないで下さいよ」
「分かってる。何か起きたら食い止めてやるから、お前はポンプ室に入れ」
「流石にそれはできない相談です」
「……まぁ、好きにしろ」

 小さく会話をしてから黒瀬さんが入り口の様子を伺うために、仮眠用のベッドが置かれているスペースから入り口の方を伺いながら出ていった。それに合わせるように僕も息を殺して、いつでも動けるように心構えをした。地下から噴水のポンプ音と、浅く短い智子さんの呼吸音、それから自分の心音が聞こえる。ゴボウを握る右手に少しだけ力を入れた。まぁ、僕は下着とインナー姿なのだけれども。
 すると黒瀬さんがふらっと戻ってきた。「どうでした?」と聞いても答えてくれない。さっきは訓練されたショットガンを所持した相手がいきなり突入してきたし、今も突然の来訪だったのだからものすごく緊張することが続いて、クールに装っているだけで、実はかなり憔悴しているのかもしれない。まぁ、普通の人ならばそれも仕方のないことだろう。

「代わりに僕が様子を見てきますよ」

 そう言いつつ、黒瀬さんとすれ違うようにして入り口の方へ移動しようとすると、突然黒瀬さんが手に持っている巨大な刃物を僕目がけて振り下ろした。

 ――ギンッ!
 鈍い音を出しながらゴボウでその斬撃を受け止める。黒瀬さんにゴボウを片手で押さえつけられて、再度振り上げられた刃物がウォンという空気を割く音と共に、今度は横になぎ払われる。その横からの斬撃を防ぐために押さえつけられたゴボウを、無理やり横に構えようとした。すると、ゴボウがぐにゃりと曲がった。

「お前硬いんじゃないのかよっ!」

 ゴボウはブーメランのような形になったものの、横からの斬撃を難なく防いだ。その直後、跳ねるように元の棒状に戻った。その反動で黒瀬さんの刃物を大きく弾き、刃物はロッカーに突き刺さって抜けなくなった。



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COMMENT

●黒さん

おぉ、ナイス読み。
太刀は使い勝手とか考えればかなりいいものですよね。


●じゅじゅさん

さて、なぜでしょうか。
どちらかと言えばですけど、「硬い」が「柔らかかった」時ってのは
女性の方がリアルに描けると思います。いろんな意味でw

く、黒瀬さん、なんで?(☉д☉)
「硬い」と思ってたものが柔らかかった時の反応は、男性ライターならではの描写ですわねwww

そろそろだと思ったw
太刀はいいよ。 うん。
  • 2010.03.15[月]

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