POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /43 -


ハコニワノベル

 分厚いカーテンがきちんと整えられた窓が等間隔に並んで続いていくのが見える。視線の先に並んだ窓の一つから、外を眺めている少女を見つけた。その少女に近付くとなぜかいきなり殴られた。
 窓の外には管理の行き届いている庭、その庭の中央には先進的なデザインの銅像。それから手入れの行き届いた花壇、奥の方には植物で作られたアーチも見える。
 少女に引っ張られて部屋に入り、巨大な円卓に座らされる。すると、目の前に暖かくて高そうな紅茶が注がれた、これまた高そうなティーカップが置かれた。香りがその高級感をより醸し出して――いや、実際は高いのかどうか分からない。
 隣にはさっきの少女が座っているのだけど、ティーカップを見つめたまま固まって、徐々に顔色を悪くしている。どうやらこの紅茶がお気に召さないらしい。この紅茶はそうそう飲めるようなものではない。ごく一般の人間には手の届かないほどの高級な紅茶だろうというのに、なんと贅沢でわがままな少女なのだろうか。少女を見つめてそう思いながら、ティーカップを手に取って一気に飲み干した。するとその途端、また少女に殴られた。そのまま胸ぐらを掴まれて何か怒られながら、何度も何度も揺さぶられて――。

「爽太! おい、爽太!」
「……ぇ?」
「しっかりしろ! くたばんじゃねーぞ」
「なんだ、じゅじゅさんか」
「なんだじゃねーだろ! お前自爆テロしてんじゃねーよ」
「……何の話ですか、それ? 僕は今少女と一緒に紅茶をですね」
「お前こそ何の話だよ……。お前覚えてないのか?」
「あっ!」
「どうした、思い出したか?」
「あの紅茶、飲んだら駄目だった……気がする」
「なに寝ぼけたこと言ってんだよ、ったく。……はぁ」
「じゅじゅさん、ため息をつくと幸せが一つ逃げるらしいですよ」
「減らず口叩けるなら無事みたいだな。だいだいなぁ、何の相談もなく爆発させるやつがあるかよ」
「爆発?」
「そうだよ、お前があのバケモノの口の中で、やたらと騒ぎ出したと思ったら突然静かになったから、こっちは何事かと思ってたらいきなりドンっ! だ。ちゃんとこっちに分かるように伝えてからやれってんだ」
「まぁまぁ、近重さん。一応全員無事だったんですから、そこら辺にしませんか……」
「あ、あぁ。まぁ、それはそうなんだけどな……」
「結果オーライですよ。ほら、待てば海路の日和有りってやつです」
「お前毎回タナボタじゃねーかよ! あー、ほんとこいつメンドくせぇ……」
「……あ!」
「どうしたの爽太? どこか痛む?」
「智子さん大丈夫ですか! ?」
「今は寝てるよ。だけど早く病院に連れて行かないと危ないと思う」
「それにしてもだ、小谷がいてくれて助かったよ。お前、看護師の資格でも持ってるのか?」
「いえ、両親が地元で医者をやってまして……」
「ミッチー先輩って、いいとこのお嬢さんだったんですか……、信じられない」
「どういう意味?」
「そうか、それで怪我人に対しての対応ができるわけか。でもさ、それなら実家で働けばいいんじゃないのか? なんでわざわざKGCで働いてたんだよ?」
「私、子供の頃に両親とあまり過ごしたことがなくて、それでよく友達と公園で遊んでたんです。夕方になって友達がみんな家に帰っても、私は公園にずっといたんです。家に帰っても誰もいないから。そんな調子でずっと公園にいることが多くて、いつの間にか公園に対して物凄く愛着心が湧いちゃって……、それで公園に携わる仕事がしたいなぁって。まぁ、両親は私に医者か看護師になってほしかったらしいですけど」

 少し恥ずかしそうに視線を逸らしながらミッチー先輩は言った。「……それはそうでしょうね」と返すと「私は自分の選択に満足してるからいいの」と強めに言われた。「そういうもんですかねぇ」と言いながら上半身を起こした。

「さてと。とりあえずだ、中居を雨風が防げる場所に移動させるぞ」
「あ!」
「なんだよ? 文句あるのか爽太?」
「いや、そうじゃなくて! バケモノはっ! ?」

 起こした上半身を左右に捻りながらバケモノの姿を探す。あれだけ巨大なのだからすぐに視界に入りそうなのに、右を向いても、左を向いても、あのバケモノの姿は見えなかった。周りにバケモノはいそうになかったので、自分が本当に無事なのかを手探りで確認する。するとなぜか全身がずぶ濡れになっていることに気が付いた。

「お前、本当に覚えてないんだな」
「え?」
「あそこにいるよ、爽太が倒したバケモノ」

 ミッチー先輩が言いながら指さした方向を立ち上がって確認してみると、あのバケモノと同じ色をした敷物のようなものが見えた。「なんですか、あれ?」と聞くと「だから、あのバケモノだって」とじゅじゅさんが返しながら手招きしている。
 近付いてみると、まるで割れた陶器のように、ひびの入ったバケモノの体表だけがそのまま残り、周りには放水したあとのような、ドロドロとした液体が飛び散っている。

「お前がこいつの口の中で自爆テロしたあと、お前だけ口の中から吹き飛んでそこの噴水の水の中に突っ込んだんだよ。バケモノは風船の空気を抜くみたいに口や手足から肉片と血を吹き出して、あっという間にこうなっちまった。ざまーみろだな」
「じゃぁ、こいつはもう……」
「しばらく様子を見てたけど、完全に死んじゃってると思う」
「つまり、お前がこいつをぶっ倒したってわけさ」
「流石ですね」
『自分で言うな!』

 なぜ二人からキツめに叩かれたのか分からないけれど、少しフラつくのでリアクションはしないでおこう。
 バケモノの頭らしきものから飛び散った液体の噴出方向を見る。「あぁ、そうだ」とつぶやいてその方向に向かって歩く。「何してるんだよ」と、じゅじゅさんに言われたけれどお構いなしに歩く。歩きながら探す。あの臭いは強力な胃酸だったのかもしれないけれど、あれなら、もしかしたら――まだあるかもしれない。

「爽太もしかして、これ探してる?」

 ミッチー先輩が棒をこちらに差し出しながら聞いたので「それも探してましたが、今は別のものです」とだけ返して探すのを再開する。花壇の影、噴水の死角、単純に吹き飛ばされているのならこの方向にあるはずだ。

「この棒じゃないなら何を探してるのよ?」
「忘れ物ですよ」
「忘れ物? あんた、あのバケモノの中で何か失くしたの?」
「僕のじゃないですよ」
「?」

 探す範囲を扇状に広げながら進んで、ついに低木の先でそれを見つけた。

「これなに? 腕時計にしては形が変だよね。アクセサリーかな?」
「メリケンサックですよ」
「メリケンサック?」
「秋山さんの武器だったものです」

 爆風で少し形が歪になってしまっているメリケンサックに、手を合わせて黙祷する。ミッチー先輩も続いて黙祷をしていた。それからそのメリケンサックを拾って、まだ眠っている智子さんの手に持たせた。

「これでよし」
「お前たまーに、ほんとごくごくたまにだけど、ロマンチックなことするよな」
「僕はいつでもロマンチシストですけどね」
「どこがだよ」
「あ、それからミッチー先輩。僕のゴボウ返してもらえますか」
「ゴボウ?」
「こいつの名前ですよ、名前」
「その棒の名前……ゴボウなのっ! ?」
「良い名前でしょ」
「いや、変だし! 私が考えてた名前の方がよっぽど良い名前じゃない!」
「バビブベ棒のどこが良い名前なんですか? そのセンスは理解し兼ねますよ」
「ゴボウの方が変でしょ! だって野菜じゃない!」
「でも、ユーラシア大陸原産なんですよ」
「え?」
「いやぁ、携帯は防水に限りますね」
「くだらない言い争いはそれぐらいにして、中居を運ぶぞ」
「どこに運ぶんですか? 安全な場所なんてまったくないと思いますけど」
「屋根のあるところなら、各所にあるベンチぐらいだし」
「噴水の制御室に運ぶ。あそこなら雨風は大丈夫だろ。早くしろよ、ぼちぼち降り始めそうだ」



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