POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /42 -


ハコニワノベル

 バケモノの動きは徐々に大人しくなってきている。どうやら、暴れ続けたせいで疲れているようだ。暴れたところで右前足の付け根に、深々と刺さっている針は抜けそうにもない。
 荒く呼吸をしながらヒョコヒョコと移動をしながら、グルグルと同じ場所を回っているこの目の前のバケモノは、異常に体表が固い。じゅじゅさんのショットガンでも無傷だったらしいし、ミッチー先輩の槍も弾き飛ばしていた。それなのに、智子さんの針は深々と突き刺さった。これはどういうことだろうか? 突き刺さった箇所は右前足の付け根。丁度、胴体と前足との境目部分だ。もしかすると、境目部分の体表は固くないのかもしれない。
 ぐるぐる移動を続けるバケモノを見つつ、智子さんの元へ駆け寄った。

「智子さん、大丈夫ですか?」
「……へへっ、少しは敵討ちになったかな」

 微かに微笑みながらそう言う智子さんの上半身を抱えて「十分、敵討ちになったと思います」と言ってから「だけど、考えなしに飛び込むのは感心できないですね」と付け加えた。

「……だって、我慢……できなかったんだ。絶対、ゆる……せなかったんだ……」
「智子さん、もう喋らない方がいいです。出血も凄いですし、早く止血しないと」
「な、なんだかさぁ、今、心地いいんだ。ふわふわ……してる……よ」
「……」

 抱えていた智子さんの上半身をゆっくりと寝かせてから顔を上げると、こちらに向けて体勢を低くし、鼻をヒク付かせて構えているバケモノの姿があった。どうやら、ここら辺りに飛び散っている血の臭いに向かって飛びかかろうとしているらしい。智子さんは片足を噛みちぎられていて逃げることは出来ないし、無理に動かせば今以上に出血してしまうだろう。小さく「やれやれ」とつぶやいてから、智子さんとバケモノの対角線上に立った。
 後ろから「爽太! 辞めろ! 無茶だっ!」とじゅじゅさんの声、良かったどうやら無事だったらしい。まぁ、殺しても死ななそうな人だから大丈夫だと思っていたけれど。「爽太、落ち着きなさい」とミッチー先輩の声も聞こえる。だけど、視線の先で跳びかかる構えをしたバケモノは、もう数秒も待ってくれないだろう。二人の声に振り向かないまま左手を上げて応えておいた。
 その瞬間、まるで上げた左手が合図だったかのように、バケモノが跳びかかった。

「グィィァァッ、グルァッ!」

 低い唸り声をあげながらバケモノが一直線に突撃して来ている。針の突き刺さっている右前足を使わずに移動しているので、ド、ドド、ド、ドドという妙な足音を響かせながら近付いて来る。右手の位置を棒の端から真ん中へ移して、それを縦に構えた。
 軽自動車ぐらいなら入ってしまいそうなほどの、巨大な顎が目の前に開けられたかと思うと、すぐに視界は暗くなった。

「爽太!」
「バカヤロウ!」

 ――臭い。
 そして暗い。更に足元はブニブニとした妙に柔らかい踏み心地だ。なるほど。これは、どうやらじゅじゅさんが言っていた通り、バケモノの口の中は柔らかいみたいだ。僕の右手にある棒がバケモノの上顎と下顎に少し突き刺さってつっかえ棒になってくれたお陰で僕は無事だし、バケモノは完全に口が閉じられないまま、開くこともできなくなっている。噴水を噛み砕くほどの強靭な顎を難なく受け止めるとは、この棒はデキル奴だな。刺さっている部分は簡単に抜けそうになさそうだ。しかし、ミッチー先輩の名付け案に「つっかえ棒」があったのが頂けない。このままだとつっかえ棒のイメージがまとわりついてしまうじゃないか。

「さてと」

 口の中に入って無事だったところまではいいものの、ここからどうしたものだろうか。さっき、智子さんに考えなしに飛び込むのは感心できないとかなんとか、自分で言っていた気がする。気がするだけだろうけれど、今となってはどうしようもない。

「そ、そんな……、爽太がぁっ! 爽太がぁ!」
「落ち着け、小谷。口が軽くて憎たらしい奴だったけど、憎めない奴だった」

 外からミッチー先輩とじゅじゅさんの声が聞こえる。そうか、ミッチー先輩の槍を外から渡して貰えばいいじゃないか。勝手に死んだことになっているのが不服ではあるけれど、今それをどうこう追求している時間はなさそうだ。

「お悲しみのところ申し訳ないんですけども」
「なっ……、爽太……なのか?」
「僕以外に、こんなにも聞き惚れるような、素敵な声は出さないですよ」
「お前、無事なのか?」
「今のところは大丈夫みたいですね」
「バケモノも妙に大人しくなっちまったけど、何したんだ?」
「単純に口が塞がらなくて気持ち悪いんじゃないですかね。ところで、ミッチー先輩の槍を取ってもらえませんか?」
「! ! 口の中からならやれそうか?」
「ここからなら、多分」
「よし小谷、槍を貸してくれ」
「え、あ、あれ? 爽太、無事なの! ? なんで? さっき食べられたんじゃ……」
「小谷、いいから槍」
「あっ、はいっ!」
「それから中居の止血を大至急頼む。このままだと危険だ。私は止血の仕方がいまいち分からんから頼む」
「わ、分かりました! やってみます」
「爽太、槍、入れるぞ」
「お願いします」

 すると突然、視界が薄く明るくなった。それと同時にバケモノの喉の方へ身体が勝手に移動していく。視界が明るくなった理由は、バケモノの口の隙間から雲が見えたことで分かった。どうやらバケモノが真上を向いたらしい。当然、僕が自分でバケモノの喉の方へ移動していたのではなく、重力で落ちそうになっただけだ。右手の棒にまるで公園にある鉄棒やうんていに捕まってぶら下がるような格好になった。しばらくすると今度はバケモノが頭を激しく揺さぶり始めた。

「くそっ……、おい爽……、なん、……を大人し……ないか?」
「む、無理だ、と、思い、まっ……すよ」
「だ……な」

 首を上下左右に振り回され、棒にしがみ付いているだけで精一杯だ。じゅじゅさんの声も跡切れ跡切れにしか聞こえない。こちらの声も同様だろう。この状態では槍を渡して貰うこともままならないじゃないか。次第にバケモノも開きも閉じもしない口が気持ち悪いのか、今度は地面に自分の下顎を何度も叩きつけるようになった。バケモノの口の中が大きく揺れ動く。――と、上着のポケットの中で何かが同じように揺れ動くのを感じた。揺さぶられながら左手をポケットに捻じ込むと、冷たくて固いものに触れた。携帯だと思ったけれど、どうも違う。揺さぶられながら強引にそれを引っ張り出してみると、ピエロのようなキャラクターが薄気味悪く笑っているのが見えた。

「……これが、殺人的にかわいい笑顔ってやつですか」

 それを落とさないように握り締め、右腕全体で棒にしがみ付く。これは安全ピンを引き抜いて投げ付ける手榴弾タイプの爆弾だ。朋美さんが僕にくれた爆弾だ。――これを、バケモノの腹の中に放り込めば、なんとかなるかもしれない。

「じゅじゅさん! 聞っ、こえます、か?」
「途切れ……れだな。どうし……」
「離れて! 離れてくだ、さいっ!」
「なんだっ……」
「離れ、てく、っださい! 離れて……、離れぇ、離れてて……下さいよ」

 そのまましばらく揺さぶられ続けて、じゅじゅさんの声が聞こえなくなるのを待ってから、左手のそれの安全ピンを引き抜いて「しっかりお食べ」とつぶやいて、バケモノの喉の奥へと投げ込んだ。その瞬間に、投げ込んだ爆弾が近くまで戻って来た。どうやらえづいて爆弾を口まで戻されたらしい。衣類や骨に構うことなく咀嚼していたのだから、これしきのものでえづくなんて、バケモノらしくないぞ。「食わず嫌いは感心しません……よっと」と足元に転がったそれを喉の奥へ蹴り込んだ。――今度は戻って来なかった。
 やれやれ、これで一安心――じゃないな。この状況で僕はどこに身を隠そうと思っているのだろうか。確か手榴弾なんてものは安全ピンを引き抜いてからものの数秒で――。

 バケモノの喉の奥から閃光、衝撃、遅れて爆音。



 ――ドンッ!



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COMMENT

●じゅじゅさん

しかも、人を食べてますからね。
臭いはずですw


●ともさん

ね、いい笑顔でしたよ。うん。

うわ!私の武器がすごく重要な役割を担っていたなんて!

うん、このバケモノの口の中はきっと凄く臭いんだろうなと思ってましたwww

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