POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /41 -


ハコニワノベル

 身体の三分の二ほどが頭のライオン――のような獣、いや、獣のようなものが目の前にいる。大きさは三メートルぐらいで、その巨大な顔はライオンというより、獅子舞の獅子に近い。夢中で貪っている口から絶え間なくヨダレが垂れている。「あれですか?」と智子さんに確認すると、智子さんは怯えたまま声もなく頷いた。

 ――バリン、ゴキッ。

 衣類や骨に構わず、かじり取った山田社長の左半身を食べ続けている。固いらしいその身体はサビのように赤黒い色をして、目は真っ白だ。多分、朋美さんがあいつに噛み付かれたままで爆弾を使ったからだろう。爆発による光で目がやられているように見える。なので時折鼻でクンクンと臭いを嗅ぎ、散らばった山田社長の残骸を探して貪っている。

「どうします? 出て行くまで待ちますか?」
「このまま大人しく出て行くわけないだろ。どうやら目は見えていないらしいな……、やるなら今か」
「この状況なら、今倒すべきですね」
「あんなのをどうやって倒すんですか?」
「小谷の武器でぶっ刺すんだよ」
「えっ? 私の武器って……、この槍ですか?」
「そうだ。その槍をあいつの口の中から一気に……」
「で、出来ないですよ! そ、そんなの」
「ミッチー先輩の傷害常習犯っぷりなら余裕ですよ」
「私がなんですって? どういう意味! ?」
「……山田社長、もう時期完食されてしまいますね。それで誰にします?」
「爽太、どういう意味かって聞いてるでしょ! ?」
「待て待て、今騒ぐんじゃない。奴に気付かれたら面倒なことになる」
「誰にするって何よ! ん? それ、本当に何の話?」
「囮ですよ」
「おっとり?」
「もうこのさい鳥取でいいです」
「え? えぇ? ? とっとり?」
「お前が喋るとメンドくせぇことにしかならないのかよ。囮だよ。お、と、り」
「囮? それってもしかして……」
「誰かがあのバケモノをひき付けて口を開かせる。その隙にミッチー先輩がズブリ! っとやっつける単純な作戦ですよ」
「ムリムリ、そんなの無理だよ! それに囮役の人、食べられちゃうかもしれないじゃない!」
「そうなんですよね」
「そうなんですってあんた……。それに私、槍なんて使ったことないし……」
「なら、私が突き刺す役をやるさ。囮役はもちろん……」

 物凄い目力でこっちを見てきている。なんでそんなに見てきているのか理解できない。「分かってるよな?」とか聞こえるように独り言を言うなんて、じゅじゅさんどうしちゃったんだろうか。もしかして、僕に惚れてしまったのかもしれない。極限状態、または一時的な緊張状態に陥ると恋に落ちやすい。確か、吊り橋理論って名前だったはずだ。

「私がやります」

 ミッチー先輩の隣で座り込んでいた智子さんが口を開いた。

「チコちゃんは、もうよく頑張ったから無理しなくていいよ!」
「そうだぞ中居。こういう役は、死んでも大して困らない奴がやればいいんだから」
「そういう話なら、この中に適任はいませんね」
「お前なぁ……、空気読もうぜ」
「読んでますよ、常に」
「読んでてあえての言動だとしたら、お前最悪だな」
「……とにかく、私がやります! あのバケモノの口を開かせればいいんですよね。とにかくやってみます!」
「中居、待て! 急に飛び出したりするな! ……くそっ、もっと落ち着けってんだよ。どいつもこいつも! 爽太! 仕留め損なったらあとは頼んだ」

 智子さんがバケモノに向かって走って行く。バケモノは山田社長を食べ終わって地面に滴っている血を舐めながら、グルグルと同じ場所を回っていた。じゅじゅさんは智子さんとは別の方向へ移動して槍を構えた。

「……お前のせいでっ! 私の大切な、大切な人たちがっ! うわぁぁっ! !」

 手にしたペン状の武器に付いているボタンを押し込んで針を飛び出させ、それをバケモノに向かって突き刺した。

 ――ギィン。

 鈍い金属音が響いた。「返せっ! 返してよ! 返してっ!」そう叫びながら智子さんは何度も何度も針を突き刺そうとする。その度に鈍い金属音が鳴り響く。まるで、古い時代劇の殺陣でも見ているように。――ギィン、ギン、ギィンッ!
 何度目かの金属音のあとに、聞き慣れない音が鳴った。すると、今までその攻撃をまったく意に介す素振りのなかったバケモノが突然飛び跳ねた。よく見ると智子さんの武器が右前足の付け根に深々と突き刺さっている。

「ブォォォォォッ!」

 雄叫びと同時にバケモノが暴れだした。もう、口を開かせてどうこうするような状況じゃない。目が見えていないためか、バケモノは手当たり次第に低木や花壇、噴水を破壊していく。
 じゅじゅさんがバケモノに近付こうとした瞬間、滅茶苦茶に暴れているバケモノがじゅじゅさんの方へ跳びかかった。

 ――ギィィィッン!

 今までで一番高い音を響かせてから、じゅじゅさんが槍ごと低木の向こうに吹き飛ばされてしまった。更にそのままバケモノは智子さんの方へ飛びかかり、その牙で智子さんの左足を奪い去った。「あっ、ぎぃやぁぁぁぁぁぁっ! !」飛び散る鮮血が辺りに飛び散っていく。「近重さん! チコちゃん!」隣でミッチー先輩が叫んでいる。目の前でバケモノはドタバタと暴れ続け、さっきまで身を隠していた噴水は噛み砕かれて既に見る影もない。
 ふいに意識が薄れていく。



   ◆



(ほら、どうにもならないじゃないか)

「なにが?」

(無駄に考えたってロクなことにならないのが分かっただろう?)

「そんなことないよ」

(またそうやって無理に良い方へ考える)

「……」

(そもそも、君が無駄に考えて起こった結果だろ?)

「……」

(都合のいい方へ考えるなよ、そもそも朋美さんが死んだのは、君が軽率なことを言ったからだ)

「……」

(そして朋美さんを追いかけて行くことになった秋山さんも死んだ)

「……い」

(近重さんからのアイコンタクトに気付いていたんだろ?)

「……さい」

(それなのに無駄なことを考えてたら、中居さんが飛び出したじゃないか。全部君が無駄に考えた結果だ)

「……さいっ」

(もう考えるの辞めたらどうだい? 君は元から考えることなんて出来ないんだから)

「うるさいっ!」

(やれやれ、そこまでして無駄に考えてどうするのさ?)

「……僕は、人生を楽しく生きたいんだよ」

(人外な君が生きることを、人生と呼んでいいのかい?)

「人生を楽しく生きるために、本気を出さずに楽をして生きる。それが僕の命題だからね」

(少しは本気を出せばいいじゃないか。ほら、今だって本気を出せば……)

「本気は出さない」

(頑なにスタンスは貫くんだ。いいの? 目の前で助けられるかもしれない人がいるのに?)

「それでも……、本気は出さない」

(なぜだい?)

「      だからね」



   ◆



「爽太! 何ぼーっとしてるのよ! 近重さんとチコちゃんがっ!」
「……ミッチー先輩はじゅじゅさんをお願いします」
「い、いいけど。あんたはどうするの?」
「智子さんを助けに。あとあのバケモノ倒してきます」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。あんなの倒せないわよ、私の槍だって弾き飛ばされたのに」
「とにかく、ミッチー先輩はじゅじゅさんを頼みます」

 くだらない自分が嫌になる。このぐらいのことで揺らいだ真似をしてどうなる。こんなことは最初から考える、考えないの話じゃなく分かりきっていることじゃないか。何をどうするか? そんなの決まっている。今できることを、できる限りやるだけ。たったそれだけだ。それ以上も以下もない。やれやれ、百年に一度の逸材であるこの僕でさえも、少しだけ冷静さを失っているらしい。まだまだ精進が足りないみたいだ。
 軽く息を吐いて右手の棒を握り直してから、暴れまわるバケモノの方へ飛び出した。



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COMMENT

●scaさん

新展開にもってくるのに41話使いましたww


●じゅじゅさん

爽太、近重さんに任されたぞ!
頑張れ!


●ともさん

じゅじゅさんも同じことされてましたw
隠し文字は仕込んでません。
いろいろな理由で。

「      だからね」の空白部分をドラッグで反転させてみたのは私だけじゃないはず。

爽太が誰(あるいは何)なのか、興味津々に見守ってます ^ ^
あ、純ちゃん吹っ飛ばされちゃったから、あとはお願いね、爽太( ̄ω ̄)b

おぉ♪何やら新展開♪楽しみだなぁ~♪
  • 2010.03.02[火]
  • sca

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