POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /39 -


ハコニワノベル

 爆風が一瞬遅れて中央広場に吹き寄せてから、今度は銃声が日本庭園の方向から響いた。――バァン! 山田社長のAK-47とは違って、少し高い音だ。「何? 何が起きてるの?」と隣のミッチー先輩が叫んでいる。

「緊急事態……か」
「え? 何? なんのこと?」
「いえ、こっちの話ですよ。こっちの」
「あんたの言うこっちって、どっちなのか分からない」
「僕にはその発言が分かりませんけ……」

 ――ドンッ!
 言い終わる前に閃光と爆発音。さっきとほぼ同じ場所に新たな黒煙が上がった。ミッチー先輩はその場にしゃがみ込んで「わ! ま、また?」と声を出している。どうやらこんなに見通しのいい場所で、じっとしているのはよろしくなさそうだ。

「森本部長。多分ですけど、じゅじゅ……近重さんたちはハンターと接触しているんじゃないかと思います」
「時間的に考えればそのようですね」
「ハンターは三体。近重さんたちがその三体すべてと遭遇したとは考えにくいです。それに山田社長もどこにいるか分からない状況なので、どこかに身を隠すのがいいかと」
「そうね。でも、全員で動いてしまうと近重さんたちが迷うことになってしまいます」
「ちなみにですが、どこをアジトというか、拠点にするつもりなんですか?」
「花壇に植えられたバラの刺による防御と、裏側の低木をくぐり抜ければ門以外からの出入りが可能な、フランス庭園がベストだと考えています」
「その話しを近重さんたちは……」
「まだ話せていないので知りません」
「えっと、ミッチー先輩。もう一度、近重さんに携帯で連絡取れます?」
「それが、さっきからかけてるんだけど繋がらなくて……」
「今は電話に出れないのかもしれないですね。……森本部長、もう一つ確認したいんですけど、ここにいる僕を除いた……六、七、八人は、明日の夜明けまでハンターと戦うことを決めた人たちですか?」
「そうです」
「近重さんたちを含めて、これで全員?」
「いえ、あと一人、武器を探している最中なのでここには居ませんが、鈴木部長も私たちの考えに賛同して頂いています」
「了解しました。森本部長は全員を連れてフランス庭園へ移動してください。近重さんには僕がここに残って伝えます」
「一人だと危険ね」
「いや、協力者をあまり分断しない方がいいと思います」
「なるほど、分かりました。それなら、ここはお任せしますよ、爽太さん」
「任されました」
「では皆さん、フランス庭園へ移動しましょう」

 森本部長に従って中央広場に集まった参加者が移動していく。
 ミッチー先輩、長谷川さん、ルー姉さんに森本部長、あとの三人は名前も知らない人たちだ。それから今はいない鈴木部長とじゅじゅさん、秋山さんと智子さん、朋美さんで十二人。僕を含めると十三人になる。少なくとも三人が既に殺されているから、ここに集まっていない参加者はあの山田社長を含めて九人。その九人は森本部長の考えに賛同はしていない。つまり、参加者に対して攻撃をしかけてくる可能性がある――。

「近重さんたち、大丈夫だよね?」
「……ミッチー先輩、何してるんですか?」
「何って、あんた一人だと心配だから残ったの」
「危険ですよ? 僕は大丈夫なので、みんなを追いかけた方が……」
「嫌」
「そんな子供じゃないんですから、大人の判断しましょうよ」
「絶対に嫌」
「いや、意地はってる場合じゃないですよ?」
「あんたが誰かに殺されるのなんて絶対に嫌」
「僕は別に殺されませんけどね」
「……冗談じゃなくて、本当に嫌なの」
「だから、僕は別に殺されませんって」
「もし、誰かにあんたを殺されるぐらいなら……、私があんたを殺したい」
「……冗談、ですよね?」
「結構、本気」

 ミッチー先輩はそのまま「冗談、冗談」と笑って言いながら、僕の隣に座った。

「爽太、その武器は何なの?」
「これですか? 棒ですよ」
「いや、それは見れば分かるけど……、何か特別な仕組みとかあるの? チコちゃんのみたいにジャキンと飛び出すとか」
「まったくないですね」
「え?」
「見たままの、素敵な棒です」
「あ、あんた武器に棒って書き込んだの?」
「そうですよ」
「……ま、まぁ、こんな状況になるなんて誰にも分からなかったんだし仕方ないとは思う。思うけどさぁ、せめてもっと武器らしいものにしとくでしょ、普通は」
「その普通というやつがミッチー先輩のそれですか」
「そうだよ。私ね、槍って書いたんだ」
「そうでしょうね」
「こう見えてもね、中学と高校時代は陸上部でやり投げの選手だったんだよ?」
「……やりの重さは女子が600グラムで、長さが2.2から2.3メートル。の、やり投げですね」
「よく知ってるわねって、なんで携帯見てるのよ」
「今調べてみただけですよ。ちょっと貸してもらってもいいですか? ……これ、重たくないですか? 余裕で600グラム超えてません?」
「うん。ただ単に槍って書いたからさ、やり投げ用のやりじゃなくて、槍なんだよね」
「これ、投げれたりします?」
「えー、無理だと思う」
「ですよね。お返ししときます」
「この槍さぁ、前に読んだことのある古い神話に出てくる槍に似てるんだよね。その神話の中ではグングニルって呼ばれてるんだけど」
「確かにそんな雰囲気ありますよ、その槍。じゃぁ、名前はグングニルなんですか?」
「名前? この槍の?」
「あれ、付けたりしません? 自分の所有物に名前」
「……ははは」
「なんですか、急に笑い出したりして」
「爽太ってさ、ちょっとだけ女の子みたいだね」
「付いてるものは付いてますけどね」
「……いや、そういう話じゃないから」
「立派なのがちゃぁんと……、はい! すいませんでした!」

 久しぶりに耳を引っ張られた。捻られはしなかったけれど痛い。さすが傷害の常習犯ミッチー先輩だな、手が早い。
 引っ張られていた左耳をさすっていると「あんたのその棒は?」と聞かれて「どっちの棒ですか?」と聞き返そうになってギリギリのところで踏みとどまった。口を滑らせていたら、もしかすると槍で耳を削がれたかもしれない。

「こいつですか?」
「うん、その何の変哲のない棒はなんて名前?」
「やっとさっき手に入れたところで、実はまだ決めてないんですよ」
「なら私が付けてあげようか?」
「遠慮しときます」
「なんでよ!」
「いや、なんとなくですけど」
「なんとなくなら別にいいでしょ! そうだなぁ……」
「だから、お断りですって」
「いいじゃない、減るもんじゃないんだから」
「愛着が減りそうなんですよ、確実に」
「どういう意味! ?」
「それは察して下さい」

 隣で「こうなったら絶対に納得させるような、良い名前考えちゃうから!」とかなんとか言いながらミッチー先輩がうんうんと思案している。これは絶対にナンセンスな名前を提案してくるに違いない。

「バビブベ棒!」
「却下」

「ひのきの棒!」
「却下」

「棍棒!」
「却下」

「ボウ棒!」
「却下」

「つっかえ棒!」
「却下」

「んー、じゃぁ爽太の棒!」
「却下、それはセクハラですか?」
「は? ……あ! ちち、ちが、違うわ!」
「痛いなぁ、別に殴らなくてもいいじゃないですか」

 その後も予想通りにナンセンスな名前ばかりを提案された。確かミッチー先輩、企画がやりたかったはず。これでは多分、いや確実に、その夢は叶うことのない夢になると思う。非常に残念ではあるけれど。

「おい、お前ら! 楽しそうなところ悪いが逃げるぞ!」

 突然聞こえた声の方を見ると、服のあちこちをズタボロにしたじゅじゅさんと智子さんが、こちらに向かって走って来ていた。智子さんは顔色が悪いように見える。

「じゅじゅさん落ち着いて下さいよ。あれ? 朋美さんと、秋山さんは?」
「……喰われた」
「え?」



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COMMENT

●じゅじゅさん

はい。喰われてしまいました。(淡々と言うな)

・・・喰われた?喰われた?!
えぇぇぇぇぇ?!秋山さんの左フックも敵わなかったの?!

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