POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /37 -


ハコニワノベル

 弾丸は左頬から数センチほどの至近距離をかすめて飛んでいった。
 さっきとは逆で、左耳がツンと痛む。

「ふん。動きもしないとはね」
「あの、もしかして山田社長ってかなり射撃が下手なんですか?」
「いいや、わざとだね」
「わざと?」
「そう。やっと追い詰めたんだ、ここからが一番楽しいんだよ。分かるかね」
「分かりかねますよ」
「まぁ、すぐに分かる。次は太ももに撃ち込むから、想像を絶する痛みに悶えなさい。その次は反対の太もも、それから両腕と撃ち込んでいくよ。フフフ、君は助けてと言わざるを得ないだろうね」
「いやぁ、それはどうですかね」
「ここまで追いつめられて、まだそんな軽口が叩けるのは大したものだよ。でもね、そういう奴が目の前で痛がり、苦しみ、悶え、最終的に助けを哀願する。それはもう最高のショーだ。さぁ、君も見せてくれるかね、私という存在にひれ伏す姿を」
「あ、それは遠慮しときます」

 喋るのに夢中になっていたのか、銃口が僕から大きく外れた。そのタイミングで後方の花壇裏へ飛び込む。「この、逃がすかっ!」という声とほぼ同時に銃声ニ発、さっきまでいた場所の足元に一発、もう一発は肩口をかすめた。
 花壇の裏側が小さな崖のようになっていたので、着地のタイミングが合わずにお尻を強く打った。なんというダイナミックな尻餅だ。すぐに体勢を整えて崖に張り付くように隠れる。少し窪んでいるので上からこちらがどこにいるかは分からないだろう。それでもほぼ真上にいるらしい山田社長は何度か発砲し、足元数センチ先を弾丸が跳ねている。そのまま物音を立てないように少しずつ落下した場所から横へと移動していく。一歩、一歩少しずつ。焦るな、焦るな。絶対に物音を立てないようにしなければ。

 ガン。

 何かに足をぶつけた。すぐに弾丸が目の前で跳弾する。「フフフ、そこにいるのかね」という声がまた真上から聞こえている。ほぼこちらの位置はバレているらしい。こんなシビアなタイミングでいったい何にぶつかったというのだろうか。足元にあるらしい何かを、頭上に注意を払いつつ視線だけを落として確認した。――そこに、未開封の宝箱が転がっているのが見える。すぐにしゃがみこんで宝箱を頭上へ持ち上げた。慌てていたので逆さま状態で持ち上げてしまった。すかさずその宝箱に発砲され、衝撃が宝箱越しに頭と腕に響く。
 そのまま宝箱を片手で持ち上げつつ、胸ポケットに入れている自分のIDを宝箱にかざした。期待はしていなかったものの、宝箱から電子ロックの外れる音が鳴った。逆さまにしていたため、そのまま宝箱が開いて、中に入っていたソレがちょうど足の上に落ちた。
 再度宝箱に射撃され、片手でその衝撃に耐え切れず、宝箱はバランスを失い目の前に弾け飛んだ。

「フフフ、君は非常によく逃げた。これ以上君と付き合っている時間はもうない。だから君をじわじわと殺すのは辞めよう」
「そうですか。それは良かった。さ、諦めてお帰り下さい」
「そういう意味の話では……ないよっ!」

 その言葉と一緒に、目の前へ山田社長が飛び降りてきた。その手にはAK-47は無かったものの、代わりに銃剣として取り付けられていたAK-47には不釣合いな、西洋的な装飾の剣を持っている。ロールプレイングゲームなんかで出てくるような剣だ。きっと誰かの武器をどこかで奪ったものだろう。

「さぁ、死ねっ!」

 足の上に乗っているソレを、サッカーのリフティングのように足ですくいあげて手に取り、振り下ろされた剣を防いだ。「なにぃ?」と驚いた山田社長を押し離して小さな崖をよじ登る。山田社長は突然の事態に驚いたのか、押した勢いで尻餅を付く形になった。なんというスタティックな尻餅だろうか。

「ま、待てっ」
「だから、待てと言われて、待つ人なんていませんよ」
「それなら、待つな! 行け!」
「はい、そうします」
「くそったれっ……」

 よじ登った先で花壇に立てかけられているAK-47を手に取り、壊された噴水の水の中に放り投げた。そのままイタリア庭園の門を飛び出して中央広場へと向かった。後ろから追い掛けられている気配はまったく無かった。
 ある程度の距離を走ってから、右手のソレに気が付いた。結局全ての庭園を探し回る羽目になったけれど、大事な場面で巡り合えたのは良かった。長さ、硬さ、重さ、持った時のフィット感。どれをとっても最高のものだ。これはきっと帝園グループ本部が実現可能レベルで最適なものをチョイスしたのだろう。材質が何なのか分からないけれど、さっきの剣を防ぐだけの硬度はあるのだから、なかなか頼りにできそうだ。
 どんな状況であっても自分が扱えそうな武器を選んでおくのが間違いの無い選択。そうだ思い出した、参加表明時にそんなことを考えて記入したんだった。――棒、と。
 改めて右手で持っているソレを見る。木のような、プラスチックのような、それでいて金属のような棒。材質が分からないだけで、他には何の変哲もないただの棒だ。長さは一メートル二十センチといったところだろう。振り回しながら歩くのに丁度いい。

「棒は棒でも相棒なわけか……、棒じゃ味気ないから名前でも付けておこう。んー、何がいいかなぁ……」

 つぶやきつつ歩いていると中央広場が見えた。物陰に身を隠してこちらを伺っている顔に見知った顔がチラホラ見える。

「爽太!」

 最初に駆け寄って来たのはミッチー先輩だった。いつも通り、元気そうだ。いつも通りじゃないのは、その手に物騒な槍を持っていることぐらいだ。シンプルな作りだけど、先端は鋭利になっている。僕の持っているこの棒と同じように材質がパッと見じゃ分からない。昔風に言うならギヤマンの輝きを放つ、どことなく神話の世界から持ち出したかのような槍だ。

「あんた、無事?」
「ミッチー先輩。ちぃーっす」
「大丈夫なの?」
「何がですか?」
「その……肩」
「え?」

 山田社長の売った銃弾が肩口をかすめたときに、どうやら軽く出血していたらしい。

「あぁ、別になんてことないですよ。ダイナミックな尻餅をついただけで……」
「バカ!」

 そこからなぜか作業服の上着を剥ぎ取られ、ミッチー先輩がなぜか持っていた包帯で傷口の治療をされた。その手さばきがあまりにも的確だったので、一瞬いつもなんだかんだでドジを踏むミッチー先輩が、ベテランのナースに見えた。まぁ、一瞬だけのことだったけれど。

「これでよし。他には怪我してない?」
「してないですよ」
「本当にぃ? ……ちょっと右の手首、すごい出血じゃない!」
「いや、これは怪我したとかじゃないですね。時間があまり無かったのでちゃんと洗えなかっただけですね」
「他には無さそうね。うん、行ってよし」
「その前に上着返してもらいますね」
「あ、ごめん! って、あんた上半身裸じゃない! な、何してるのっ! ? は、はや、早く着なさいよっ……ば、バカ!」
「無理やり脱がせたのはミッチー先輩じゃないですか……」

 これは明らかにセクハラ行為だ。証人は周りに沢山いるから決定的だろう。しかも断ったのに無理やり脱がされたのだから、パワハラに脅迫も追加されるだろう。示談で終わらすような甘い対応じゃだめだ、これはもう出る所に出なければならない。

「みんなの前で見せつけてくれちゃうねー」
「ちょっと、朋美ちゃん! そ、そういうわけじゃないから!」
「じゃぁ、こんな緊迫した状況の中で、どういうわけだったんですかねー?」
「あの、それは、えっと、えっとね……、あぁ、うぅー」
「それはそうと君さ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なんでしょう?」
「ここに来る前にどこかで真樹見かけなかった?」
「……真樹さん、ですか?」
「そ、二人で移動してたんだけど効率悪いから二手に別れたんだよ。私はフランス庭園で自分の武器見つけたからここに戻ったんだけど……」
「……ちなみに、どんな武器なんですか?」
「ん? これだよ」

 まるで子供がおもちゃを見せるように、朋美さんが差し出したのはどこからどう見ても爆弾の類だった。全部で三つ、一つ一つにピエロのようなキャラクターが描かれていて、薄気味悪く笑っている。

「これ、何って記入したんですか?」
「殺人的にかわいい笑顔」
「え?」
「殺人的にかわいい笑顔」
「え?」
「だから、私のこの殺人的にかわいい笑顔だよ」
「そしたら爆弾を準備してもらったと」
「変だよねー」
「なんとなく、分かります」
「適当だなー。多分そんなに使いどころもないだろうし、一つ君にあげるよー」
「それはどうも」
「でさ、真樹見なかった?」

 ――右手首に残った血の汚れの一部が、乾燥して剥がれ落ちた。



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COMMENT

●じゅじゅさん

こういうことって
実際に言い辛いですよね。


●ともさん

朋美の方でしたー。
智子と名前かぶるなーとは書き始める前に思ってましたが
そのまま始めてしまいましたw

朋美と智子とどっちだろうとずっと悩んでいたんですが、朋美のほうだったんですね。(笑)

い、言えないよねぇ・・・(-""-;)
さぁどうする、爽太!

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