POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /36 -


ハコニワノベル

 長座の格好で、真樹さんは虚ろな表情をしたまま微動だにしないでいる。その表情は、眠たくなっただけのようにしか見えない。汚れていない左手で確認してみたものの既に脈はなく、身体も暖かくはなかった。そのまま左手で真樹さんの虚ろになったままになっているまぶたを閉ざした。
 相変わらず下から聞こえる山田社長の叫び声と、それに合わせるように何度も鳴り響く銃声を無視しつつ、滝の注ぎ口で手を洗う。その後、もう一度真樹さんの元へ戻って手を合わせた。
 改めて遺体を確認してみると、特に争ったような形跡はない。引きずられたような跡もない。あるのは開封済みの宝箱から滝の注ぎ口までの血痕ぐらいだ。直接の死因と思われる胸の傷、いや、これはもう傷というより穴が空いているという方がしっくりくるぐらいだ。こんな致命傷を与えられているのに、まったく抵抗したような痕跡がないところを見ると、真樹さんが殺されたのは一瞬の出来事だったのだろう。虚を突かれたか、油断していたか、そもそも攻撃に気付かなかったか。でなければ、死因だと思われるこの外傷の説明が付けられない。
 胸からの出血は真樹さんを中心に水たまりのように血が広がっている。
 その穴は直径十数センチぐらいはある。槍のようなもので突き刺された――いや、直径数十センチもある槍で突き刺すなんて現実離れし過ぎている。バズーカのようなもので吹き飛ばされた――とするなら、こんなに原型を留めているのもおかしい。今の時点で言えるのは、下で叫び散らしている山田社長の仕業ではないということだろう。AK-47ではこんな芸当は出来はしない。
 もう一度、真樹さんに向けて手を合わせる。それから真樹さんの両手を重ねて穴を隠すように置いた。本当は指を組ませようと思ったけれど、既に指の関節は硬直していて出来なかった。「真樹さん。すみませんが、今はこれぐらいしか出来ません」再度、手を合わせて短く黙祷した。

「そろそろ、かくれんぼは終りにしようかね!」

 僕がここへ登ってきた方向から叫び声と、石垣をよじ登ってくる音が聞こえる。このままここに隠れていても見つかってしまうだろう。それよりも、真樹さんの遺体が見つかってしまう方が問題だ。山田社長の言動から考えれば、下衆な駆け引きを仕掛けてくるぐらいのことは容易に想像が付く。そんなことになったら、真樹さんが浮かばれない。

「隠れても無駄だよ」

 確実に声は近付いてきている。
 やれやれ、もう少し丁重に葬る時間が欲しいところだけれど、そう言っている時間もないらしい。

「さぁ、ぎりぎりまで痛めつけてから殺してあげようね」

 山田社長がここまで登り切る前に――滝の注ぎ口に飛び込んだ。
 日本庭園の滝の水深は十センチ程度で、水さえなければ急勾配の滑り台のようなものだった。飛び込んだときの着水音で、こちらの動きに気が付いた山田社長が、途中まで登っていた石垣を飛び降りた。すかさず悲鳴に近い声をあげながら発砲してくる。一発目は右側に一メートル逸れた、二発目はかなり上空へと逸れている。三発目は僕の落下方向ニメートルほど先、四発目と五発目は四、五十センチ程の滝つぼに着水していたので音しか分からないけれど、当たってはいない。そのまま後ろを振り向くことなく滝つぼから飛び出して走る。
 後方から追いかけられながら数発の発砲。幸いなのは、山田社長が動きながらの射撃に慣れていなかったことと、真樹さんの遺体に気付かないまま僕を追いかけて来てくれていることだろう。叫び声と銃声は聞こえるものの、弾丸は僕にかすることなく飛んでいるようだ。そのまま最初に追い詰められた紅葉の木を横切って門へと向かう。

「待てっ! 絶対に、絶対に逃がさん」
「待てと言われて、待つ人なんていませんよ。それに、僕にはまだやることがあるので、ここらで失礼します」

 振り向かないまま叫ぶように言い残して門を出る。日本庭園から飛び出しながら、その門を叩きつけるように閉めた。
 逃げる方向は二つ、日本庭園に入る前に通った正門前へと続く通路と、まだ行っていないイタリア庭園のある噴水公園の奥へと続く通路。正門側に移動してしまうと反対側にあるイギリス庭園まで隠れるような場所はない。そのまま噴水公園の奥に伸びる通路を走る。ほどなくして日本庭園の門を開く音が聞こえてから発砲音。今度の弾丸は頭の右側三十センチほどをかすめていく。右耳がミッチー先輩に捻られたときのように痛い。もう少しで人類の未来を左右する脳細胞が入った頭が木っ端微塵になるところだったな。

「逃さんぞ……、絶対に、はぁ、追い詰めて……はぁはぁ、なぶり殺しに……」

 後方からの叫び声が徐々に弱々しく、遠ざかっていく。イタリア庭園への門に滑り込みつつ後方を確認してみると、山田社長は日本庭園を出てしばらく進んだ場所で立ち止まって呼吸を整えているのが見えた。高齢者がAK-47を持って走ったりなんかするからだ。それでも、僕がイタリア庭園に入ったのは見られているだろうし、山田社長が呼吸を整えてしまえばまた追い詰められるのは目に見えている。状況はそんなに改善してはいない。
 日本庭園内でのことを考慮して、辺りを警戒しつつイタリア庭園の奥へと進む。隣の庭園から銃声が何度もしたからなのか、人の気配はまったくない。中央にある水がめを持った女性を模した像の噴水の近くに、三つほど開封済みの宝箱を確認した。

「今度こそ、逃げ場はないね!」

 門から呼吸を整え終わった山田社長が入って来るのが見える。残念ながらイタリア庭園に隠れるような場所はない。噴水の像に身を隠くしながら、庭園の奥へとゆっくり移動する。じりじりと山田社長は距離を詰めて来ている。この距離から撃たれたら、どんなに山田社長の射撃技術が低いとしても、かなりの確率で被弾するだろう。相手に合わせて噴水を回るように移動しつつ、庭園の奥を確認する。低木と花壇が見える。なんとかあの裏へ飛び込むしかない。

「そんな像が盾になってくれると思うかね?」

 連続した銃声に合わせて、目の前の像が砕けて小さくなっていく。数メートルしか離れていないのだから命中率も破壊力も凄まじいものがある。「さぁ、死ね! 死ね! 死ねい! !」不吉なことを連呼しながら銃声が木霊するように続く。既に目の前にある女性の像は水がめが崩壊して、噴水とは呼べなくなっている。元々美しいラインだったウエストの辺りは、更に細く華奢にダイエットしてしまった。女性というのはもう少しふくよかな方が美しいということを教えてあげたいほどだ。
 ダーン、ダーン、ダーンとリズムよく三度の銃声のあと、ついに女性の像は倒壊した。バラバラに倒壊してしまった元噴水のあった方向の延長線上に、AK-47をこちらに構えている山田社長が見える。

「何か言い残すことはあるかね? 例えば、私への謝罪とかな」
「特にないです。山田社長への謝罪なんていうのはまったくもって無いですけども」
「そうか……。じゃぁ、死になさい」

 目の前でAK-47の引き金が引かれた。



 ――ダーン。



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COMMENT

●じゅじゅさん

無実ですねw


●scaさん

物語(小説等)を書く場合に
大部分は作者自身の実体験や思考を切り出すので
作者自身が投影されている部分は少なくないと思います。

そういった意味では、正解だと思いますよー。
私は彼ほど冷静じゃないですけどww


●樹さん

そうなんです、思い付いた展開でこうなってしまいました。
既に、書き始めた時に考えていた展開とは違うので
作者自身がどう展開していくか予測不能になってます。

エクスカリバーを振りかざして戦ったんだろうなぁ。
勇ましいですw

あれ?死んじゃいました?
いつのまに・・・
バリバリ闘う気でおりましたのにっ(笑)
  • 2010.02.23[火]

頑張ってくださいねー♪私は静香さんに活躍してほしかったけど・・・出番はなさそうですし(笑)颯太?そうたさんがだんだんしのめんさんとかぶってきました(笑)なぜだろう???(笑)
  • 2010.02.22[月]
  • sca

バズーカは頼んだ覚えないから、純ちゃんは無実ね ^ ^

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