POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /35 -


ハコニワノベル

「早く出て来い」
「嫌ですね」
「何? 拒否権があるとでも思っているのかね」
「拒否権? 自分の意見を主張するのに、そんなもの必要ないですよ」
「まぁ、悪あがきはしないことだね。大人しく出て来るのなら、苦しまずに殺してあげよう」
「それは困ります。僕はとにかく楽に生きたいだけですから」
「この場から生きて戻れるとでも思っているのか?」
「思ってますよ」
「調子に乗るなっ!」
「調子に乗る? いやいや、こんなものじゃなく、まだまだ乗れますよ」
「ふざけるなっ!」

 銃を構える音は岩を挟んで僕の対角線上で鳴った。なるほど、今はお互いに相手の姿を捉えきれていないらしい。携帯電話を取り出して構える。程なくして銃声が響いた。弾丸が岩に当たってはじけ飛んでいく。

「ちなみに、そこから更に先へ進んでしまうと噴水公園の敷地から出てしまうことになる。つまり、もう逃げ場なんてものはないんだ」
「それはどうも、ご忠告ありがとうございます」
「見たところ、君は武器らしいものを持っていないじゃないか。私はここで、君が痺れを切らすのを待ち構えていればいいだけ。君には、この状況を打破する手立てがまったく無いということだよ。だから大人しく出てきたらどうかね」
「それはどうですかね」
「いつまで強がっていられるかね? もうじきハンターが投入される時刻になる。ここは正門から一番近い庭園だ。となれば、そのハンターはすぐにここへやって来るだろう。その時刻になったら、私は身を隠すよ。もちろん、君がそこから出てきた瞬間に撃ち殺せる場所にね」
「いやいや、その時間になったらとっととどこかに行っちゃって構わないですよ」
「それは私に哀願しているのかね」
「失礼な。哀願ってのは、するものじゃなくてさせるものでしょう」
「何をわけの分からないことを言っているんだね。フフフ。まぁ、錯乱状態になるのも分からなくはない」
「さくらんぼ? さくらんぼと言えばですね、僕はさくらんぼのくきを口の中で二重で結べるんですよ」
「いよいよ、パニック状態か……。フフフ、いいね。とてもいい。極限状態の中で必死に生きようとする。そういう人間をね、こうしてじわじわと追い詰めて殺す。これは最高に良い気分だよ」
「それはそれは、とても嫌な趣味してますね。もしかしてそんな理由で人を殺してるんですか?」
「生き物はいつか死ぬよ。遅かれ早かれね」
「あー、なんとなく言いたいことは分かりますよ? だけど、それは人を殺す理由にはならないですね」
「君に分かったような口を聞かれる筋合いはない。別にそれが動機などではないよ。君に、君のような一般社員に分かるかね? 企画二課から地道に業績を積み重ね、企画部の部長になり、そこから何度も苦汁を舐めながら耐えに耐え、やっと、やっと入社してからの努力が報われたと言うのに……。その報われた矢先に会社が無くなったんだぞ? 君のような努力すらしない社員がいたから、こんなことになったんだ!」
「あぁ! いつも気弱そうで胃薬飲んでるイメージがあったから、誰なのか分かりませんでしたよ、山田社長」
「社長の顔もまともに覚えていないような、君のような不真面目な社員がいたから、業績が伸び悩んだんだ。君にはここで死んで詫びてもらう、絶対にね」
「僕がどれほど会社に貢献していたのか知ってるんですか? 知ってるなら、そんなことをこの百年に一度の逸材である僕に言えるわけがない」
「今更何を言ったところで、会社は元には戻らんのだよ。もう終わったんだ。だからっ! 私の役に立たなかったクズで、ゴミ当然な社員たち全員を、私はこの手で撃ち殺すと決めたんだよ」
「要するに、武器という力を手に入れたから、それを振りかざしたいだけですか。今時の中学生でもしないですよ、そういうの」
「だまれ! 私の役に立たなかった者は撃ち殺す!」
「いやー、さっきも言いましたけどね。僕はとにかく楽に生きたいだけです。もう、それだけですよ」
「仕事っていうのは楽じゃない! 地道な努力の積み重ねしかない! なぜ分からない! なぜ分かろうとしないっ! これだから最近の若い奴らは……」

 そっと足元に落ちている石を拾っておく。

「別に分かろうとしていない、ってわけじゃないですけどね」
「さて、無駄話もここまで。君には死んで貰うよ、そこに転がってる二人みたいにね。そうすれば私の願いが叶う各率がぐっと近付くんだ。最後ぐらい、私の役に立ちたまえ」
「あの、ちなみにですけど……何を願ったんですか?」
「君に言う必要性はない。……が、冥土の土産に教えてやっても構わんよ」
「メイドの土産ですか? それちょっと欲しいです」
「十枚だよ」
「へ?」
「十枚への加入。それが私の願いだ」
「なんですか、その十枚って」
「十枚のことすら知らないのか……。まぁ、死んでしまう君に教えても無意味だろうね」
「一応言っておきますけど、僕が武器を持っていないなんて早とちりしない方がいいですよ」
「ふん、そんな見え見えのハッタリには引っかからないよ」
「ハッタリかどうか、確かめてみます?」
「そんなに言うならやってみればいい。さぁ、どうぞ」
「僕は別に攻撃したくないんですけどね」
「攻撃したくても出来ない、の間違いじゃないかね? 君が武器を持っているなら、既に攻撃してきてるはずだよ」
「だから、僕は別に攻撃したいわけじゃないですから」
「そこまで言うなら攻撃してくればいいじゃないか。さぁ! 私はここだ。どうした? 出来ないのかね?」

 その声が聞こえる方向へ、拾っておいた石を全力で投げつけた。ついでに、さっき録音した銃声を携帯電話から最大音量で鳴らす。ダーン、と言う音とほぼ同時に、相手が潜んでいると思われる付近に石が到達して、激しく音を立てた。「な、なに?」と言う声とガサガサと相手が後退していく音が聞こえた。しかし、これは何度も使える手じゃない。回数を重ねれば重ねるほど効果は薄れてしまうし、ここまで距離が離れてしまったら録音した銃声は既に聞こえないだろう。つまり、二度目のハッタリはできない。この状況を打破するには今しかチャンスがない。
 隠れていた岩の上に登り、滝の石垣をよじ登る。「逃がすかっ!」と言う声と数発の銃声。その中の一発が足をかすめたものの、そのまま石垣を登りきる。石垣の上は平たくてそれなりに広さがあり、大きめの岩がゴロゴロしていたので身を隠すのは容易だった。更に、さっきのハッタリが効いているらしく、山田社長は無理に追いかけては来なかった。銃火器を持っている相手が自分より高い位置に陣取ったとなれば、かなり不利になるからだろう。もちろん、僕は銃火器なんて持ってはいないけれど。
 これで少しは時間が出来た。最悪このままハンターが投入される時間までやり過ごせば、山田社長も移動せざるを得ない。そうなってくれれば、僕も移動がしやすくなる。それにこの位置からなら、相手の動きは分かりやすい。不意打ちや待ち伏せもされにくいはずだ。

「だけど、ここでハンターが投入されるまでやり過ごすのはナンセンスなんだよなぁ」

 滝の上から辺りを確認する。山田社長はさっきよりも随分後方で身を隠しながら、こちらの様子を伺っているのが見える。さっきまでいた滝の裏側には、二人の遺体と未開封の宝箱が一つ。視線を自分の周辺に戻すと、登ってきた方向と反対側にある岩の影に開封済みの宝箱を発見した。その宝箱に近付くと、赤黒い汚れがこびり付いているが分かった。それが血だということは臭いで分かった。更にその血は点々と地面に続いている。山田社長に気付かれないように、その血を追いかけて移動していくと奥にある滝の注ぎ口にたどり着いた。地面の血はそこで消えている。

「さては、さっきのはハッタリだったな!」

 下にいる山田社長が叫んでいる。何度か叫びながらこちらに向かって発砲を繰り返している。今不用意に身を乗り出せば、簡単に狙われてしまうだろう。さて、どうにも手がなくなってきた。遅かれ早かれこうなることは分かっていたものの、もう少し下の岩で隠れつつ時間を稼ぐべきだったかもしれない。今、ここに登って来られたら、別の方向へ一気に駆け下りるしかない。そうなると、ここを陣取られて狙い撃ちされてしまうのだから、かなりのリスクを背負うことになるだろう。
 岩陰から相手の位置を確認しつつ、死角になるように滝の注ぎ口のそばにある岩の裏へよつん這いで入り込んだ。



 ――びちゃ。



 先に伸ばした右の手のひらに、何かがベタリと付いた。下にいる山田社長の方を向いていたので、それが何なのかすぐに分からず、かなり遅れてから手のひらを確認した。――右の手のひらが、赤い。



 手のひらに、ベッタリと、赤い色。
 手のひらに、ベッタリと、赤い色。
 手のひらに、ベッタリと、赤い色。

 テノヒラニ、ベッタリト、アカイイロ。
 テノヒラニ、ベッタリト、アカイイロ。
 テノヒラニ、ベッタリト、アカイイロ。



 アカイ、アカイ、アカイ、アカイ、アカイ、イロ。



 地面に大量の血が滴っている。その更に奥へ、ゆっくりと視線を移動させていく。





 そこに、胸を貫かれて死んでいる、――真樹さんの姿があった。



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COMMENT

●じゅじゅさん

まぁ、あれです。
そういうことなんですよ。うん。

少年マンガ的に後で~~というのは無いのだけは確かです。

え?真樹さんてあのランチ仲間の真樹さん?
ほんとに死んじゃったの?!

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