POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /33 -


ハコニワノベル

 刃物を持った二人が噴水の左右の通路に別れて進んで行く。秋山さんと智子さんは僕からみて右側の通路をこちらに向かってきている。左側へ進んだ男はプール状の噴水に身を潜めながら進んでいるので、きっとあの二人を挟み撃ちにしようとしているのだろう。スタンガンらしきものを持っている一人は噴水の裏側で隠れながら様子を伺っているようだ。

「これはこれは、どうもどうも」

 スタンガンらしきものを持っている一人に話しかけると、叫び声だけは出さないものの、まるで飛び上がるかのように驚いていた。きっと意識を門側からやって来る二人に集中し過ぎていたのだろう。

「な、おま、お前ど、どこからっ」
「落ち着いて下さい。僕の名前は爽太ですよ」
「そ、そんなこと聞いてねぇっ! 仕方ない。これ以上邪魔されるとこっちも困るんだ、悪く思うなっ……つぅ……」

 スタンガンらしきものを突き出そうとしてきたので、手に取っていた未開封の宝箱で気持ち強めに殴りつけてみた。宝箱自体の重みはそんなにないけれど、簡単に破壊出来ないようになっているらしく、かなり固い。とても痛かったのだろう、どうやら気絶してしまったようだ。非紳士的行動をしようとするからこうなる。男なら紳士たれ。と強く語っておきたいところだけど、相手がのびているのでまたの機会にしておこう。

「ちょっと待ちな」

 古臭いセリフが聞こえたので、身を隠しつつ声の方を確認すると、右側に進んでいった男が背中に刃物を隠しつつ秋山さんと智子さんに話しかけているのが見えた。反対側も確認すると左側に進んだもう一人の男は、間もなく秋山さんと智子さんの後ろ側にたどり着こうとしている。
 このままだと右側の男に意識が向かっているうちに、左側の男に襲われてしまう。かと言って僕が不用意に飛び出せば、右側の男が隠し持っている刃物を振りかざすのを早めるだけだ。やれやれ、悩んでいる時間もあまりない。
 僕は右側の男の方へ飛び出した。すると右側の男が刃物を高々と振りかざし、まさに振り下ろそうとしているのが見えた。「バレてたか」と口からこぼしていると、不思議なことに気が付いた。右側の男がまったく動かないのだ。いや、よく見れば細かく震えているのが分かる。近づいて確認してみようとすると、右側の男が仰向けに倒れた。

「何しやがった! ? これでも喰らえ!」

 左側の男がプール状の物陰から飛び出して秋山さんに襲いかかった。これはまずい。ここはこの宝箱を無理矢理投げつけるしかない。そう思い立ってすぐに、宝箱を力任せに投げようと投球フォームに入ったものの、僕は宝箱をそのまま足元に置いた。なぜなら、左側の男がプール状の噴水内に吹き飛んだからだ。

「不意打ちするのに叫びながらじゃ駄目だろう、素人さん」
「秋山先輩、この人たち大丈夫……ですかね?」
「さぁ? 手加減してる状況じゃないから本気でやっちゃったからなぁ。まぁ、死んではないと思うぞ」
「は、ははは……痛そう」

 僕が宝箱を投げつける間際に見たのは、秋山さんの綺麗な右フックだった。

「秋山さんって、左フックだけじゃなくて右フックもあるんですね」
「ん?」
「あ、爽太君」
「どうもどうも」
「基本的にパンチならそこそこ出来るよ、私は」
「それはスポーツジムとかで覚えたんですか?」
「いいや、スポーツジムじゃなくてボクシングジム」
「ガチじゃないですか」
「一応、免許持ってるんでね」
「素人に拳を使ったら駄目じゃないですか」
「状況が状況だからな、あまり気にしないことだよ」
「と言うか、素手じゃないんですね」
「お? あぁ、これか? これは私の武器だな」
「どう見てもごついメリケンサックですけどね」
「そうなんだよ、私はちゃんと愛情と記入したのにな。まさかこんな武器になるとは」
「愛情……アイジョー。なるほど、それはちゃんとした武器ですね」
「え? 爽太君、どういう意味?」
「いや、なんとなく思い付いただけですけどね。アイアン・ジョーですよ」
「アイアン・ジョー?」
「ダジャレみたいなものですけどね、アイアンは金属って意味で、ジョーはアゴですよアゴ」
「ハハハ、それ面白いな。金属でアゴを割るか、気に入った」
「秋山先輩に一番持たせたらいけない武器な気がする」
「安心しろ中居、お前に気合を入れる時は外してやるから」
「絶対ですよ?」
「任せとけ。ところで美知恵の彼氏君。君の持ってるその宝箱、もしかして未開封か?」
「そうですよ」
「中居、IDカードかざしてみ」
「はい」

 智子さんがIDカードをかざすと、電子ロックの外れる音が無機質に聞こえた。「ビンゴだな」と秋山さんが言いながら宝箱を開くと、その中には三色ボールペンのようなものが入っていた。

「これが中居の武器か。ちなみに何って記入してたんだ?」
「わ、私は耳掻きと……わっ!」

 智子さんがおもむろにそれを手にして、何かをカチっと押し込んだ瞬間。ペン先から鋭い針が五十センチほど飛び出した。こんなもので耳掻きをされたら、簡単に鼓膜とさようならになってしまうだろう。これはもう耳掻きと言うより耳貫きと呼びたい。

「中居の武器もえげつないな、ハハハ」
「もう一回押すと引っ込むんだ……、もっと使い勝手の良さそうな武器が良かったなぁ」
「それは悔やんでも仕方ないですよ。まだ武器が見つかって良かったじゃないですか、僕なんてこの通り丸腰ですよ」
「君もまだ見つけてないのか」
「そうなんだ。あ、だったら今ここにのびてる人から奪うっていうのは?」
「刃物が二つに、スタンガン一つを奪うんですか? どれも別にいらないなぁ」
「三つ? 私が吹っ飛ばしたのは二人だぞ?」
「あぁ、そこの裏にもう一人いるんですよ。まぁ、宝箱で殴っちゃって気絶してますけど」
「私、この刀もらっちゃおうかな」
「中居、武器はそのままにしといてやれ」
「でも危なくないですか? 意識を戻したらまた襲ってくるかもしれないし?」
「不意打ちでなければこんな素人恐れることもないさ」
「そうかもしれませんけど……」
「中居は他の参加者の命を奪おうと思ってるのか?」
「そんなこと思ってないですよ!」
「それなら、ハンターとか言うのが入って来た時に、こいつらを丸腰にしてたら間接的に命を奪うことにならないか?」
「……そ、そうですね」
「だろ? だったらこいつらはこのまま見逃すべきだ」
「分かりました」

 のびてる三人を噴水裏に並べて座らせてから、僕たちはイギリス庭園を出た。

「私らは中央広場に向かうけど、君は?」
「僕はまだ自分の武器を見つけてないですからね、どこかで未開封の宝箱見かけませんでした?」
「日本庭園で何個か見かけたよ」
「じゃぁ、僕は日本庭園に向かいます」
「さっき銃声も聞こえてたから気をつけてな」
「大丈夫ですよ。三回聞こえただけで、それ以来聞こえてませんし」

 そう言い終わるのと同時に四度目の銃声。――しかも今度は、銃声後に男性のうめき声まで聞こえた。

「な? 危ないぞ」
「だ、大丈夫ですよ。きっと、いや、多分」
「爽太君、無理して近づかない方がいいんじゃない?」
「ご心配なく。僕ぐらいになると弾丸を避けるのも造作も無いですから」
「冗談抜きで気をつけろよ。こんな状況だし、集合場所である中央広場も安全とは言えないしな」
「心得ております。お二人も気をつけて」

 二人と別れて日本庭園の方へと向かう。閉ざされた正門を横切り、日本庭園への門が近付くにつれて男性のうめき声が近づいてくる。やれやれ、どうやら発砲している参加者は日本庭園の中にいるらしい。門の横に続く低木の植え込み部分に潜り込むようにして、僕は日本庭園の中へと入った。



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