POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /31 -


ハコニワノベル

 定刻通りバスは勝ち残っている参加者全員を乗せて出発した。紙咲さんがまるでバスガイドのように社内マイクを手に取って話し始めた。こういうシチュエーションもいいと思う。

「今から、体力のゲームについてご説明させて頂きます。まず、これから上坂噴水公園の方まで移動します。だいたい十五分ぐらいでしょうか。そこが体力のゲーム会場になっております」
「で、ルールは?」
「……チッ。まず、皆さんにして頂くことは宝探しです。会場のどこかに皆さんのIDカードでのみ開けることのできる宝箱が設置されています。まずはその宝箱を探して下さい」
「宝箱? 中に財宝でも入ってるんですか?」
「いいえ。宝箱の中には皆さんが参加表明時に書き込んだ武器が入っています」
「武器ってことは、戦うの?」
「……チッ。先に説明をさせて頂いてよろしいですか? その後で時間があれば質問を受け付けますので」

 また不機嫌になった紙咲さんが続ける。

「皆さんには会場に入って宝探しをして頂きますが、皆さんの会場入りから一時間後に、三体のハンターが会場に入ります。このハンターは、皆さんを発見すると襲ってきますのでご注意ください。もちろん殺すつもりで襲いかかってきます。そのハンターと戦うためにも、一時間以内に自分の宝箱を発見しておいて下さい。もちろん、武器の変更申請等は受け付けられません」

 周りから「うわー」とか「もっとマシな武器を書けばよかった」という声が聞こえる。これだから素人は困る。どんな状況であっても自分が扱えそうな武器を選んでおくことが、間違いのない選択だろう。それにしても僕は何を武器にしたんだったっけ?

「制限時間は明日の夜明けまで。明日の夜明けまでに生き残っていれば願いを叶える権利を得られます。もしくは、生存している参加者が一名になった時点でゲームは終了となり、その一名に願いを叶える権利が与えられます。ハンターから逃げ延びるか、隠れてやり過ごすか、もしくは……、他の参加者を消してしまう。など、どのように攻略するかを今のうちにしっかりと考えておいて下さいね」

 バス内が静まり返った。
 今、この人が発言した内容に参加者それぞれが思惑を巡らせていることだろう。本部が用意するであろう三体のハンターと戦い、逃げ隠れしながら明日の夜明けを待つよりも、いち早く武器を手に入れて他の参加者を消す――つまり殺してしまう方が、願いを叶える権利を得られる可能性が高いことは、誰が考えても分かることだろう。特に、殺傷能力の高い武器を選択していた人はそう考えているだろう。

「また、ゲーム終了前に会場から出ることはできません。正確に言うならば出ることは可能ですが、命はないものとお考え下さい」

 KGC社内でのゲームと同じだ。半ば強制的な密室状態で、自らの命を危険に晒すゲームを行う。今回はそれが野外で行われるだけだ。それに付け加えるとすれば、今回のゲームは参加者同士の殺し合いが容易に想像できるという点ぐらいだろう。
 携帯電話で日の出の時刻を検索すると、明日の午前七時二分だと分かった。ついでに現在時刻が間もなく十六時半になる。日の出まで十四時間半。ハンターとかいう得体の知れないものに追われながらを考えれば、逃げ延びるのはかなり危うい。
 噴水公園の面積は――、7,740平方メートルらしい。携帯電話に表示されている検索結果にはそう記述されている。オフィス街にある公園としてはいびつなほど大きい。しかし、実際に中に入ると分かるのだけど、障害物さえなければ肉眼で端から端まで見渡すことが可能だ。そこそこ視力があるなら、人が歩いるかどうかぐらいは判断できるだろう。つまり、逃げ隠れにはあまり向いていない。
 ハンターは三体。まずこの数え方から考えてみると人ではなさそうだ。人であるなら三人だし、マシーンだとかロボなら三台だ。それをあえて三体と数えるのだから、猛獣の類かもしれない。”ハンターは、皆さんを発見すると襲ってきます”という話だから、話の通じるような相手ではないのだろう。飢えた肉食獣あたりだろうか。いや、その場合なら三匹と呼ぶか――。紙咲さんの口ぶりから考えれば、簡単にどうにかなるような相手ではないのだろう。
 少し質問でもしてみるか。

「一通り、ルールは分かって頂けましたでしょうか」
「あの、質問が二つ、三つあるんですけど、いいですか?」
「どうぞ」
「明日の夜明けになった時点で、ハンターでしたっけ? それがまだいた場合はどうなるんですか?」
「夜明けと同時にハンターは本部側で片付けることが可能ですのでご安心下さい」
「夜明け時点で参加者が複数人いる場合、願いを叶えてもらう権利は誰のものになります?」
「夜明け時点で残っている参加者全員に権利が与えられます」
「なるほど」
「もうよろしいですか?」
「あ、ついでにもう一つ。今日から噴水公園で開催されるクリスマスイベントはどうなるんですかね?」
「KGCが実質的に経営破綻しているため、関連する全ての商事、行事共に中止または廃止となっております」
「と言うことは一般のお客さんは噴水公園に入ったりしないわけですね」
「そうなります」
「ありがとうございました」

 その後、他の参加者から何個かの質問がされていたけれど頭に入ってこなかった。

「せっかく、久しぶりに真面目に準備したのになぁ」
「残念ですねぇ、爽太さん」

 僕の座っている席の通路隣りに座っていた人が喋った。いや、人じゃない。これはマリモだ。いや違う、森本部長だ。どうなっているんだろう、髪の毛の量がいつもの二倍ぐらいの大きさになっているように見える。

「みんなで頑張って準備してましたのにねぇ、ほんと残念」
「そうですよね、しかも癒しとは正反対のことをしようとしてますし……」
「えぇ、えぇ。でも、逆に考えれば素敵なことになるかもしれませんよ」
「素敵なことですか? どうにもそうならないようにしか思えないんですけど……」
「ほら、爽太さんが先程質問してらした中に、明日の夜明けまで生き残っている参加者は全員願いを叶えてもらう権利が頂けるとか」
「えぇ、はい。うん。あ、ありました……ね」
「あのね、あなたさっきからどこを見てらっしゃるんですか。私の顔はもっと下ですよ」
「えっ? い、いやぁ、素敵な髪型なのでつい見惚れてました」
「お口が上手でいらっしゃるわね」
「そんなことは……、えーと、な、ないでござる」
「無理に使い慣れない言葉を言う必要は御座いませんよ? ホホホ」
「そうみたいですね、オホホ」
「さぁ、みんなで協力して夜明けまで頑張りましょう」

 森本部長がバス内の参加者に向けてそう言うと、何名かがそれに応えていた。もちろん全員がその提案を飲むとは思えない。むしろ先手必勝の考えで、参加者を片っぱしから片付けようとしている奴の方が多いだろう。なぜなら既に、いや、バスに乗り込む前から殺気立っている参加者もいるのだから。
 そのままバスは何事もなく上坂噴水公園に到着した。時刻は十六時四十分を過ぎたところだ。後ろに座っていたはずの参加者が、こぞってバスの前へ前へと押し寄せているため、異常に人口密度が高い。

「それでは、皆さんの首を賭けた最後のスラッシュ/ゲームを、開始して下さい」

 紙咲さんがそう宣言すると、バスの出入口が開かれた。それと同時に押し寄せていた参加者がなだれ込むように外へ飛び出して、あっという間に参加者たちが噴水公園の正門に吸い込まれていった。なんとなくそれをバスの中から見送ってから、僕はバスを降りた。
 正門から噴水公園内に入ると、どうやら僕が最後だったらしく、重々しく正門が閉ざされ外側から封鎖された。この正門が次に開くのはおよそ一時間後、得体の知れないハンターとか呼ばれる何かが入ってくる時だ。



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