POSITISM

適度に適当に。

07« 2017.08 »09
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スラッシュ/ゲーム - /30 -


ハコニワノベル

 階段を降りながら情報を整理していく。
 今のところはっきりしているのは、次のゲームが体力を主に使用するゲームだということだけだ。これまでの傾向から考えれば、命の危険に晒されるのは間違いないだろう。その体力のゲームに参加する人数は二十五人。確か、最初のゲームが終わったときに聞かされた話の中で、総参加者数が百五十五人だったのだから、現時点での生存率は16%程度――いや、自主リタイアした人も生存しているのだから、生存者は四十一名。生存率は26%。それでも四分の一まで減っている。逆に言うならば百十四人が今日だけで殺されたということだ。
 最初のゲームで人がたくさん殺される異常事態に混乱したからだろうけれど、参加者の大多数は人が殺されていくことに鈍感になっている気がする。そりゃ、周りで機械的にあれだけの人数が殺されていけば、感覚が狂ってしまうのも頷けるけれど、さすがにちょっと鈍感になり過ぎている気がする。本部の社員に従うしかないと、勝手に思い込んでしまっている人が多い。よくよく考えてみれば、こんな理不尽な要求に従う方がどうかしている。
 紳士中の紳士であるとことの僕は、こんな状況であっても鈍感にはなれない。なぜなら既に――、五年ほど前のあのときから、僕の感覚は狂っているのだから。いや、もっと前からだったっけ?

「おっと危ない、変なとこまで思い出しかけたな」

 独り言をつぶやきつつ階段を降りて行く。そういえば、自主リタイアした人たちは本当に無事に帰れたのだろうか。今までのことを考えるとノーリスクだというのは怪しい。ここはひとつ殺しても死にそうにない、溶解する妖怪にでもメールでも送ってみるか。



 件名:お元気?
 本文:無事でござるか?



 志津バアにメールするときに気を付けないといけないことが三つある。
 一つ目は、絵文字を使わないこと。これは「飾る暇があるんやったら、とっとと要件を書け」ということらしい。
 二つ目は、簡潔な内容にすること。これは「携帯電話みたいなもん、長時間も眺められへん」ということらしい。
 三つ目は――、なんだったのか思い出せないけれど、絶対にやってはいけないことだったことは確かだ。



 件名:元気
 本文:無事。



 返信された内容は素っ気ないけれど、これはいつも通りなので気にしない。一応確認のメールだけしておく。



 件名:リスクは?
 本文:何もなし?



 件名:ない
 本文:既に自宅へ向かう電車内。



 件名:それはよかった
 本文:さすが妖怪



 件名:せやろ
 本文:あとは任せた



 何を任されたのかいまいち分からないけれど、ひとまず志津バアが無事なら、他の自主リタイアした人たちも無事だろう。――多分。
 そんなメールのやり取りが終わるのとほぼ同時に一階にたどり着いた。メールをしていて気が付かなかったけれど、一階と二階を塞いでいた防火シャッターは既に収納されていたみたいだ。なるほど、これなら自主リタイア組は普通に階段で外に出れたのだろう。

「よぉ。さっきのすごかったな」
「え? あぁ、黒瀬さん」

 一階エントランスに出たところで黒瀬さんから話しかけられた。

「ほら、さっきのゲームで全部運力のカード選択したろ?」
「あれは、ほら、あれですよ、たまたまですよ」
「たまたま? そんなわけないと思うけどな」
「どうしてですか? あんなのたまたまですよ、たまたま」
「単純に三分の一を連続して選択するとしてだ、確か体力を選択した二十三人全員だろ? それを単純にかけると……」
「0.0000000008%ぐらいですよ」
「計算早いな……って、また携帯か」
「便利なものは使った方が楽ですからね」
「まぁ、そうだけどな。でだ、その天文学的な確率なことを、お前はやってのけたんだぞ。これがたまたまで済ませられるかよ」
「僕は連続しようがなんだろうが関係ないと思いますけどね。どんなタイミングであっても三分の一じゃないですか」
「俺がたまたまじゃないって思ってるのは、確率が天文学的だからじゃないんだけどな」
「それじゃぁ、なにをもってたまたまじゃないと?」
「お前さ、言ってただろ」
「なにをですか?」
「”今からカードを選択してまわります! 皆さんの命、預かります!”とかさ」
「言いましたっけ?」
「本気で覚えてないのか? それとも覚えてないフリか?」
「フリじゃないですよ」
「フリじゃない……って、あぁ、真似か」
「これは覚えてない真似……って、先に言わないで下さいよ」
「お前、食えない奴だな」
「意外と美味しいですよ?」
「そういう意味じゃない」
「いやいやいや、こう見えても歯ごたえシャキシャキで、味がじわっと広がる高級食材ですよ」
「お前は、いろんな意味で食えないな」
「意外と美味しいのに……」
「もういいって。ま、次のゲームもお互い気を付けような」
「あぁ、黒瀬さん」
「なんだ?」
「黒瀬さんの下の名前ってなんでしたっけ?」
「渉だ、ワタル。それがどうした?」
「いやぁ、良い名前だなぁと思って」
「ん? それだけか?」
「特に深い意味はないですけど、黒瀬さん気を付けて下さいね」
「どうした急に?」
「いや、次のゲームでいつ殺されるか分からないじゃないですか」
「それはお互い様だ」
「そうですけど、黒瀬さんの方がきっと危なくなりますよ」
「なんだそりゃ」
「なんとなくです。なんとなく」
「一応忠告として受け取っとくよ」

 黒瀬さんとの会話はそこで終った。
 黒瀬さんはこれまでのゲームで首を切ったであろう人物よりも、身内に気を付けるべきだ。あの穏やかじゃない発言の対象は黒瀬さんだ。そして黒瀬さんにそんな穏やかじゃない発言をするであろう人は一人だけ。――あの人だけだ。やれやれ、これは厄介なことになりそうな気がする。



 件名:せやろ
 本文:あとは任せた



 ふと、さっき受信した妖怪メールを思い出した。――思い出さなきゃよかった。
 それに、さっきの黒瀬さんの対応を見てると、僕が言いたかったことのほとんどを、既に分かってるような感じがした。まぁ、電話で直接言われたのもあるんだろう。あぁ、そうか。だからこそヤボ用なのか。

「体力のゲームに参加される皆さん、こちらにお集まり下さい」

 その声のする方に視線を移すと、今までプロジェクターに映し出された姿しか見れなかった紙咲さんがいた。思ったよりも背は低い。勝手なイメージで長身スレンダー美人を思い描いていたのを修正しておこう。

「今からこちらが用意したバスで上坂噴水公園まで移動して頂きます。現地に到着した瞬間からゲーム開始となりますので、お手洗い等は今のうちに済ませておいて下さい。また、バスでの移動中にゲームのルールをご説明いたします」

 近づいてみるとプロジェクターで見るよりも美人だった。背は想像より低いもののスレンダーだし、ロングの黒髪ストレートに赤フレームのメガネも似合っている。プライドの高そうな雰囲気がとてもよく伝わってくる。
 ふと、紙咲さんの指先が気になった。何かを指で引っ張るようにしきりに指を動かしているからだ。まるで、空中にある何かをニギニギと掴みとるようにも見える。僕の視線に気付いたからなのか、こちらに気が付いた紙咲さんはその動作を辞めてしまった。もしかするとクセなのかもしれない。しかも人にはあまり見られたくない類の。紳士中の紳士である僕がレディの嫌がることをし続けてはならないので、自然に視線を紙咲さんの顔へ移した。

「準備が出来た方からバスの方へご乗車下さい。間もなく出発いたします。遅れた方は首を頂きますのでご注意下さい」

 相変わらず、さらっと恐ろしいことを発言していることに誰もツッコミは入れなかった。早速バスへ移動していく人もいれば、トイレに行く人。その場で話し込んでいるミッチー先輩と三人組みたいな人たちもいる。僕は特にすることもないので、エントランス内を軽く見回してからバスへ移動した。
 KGC前に停車していたバスに乗り込む。ざっと数えてみると四十人は乗れそうだ。通路に座席を出せばもう少し乗れるタイプのバスだ。既に乗り込んでいる人数は七人。知り合いは特にいない。奥の方に疎らに座っているので一番前の席に座ることにした。窓から見える空は予測通り分厚い雲で覆われている。雨はまだ降ってはいないけれど、いつ降ってもおかしくない天気だ。



≪/29へ
/31へ≫

COMMENT


FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。