POSITISM

適度に適当に。

09« 2017.10 »11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スラッシュ/ゲーム - /28 -


ハコニワノベル

 ――僕が選択したカードは運力だった。
 これで僕の勝ち抜けは決まり。まぁ、百年に一度の逸材である僕が、こんなところでリタイアするはずがないのだから、当然と言えば当然の結果だ。それに僕には、選択したカードが運力であるという確信に近い自信があった。自分のことながら、これを間違えているようじゃ先が思いやられることになっただろう。
 隣を確認するとミッチー先輩は顔を伏せたままだったのでそっとしておきつつ、視線をまんべんなく応接室内に広げてみる。今回のゲームも現時点でそれなりの人数が被害にあってしまったようだ。首の切り取られた参加者の遺体を機械的に本部の社員が運んでいくのが見える。それにしても、あの数の遺体をどこに運んでいるのだろうか。安置するにしても、放棄するにしても数が多過ぎる。最初のゲーム会場であった四階のフロアにでも運んでおくのだろうか。

「わっ……、どうしよう」
「真樹、落ち着け。落ち着いて選んでくれたらいいからなー」
「だ、だけど」

 少し離れた場所で真樹さんと朋美さんが見えたので近づいてみる。

「これはこれは、どうもどうも」
「また、君かー」
「奇遇ですね」
「奇遇って、今社内で生きてる人はみんなここにいるでしょ……」
「そう言われたらそうですね。そうか、もうこれだけしか生きていないのか」
「何と言うかさー、君って何事にも客観的な視点しか持ってないよなー」
「そうでもないですけどね」
「……」
「どうしたんですか? 真樹さん」
「真樹はどうもしないんだよー。私が体力を選んじゃったから、真樹に選んでもらおうと思ってさ」
「……え、選べないよぅ」
「それなら安心して下さい」
「え?」
「この僕が選んで差し上げますよ。颯爽とね」
「そうかー、真樹が選んでくれたなら何が出ても文句は言わないけど、君が選ぶなら文句言うし、もしものときは一生枕元に立ってあげるぞー」
「それは楽しみですね」
「……本気で選ぶの?」
「僕はいつだって本気ですよ」
「朋美、爽太君に選んでもらってもいい……かな?」
「いいよー。どのみち誰かに選んでもらうんだしなー」
「そう……、分かった。じゃぁ爽太君、お願いするね……」
「了解しました。……じゃ、コレで」

 左に設置されたカードをなんの前触れもなく表向きにする。「ちょっと、いきなりなの! ?」とか「潔すぎるだろー」だとか言われたけれど気にしない。なぜなら迷う意味がないからだ。迷って何かが変わるのなら、長い時間をかけて迷った人が報われないことが起きるはずがない。だけど世の中ってやつは基本的に迷おうが、悩もうが結果が劇的に変化することなどあり得ない。それなら、迷ってる時間の方がもったいない。
 表向きになったカードは――運力。

「おおー。君は運がいいんだなー」
「よ、良かったぁ……。私、真ん中にしようと思ってたんだよ! ありがとう、爽太君!」
「礼には及びませんよ。僕もちょっと試してみたかった部分もありますしね」
「試すって恐ろしいこと言うなよー。ま、助かったからいいけどさー。とにかくありがとなー」
「いえいえ。それでは僕はまだカードを選択しなくちゃいけないので失礼しますね」
「選択しなくちゃいけない?」
「あぁ、こちらの話なので気にしなくて大丈夫ですよ」

 その場所を離れ、プロジェクタが映し出されていた壁まで移動する。既に参加者は全員一度はカードの選択を終えているようだ。振り返って応接室内を確認すると、首を切り取られた人、勝ち抜けた人以外、つまり現時点でカードを選択して貰わなければならない人だけが、周りの参加者に声をかけていたりしている。きっと数えるまでもなく二十二人が残っているのだろうけれど、その人数を数えてみる。
 ――二十、二十一。あとは志津バアを含めて二十二人。
 思った通り二十二人だ。となれば、あとは片っぱしから選択するだけか。やれやれ、こんなタイミングでヒーローにならなくてもいいとは思うけれど、僕という存在が自然とヒーローになる運命なのだろう。
 頭の中で何度も思い出しておいてから声を出した。

「すいませーん、体力のカードを選択しちゃった人! 今からカードを選択してまわります! 二十二人の皆さんの命、預かります!」

 一瞬だけざわざわしたけれど気にしない。
 まずは先頭の列にいる人のカードは――、左側。
 次の人は右側、その次は左側、その次は右側で、確かその次は左側。よしよし、ここまで全部運力のカードだ。気を抜かないように次の人へ進む。ここは真ん中で、その次の人は右側、その次は真ん中。今のところハズレなし。ここから先が微妙になってきているから、しっかりと思い返しておこう。

「おい、なんでお前なんかに命を預けなきゃいけねーんだよ」
「あらあら、三好さんじゃないですか。お疲れ様です」
「なんでお前でしゃばってんの?」
「ちょっと今話しかけないでもらえません? 一個間違ったら残り全部間違えちゃうじゃないですか」
「なんの話だよ。とにかく俺はお前に選んで欲しくなんかねーよ」
「……えーと、うんうんうん」
「話し聞けよ! お前の選択で殺されたら死んでも死にきれねーし」
「あー、ちなみに三好さんはどれを選択して欲しいですか?」
「俺の個人的な考えなら、右側のカードだな。どうせ選択するなら、俺の指定したカードにしろ、な?」
「分かりました」

 真ん中のカードを表向きにする。

「ちげーし! 右側って言ったろ! お前何して……」
「はい、運力でした。良かったじゃないですか。では、僕はこれで」
「はっ、礼なんかしないからな」
「それは期待してないですよ」
「はっ、一生期待するんじゃねーぞ」
「安心して下さい。今まで三好さんに何か期待したことなんて一度もないですよ」
「チッ」

 さて、次に集中しなくては。今ので十一人だから――、次は真ん中だ。その次が右側、またその次が左側。えーと、確か次も右側で、その次は左側だったな。ここまで全て運力だ。しかし、どうしても後半が曖昧になってきているな。一旦深呼吸をしておこう、そう思って顔を上げると応接室にいるほとんどの人がギャラリーになっていた。これはきっと、ヒーローが見たくて見たくて仕方がないのだろう。写真は言ってくれればポーズを取ってあげようじゃないか。
 気を取り直して次に進んで左側、次に右側。
 ――思い出せ、思い出せ、次は確か左側。
 その次が、右側。更にその次は左側、その次が右――いや、ここは真ん中だ。危ない危ない。今のは気が付かなければ完全に間違えるところだった。確かここでターン――じゃなくて右側だ。よし、あと一人。

「タノシソウ、やるやんか」
「志津バア、遅くなってごめんね」
「ええよ、それよりもほれ、ちゃっちゃと選んでくれへんか?」
「もちろん。最後のは忘れたくても忘れられそうにないから自信、いや確信があるよ」
「せやろ? ほな、よろしく」
「はいよ。真ん中で最後だ」

 真ん中のカードを表向きにする。分かってはいるけど運力のカードだった。やれやれ、自分と朋美さんを含めて二十四人。全員運力のカードを選択することが出来た。まぁ、決まっていたのだから別に驚くようなことじゃない。

「やれやれ。妖怪はここらで自主リタイアでもするかな」
「え? 志津バアリタイアするの?」
「そろそろ年寄りには向かないやろーし、ここらが引き際やで」
「でもさ、リスクなしって本部の人言ってたけど、それが本当にリスクなしかは分からないよ?」
「あー、それは大丈夫やろ。アタシを殺そう思っても殺せへんしな」
「流石は妖怪だね。ってそういう冗談じゃなくてさ」
「心配いらん。なんせアタシは妖怪ってだけじゃなく、死ねない理由もあるしな」
「死ねない理由?」
「孫が可愛いねん」
「あー、そういうことね。じゃぁ、大丈夫か」
「そう言うことやな」
「え、でもそれってさ……」
「皆まで言うなや、タノシソウ。アタシはとっても楽しいんやけどな、フフフ」
「……いや、これはマズくない?」
「ほな、頑張って」

 再び照明が落とされて、前方の壁にプロジェクターの映像が映し出された。

「参加者の皆さんお疲れ様です。たった今、運力のゲームが終了致しました」



≪/27へ
/29へ≫

COMMENT


FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。