POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /25 -


ハコニワノベル

 志津バアの接吻から逃れるように総務課を出て階段を降りる。エレベーターで降りようかと思っていたけれど、到着に時間がかかりそうな雰囲気だったので階段を利用することにした。降りている最中に志津バアのダンスを思い出しかけたので強めに頭を振ると、足を踏み外しかけて驚いた。なんという危険なダンスだったのだろうか。妖怪め。

「真樹、大丈夫?」
「……うん、もう大丈夫」
「早めに勝ち抜けられたのは運が良かったなー」
「そう、だね……。でも、外に出られないってことは……」
「そうだな。多分、まだ何かあるんだろうな」
「私、耐えられないかも……」
「大丈夫、真樹には私が付いてるじゃない」
「ありがとう、朋美」
「あとは智子なんだよな……」
「智子、かなり落ち込んでたからね」
「秋山先輩が一緒にいてくれてるから大丈夫だとは思うけど、あれはちょっと心配だなー」
「これが終わったらちゃんと励ましてあげないとね」
「そうしよう」

 六階と五階を結ぶ階段に二人組が座り込んで話をしている。どうやらあの騒がしい三人組のうちの二人のようだ。確か真樹さんと、朋美さんだったかな。しかしこれは、あの日のランチ代を請求するいい機会かもしれない。驚かさないように少し離れた場所から「これはこれは、どうもどうも」と声を出すと、驚いた二人が一緒のタイミングで振り返った。

「爽太君か、驚かさないでよ」
「脅すつもりはまったくなかったんですけどね」
「あんたも勝ち抜けできたのかー。ひとまず良かったねー」
「ギリギリでしたけどね。色んな意味で」
「私たちが聞くのも違う気がするけど……、こんなところで何をしてたの?」
「ちょっと妖怪に会いにきてたんですよ」
「妖怪?」
「それってカッパとか、ゲゲゲ的なやつの話かー?」
「いやぁ、もっとたちが悪い奴でしてね、今回は下手をしたら生気を全部吸付くされるところでしたよ」
「冗談、だよね?」
「何がですか?」
「いや、その話がだよー」
「この僕が冗談を言うように見えますか?」
「うーん、正直な話で悪いけど、あんたは腹の中がよく見えないタイプだからなー。いまいち何を考えてるのか見えてこない」
「私もそう思ってた……。あ! ごめんなさい。こんなこと言うつもりじゃなくって……」
「別に何を言われても気にならないので構いませんよ。で、お二人はここで何を?」
「私たちはそこそこ早く勝ち抜け出来たんだけど、智子がなかなか勝ち抜けられなくて……。一応、秋山先輩と一緒に勝ち抜けしてきたんだけど、かなり疲弊しちゃっててね。今、運営部のフロアで休んでるんだけど人が沢山いても休めないから、朋美と二人でちょっと話てたの」
「下のほうは人が沢山いてうるさいから、徐々に登ってきてこんな場所になったんだよー」
「あぁ、確かに下のほうはうるさかったですね」

 下のほうからは耳を澄ませばガヤガヤと大勢の声や音が聞こえてくる。「ちょっと失礼します」とだけ言って朋美さんの隣に腰掛けた。

「爽太君はまだ続きがあると思う? このゲームについてなんだけど」
「そうですね、あれで終りと言われてないですしね。あと外に出られなくなってるから、まだ何かありそうだなとは思いますよ」

 崇高で冷静な判断を醸し出しつつ、自分の考えを回答してみせた。これはひょっとするとこの二人が僕に感心して、心酔して、しまいには惚れてくるかもしれないな。おいおい、それはちょっと困っちゃうぜ。僕にはれっきとした――と言っても別に公にはしていないけれど、婚約者がいるんだからさ。ふふふ。
 まぁ、さっき仕入れた志津バアの考えをそのまま言ったに過ぎないのだけれど。

「そうだろうなー。これちゃんと無事に帰れるのかねー」
「私、すごく不安だよ」
「あまり不安に感じないほうがいいと思いますよ。病は気からって言いますし」
「微妙にブレてるなー」
「励ましてくれてありがとう、爽太君」
「礼には及びませんよ」

 その後もこれからどうすべきか、仮に次のゲームがあったとしたら協力しようといった内容をしばらく話していた。途中で「ところで、ミッチー先輩とはどうなのよー」と朋美さんから聞かれたけれど、一体全体何のことかさっぱり分からなかった。適当にはぐらかしてみたけれど「恥ずかしがっちゃって」とか言われた。やれやれ、何のことを言われているかは分からないけれど、僕には恥ずかしい部分など微塵もないと言うことが分かっていないらしい。いつかそのことをしっかり教えてあげなければならないらしい。
 僕はそろそろ二階の自席に向かうことにして立ち上がった。軽く「それじゃ、また」とだけ言い残して階段を降りていく。しばらく降りると「聞き忘れてたけど、小谷先輩は……」と真樹さんに聞かれた。確かに聞きづらいし、もしかしたら知りたくない結果を聞くことになるのだから、真樹さんは神妙な顔をしていた。努めて明るく「ちゃんと勝ち抜けしてますよ」と答えると、ほっとした表情に変わった。それから軽くてを振って二人と別れた。
 朋美さんはそうでもない様子だったけれど、真樹さんはかなり疲弊している様子が伺えた。智子さんは真樹さんよりも更に疲弊しているということは、かなり重症なのだろう。ちょうど四階に差し掛かったのでフロアの方を伺いながら階段を降りていく。さっきこの中で智子さんと会ったときは、かなり錯乱していたっけ。秋山さんが体育会系的な励ましをしてたんだよな。あの左フックは鮮烈だった。きっとあれが秋山さんのフィニッシュブローなんだろう。胸ぐらを掴まれた状態であれを出されたら避ける術がない。ほんの少し右頬を震わせながら階段を降りていく。
 人影のない階段に僕の足音が響く。その足音を響かせながら三階へ降りる最中に、また誰かの会話が聞こえてきた。その声が切迫した雰囲気を出していたので、僕は無意識に身体を隠すように身構えた。やれやれ、僕には隠れるような理由は一切ないというのに何をしているんだろうか。

「どうして? やっぱり何か隠してるんでしょ!」
「そんなの、変だよ。おかしいよ」
「……ワタル、どうして隠し事してるのよ!」
「私、どんなことをしたって勝ち残るから。例えワタルを……殺すことになっても!」
「それじゃぁ……」

 どうやら女性らしい。そして電話をしているようだ。どうにも今朝聞かされたカップルの痴話喧嘩の主らしい。やれやれ、そう言うのは他人に聞こえない場所でやってもらいたいものだ。内容が穏やかじゃないのだから余計にそう思う。痴話喧嘩の言い争いで強烈な言葉を言ってしまうことはあるのだけれど、大抵は仲直りしたい気持ちの裏返しなのだろう。僕もよく静香から「死にたいんか? ええで、一思いにやったるわ」とか言われてるけど、それだって愛情の裏返しということは第三者が聞いたって明白だと思う。首筋に矢が突き刺さってたりするほど明白だ。
 電話の主を伺うように下を覗き込むと、ちょうど立ち去る女性の後ろ姿だけが見えたけれど、それが誰なのかまでは分からなかった。追いかけるような無粋な真似は、紳士中の紳士であるところの僕がするはずもなく、ちょっとだけ女性が立ち去った方を伺うだけに押さえて、僕は二階へと降りた。



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COMMENT

●scaさん

静香は待ってるかもしれないですねー。

一応三部作を書き上げるつもりでいるので
今回はその第一部なので1/3なんですよ。

静香の活躍はあるかもしれないし
どうなるかは書いてみないと分かりませんw

静香さん・・・待ってるんですよ♪密かに(^^)v
1/3か・・・超大作ですねー!!!
頑張ってください。
私に静香さんの大活躍を読ませて欲しいです!!!
あれ?
このコメント・・・まずいですかね?
希望です( ̄∀ ̄;)
  • 2010.01.25[月]
  • sca

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