POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /24 -


ハコニワノベル

 紙コップを潰してゴミ箱に捨ててから「ちょっとトイレに行ってきます」とだけミッチー先輩に言って移動する。
 階段は相変わらず封鎖されているし、試しに乗ってみたエレベーターは一階のボタンだけが反応しなかった。非常階段に通じる扉も調べてみようと思ったけれど、階段と同じように廊下が途中で封鎖されていたので調べるまでもなかった。
 ふと思い立ってエレベーターで六階に向かう。あの全戦全勝した妖怪はきっと六階にいるだろう。あれだけ早く勝ち抜けていたのだから、僕たちが見知った情報なんかより、もっと有益な何かを知っているんじゃないだろうか。そんなことを思い立ったからだ。
 六階に到着してから廊下側の扉へ向かう。リストラどころか本当に首を切られたりしているのに、相変わらず「STAFF ONLY」と扉には書かれていた。そのままノックもせずに中に入る。パーテーションの迷路を進んだその先で、腕を組んで座っている妖怪――、志津バアを発見した。

「何勝手に入って来てんねん、タノシソウ」
「あ、ノックするの忘れてた」
「ちゃんとノックしいや? あと、失礼しますぐらい言わんかい」
「じゃ、失礼しまーす」
「……で、何しに来たんや? アタシに会いたくなったんか? そら仕方ないわな」
「いや、違うよ。あのさ、社ビルから外に出られなくなってるでしょ? それって志津バアが勝ち抜けたときから外に出られなくなってたのかなぁと思ってさ」
「なんや、そんなこと聞きに来たんか」
「なんで残念がってるの? 会いに来て欲しかった?」
「別に……」
「会いたかったよ、志津バア!」
「抱きつくのやめーや、もー、しゃーないなぁタノシソウは。んーよしよし」

 まるで飼い犬を撫で回すように頭を撫でられながら「それで、志津バアが勝ち抜けたときから外には出られなくなってたの?」と聞いた。「どうやろうなぁ」と、しばらく僕を撫で回してから志津バアは答えた。

「アタシ勝ち抜けたあとすぐに、ここに来たから知らんのよ。正直なところ」
「そっか……」
「でも多分、参加者があのフロアに入ってゲームが開始された時点で、出入口は封鎖されてたんとちゃうか。アタシの後で勝ち抜けした奴らから順番に騒ぎ始めてたし。静かな社内で騒ぐからうるさくてかなわんわ」
「そうなんだ。うーん、本部の人たちはさ、なんのためにこんなことしてるんだろうね」
「業績が悪かった傘下企業の人員削減やろ。それこそ文字通りの人員削減」
「だからって人殺しはよくないと思うんだけどね」
「人は遅かれ早かれいずれ死ぬ」
「僕と志津バアの二人なら、間違いなく志津バアの方が早く死んじゃうだろうけどね」
「それはどうか分からへんで? こう見えてもアタシはな……」
「妖怪」
「そう、溶解する妖怪。その寿命は一世紀、まだまだ青春真っ盛り! そんなアタシになんかようかい? ……って、何言わせとんねん」
「え、違うの?」
「まぁ、青春真っ盛りなのは間違いないけどな」
「そんな歳でもないくせに?」
「そんなに歳でもないからな」
「孫がいるのに?」
「孫は可愛いもんやでぇ」
「確かにね」

 志津バアは僕を撫で回すのをやめてポットのお湯を急須に入れて「タノシソウも飲むか?」と聞いてきたので「いただきます」と答えた。しばらくして、志津バアが湯のみ二つを出して緑茶を入れてくれた。

「落ち着きますな」
「せやなぁ、落ち着くわぁ。アタシが入れたお茶がうまいからやろな」
「これ来客用のお茶じゃないの?」
「一番高いやつやから、客になんかもったいなくて出すわけないやろ。アタシ専用に決まってるやん」
「お客さんを大切にしようぜ」
「ま、もう客が来ることもないやろ。この会社は実質潰れてしまったのと同じやし」
「えっ、そうなの?」
「すべての決定権は本部が握ってる状態やしなぁ。それにこのゲームで生き残ったとしても、KGCが存続する保証はされとらんしなぁ」
「やれやれ、転職でもしますか」
「あぁ、それも多分無理やと思うで? 帝園グループ傘下の企業で働いてたってだけで、帝園グループと繋がりのある企業からは採用してもらわれへんねん。どこの企業も帝園グループとは良好な関係を築いておきたいらしいからな」
「じゃ、帝園グループと繋がりのないとこに行けばいいんじゃないの?」
「アホか。帝園グループがどんだけ巨大が分かってないやろ。国内で帝園グループと繋がりのない企業なんてほぼ皆無やわ。国外にしたって日本と何かしら繋がってるような企業なら、どこかしらに帝園グループが絡んでるんやで」
「へぇ、帝園グループってすごいんだねぇ」
「仮にも帝園グループ傘下の企業で働いてるやつの言葉じゃないな、それ」

 志津バアが立ち上がってごそごそと戸棚の中から煎餅を出して来た。「ん」と促されたので一枚を手に取ってかじると微妙に湿気っていた。僕に差し出されたのは袋を洗濯バサミで閉じていた煎餅で、志津バアが小気味よい音を立ててかじっている煎餅は開けたてのものらしい。やれやれ、歯のことを考えれば逆の方がいいだろうに。

「なんか言ったか?」
「言ってないよ。思っただけで」
「ほうか」
「あぁ、そう言えば。じゅじゅさんがさ、ゲームはまだ終わってないって言ってたよ」
「そりゃそうやろ」
「なんでそう思うの」
「あのゲーム、タノシソウも勝ち抜けたんやろ?」
「そりゃ、こうして生きてるからね」
「勝ち抜けやで?」
「うん」
「仮にあのゲームだけで終了なら、わざわざ”勝ち抜け”とは言わんやろ」
「つまり?」
「まだ続きがあるから勝ち抜けなんやってこと。あのゲームだけで終わりなら、ゲーム開始前の説明で言ってたと思うで。だからこそ、誰も出れないようにしてるんやろうしな」
「そうなのか、それは困ったな」
「タノシソウが困るとは珍しいな」
「無事に帰れたとしても、無事で済まない複雑な事情があったりするもんでね……」
「ふーん、それは難儀やな」
「とりあえず、無事に帰れるように努力はしてみるかな」
「……」
「志津バアどうしたの、急に黙り込んじゃってさ。もしかしてお腹でも壊した?」

 言った瞬間に後頭部を叩かれた。これが本場のツッコミか。やたらとスナップが効いていて、痛みは少ないのに、音だけはパシンと響いた。それでも人類の未来を左右する脳細胞が破壊されたことは否めない。やれやれ、このぶんだと人類もそう長くはないだろう。
 志津バアは黙ったまま立ち上がると「タノシソウはいらんもんまで背負うからなぁ……」と独り言をつぶやいて、しばらくそのまま何かを考えて「しゃーない」と僕の方を見てきた。

「なに?」
「今からアタシがとっても、とーっても素敵な応援歌を歌ったるから、死ぬ気で覚えるんやで?」
「え、なに? 歌?」
「そうや、中宇宙ウサウサの歌や」
「ち、中宇宙ウサウサ?」
「いくでぇ……」



 中佐さ、ウサウサ、中宇宙~♪
 チューチューしたいよウサウサ~♪
 さ、ウサウサ、チューしよ~ウッ♪
 チュウ♪



 振り付けまであった。
 短い歌の中で激しく踊り終えて、最後のチュウ♪で接吻を迫ってきた妖怪の頭を押さえつける。

「ええやないか、減るもんじゃなし」
「いや、志津バアと接吻したら、生気吸われて命が減るから」



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COMMENT

●サイコさん

私も自分で自分の頭の中は分かりませんw
でも、そんなに複雑ではないですよ。
描きたいことを一本通しておいて
あとは肉付けしているだけですからね。

しのめんさんの頭の中が分からない(笑)
なんでこんなに複雑な話が書けるんだか・・・。
尊敬しますわー。
んで、私は生きてるのかしら。

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