POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /21 -


ハコニワノベル

「よし、爽太。ちょっと手伝え」

 それだけ言われてからやっとヘッドロックが外された。やれやれ、と思っているとすぐに腕を掴まれて引っ張られた。

「拉致ですか」
「拉致だ」
「優しく、して下さいね」
「何の話をしてるんだ。ちょっと手伝え」
「拉致をですか?」
「まぁ、拉致みたいなもんだ」
「優しく、するからね」
「相変わらずお前はメンドくせぇな」
「嫌いじゃないでしょ?」
「ま、嫌いじゃないけどな。でも今は時間が無いからお前に構ってる時間が勿体無い」
「時間が無いって……、そう言えば今何時ですか?」
「自分で確認しろよ、自分で」
「いやぁ、とある深い事情があってですね。時計というものを所持していないんですよ」
「携帯でもなんでも確認出来るだろ?」
「ポケットから取り出すのが面倒だなぁと……」
「……はぁ」
「どうしたんですか、ため息なんてついちゃって。もしかして、恋?」
「十四時十分だよ」

 軽いげんこつをしながらもじゅじゅさんは時間を教えてくれた。げんこつは不必要だったと思うけれど、今それを訴えても聞いてもらえないだろう。むしろ、これ以上ユーモラスな受け答えは、追加で何発のげんこつをもらうのか見当がつかないので辞めておこう。流石にこれ以上の脳細胞が失われることだけは防がなければ。

「で、何を手伝えばいいんですか?」
「急に素直になるなよ気持ち悪い」
「やれやれ、あまり時間はないんですよ、じゅじゅさん」
「お前が言うな。お前が」
「もう一度聞いちゃいますけど、何を手伝えば?」
「……おおっぴらに説明は出来ないんだがなぁ。とりあえず、あそこに何が見える?」

 そう言いながらじゅじゅさんがフロアの左奥を指差すので、合わせるように視線を移す。
 そこにはかなりの数の参加者たちが固まっていた。よくよく辺りを見回してみると、左奥以外はあまり参加者がいなくなっている。

「なにやら固まってますね」
「固めるのも大変だったんだよ」
「じゅじゅさん、ゲーム中に何をしてるのかと思えば人集めですか」
「ただ集めただけじゃない。私が嫌いな奴には声すらかけてない」
「選り好みは感心しませんね。僕にも声はかかってないですし」
「まぁ、話は最後まで聞いておこうぜ、爽太」

 そこからまた肩を組むと言うよりヘッドロックの状態で、じゅじゅさんが妙に小さな声で説明を続けた。

「いいか、あそこの集団をよく見ると三つに別れてるだろ。あの三グループの左から”知力を多く持っているグループ”、”体力を多く持っているグループ”、”運力を多く持っているグループ”になってる。でだ、お前に手伝って欲しいのはカード貰いだ」
「カード貰い?」
「あまり大きい声でしゃべるんじゃねーよ。対戦者同士の打ち合わせは禁止されてるんだからな。最初は”知力を多く持っているグループ”の参加者に勝負を挑め。勝負前に”直径九メートルのタイヤ”とつぶやいてから運力のカードを出すんだ。そうすれば相手は知力を出してくる。次は”体力を多く持っているグループ” の参加者に同じく”直径九メートルのタイヤ”とつぶやいて、今度は知力のカードを出せ。相手は体力を出してくる。その次は”運力を多く持っているグループ”で同じように体力を出す」
「つまり、予め出すカードが決まってるわけですか」
「そうだ。それを理解してもらって集まって貰うのにかなり時間がかかったよ」
「あ、一つ質問があるんですけど、集まっている人の中で例えば同じカードしか持ってない人とかはどうなるんですか?」
「集めた方が早く揃うようになった奴から、カード貰いになってもらってる」
「なるほど」
「残り四十分……だから、あと三十分で出来る限りあそこに集まってる参加者を勝ち抜けさせるぞ。私は運力側から始めるから、さっき言った通りに、お前は知力側から作業開始しろ。頼んだぞ」
「了解」

 じゅじゅさんが集めた参加者の集団を行ったり来たりしながら、カードを受け取っていく。ある程度のカードを増やしたらカード貰いをしている人に必要なだけ渡していく。カードが欲しい人は”直径九メートルのタイヤ”とつぶやき、勝負するテーブルの位置によって渡すカードを決定する。
 それにしても大混乱の中、これだけの人数相手に助かる方法を模索して実施しているとは、流石は企画部一課の課長だ。この企画力こそが、超人的な評判の根本だと思う。

「爽太、調子はどうだ?」
「随分改修して、随分と渡しましたよ」
「お、渡すとこまでやってくれるなんて、お前にしては冴えてるな」
「残り時間が僅かですからね」
「一応、自分のカードにも気を付けとけよ? セットにならなかったらお前もアウトだからな」
「え、あ。はい、大丈夫ですよ……うん、大丈夫です」
「お前、今確認したろ……。頼むぞ? 手伝わせたせいでお前が死んだら、呪われそうで嫌だからな」
「毎日、冷蔵庫前に立ってあげますよ」
「枕元じゃないのか」
「お酒を飲ませてあげなくするんですよ」
「よし、お前絶対に死ぬな」

 その後もカードを受け取り、カードを渡し、次第に集まった参加者から勝ち抜けしていき集団の人数も残り僅かになってきた。

「あれ? ルー姉さんじゃないですか」
「爽太、あんた生きてたんだ。てっきり私との四連敗でリタイアになったかと思ってたよ」
「残念ながら生きてますよ。それに言ったじゃないですか。僕はあれぐらい追い込まれてからじゃないと、燃えてこないんですよ」
「そうかそうか。とにかく良かった、良かった」
「さてと……、”直径九メートルのタイヤ”」
「お? なるほど、今はじゅじゅの手先になってるってわけか」
「流石に五連敗は死守させてもらいますね」
「あんたのことだから分からないぞ?」
「それでは……いざ、勝負!」
「かかってきなさい」

 田中課長から運力のカードを受け取った。これは多分、僕が最初に渡した四枚のうちの一枚だろう。これで僕が今所持しているカードは丁度十二枚。それぞれが四枚ずつで、クリア条件を満たしている。「すいませんけど、今何時ですか?」と田中課長に聞いて見ると「十四時五十分」ということらしい。
 じゅじゅさんが集めた参加者の残りは田中課長を入れて三人まで減っている。田中課長の所持枚数を確認すると二、三、――五枚。そうこうしているうちに田中課長以外の二人が目の前で勝ち抜けてしまった。

「爽太、あんた今揃ってるのか?」
「揃ってますね」
「それならもう、ここは良いから勝ち抜けしてしまいなさい」
「いや、でもそう言うわけにもいかないでしょう」

 そこへじゅじゅさんが戻ってくる。ルー姉さんの現状を把握して頭を抱えた。

「私も今丁度揃ってるんだよ」
「二人とも勝ち抜けしてしまっていいよ」
「いや良くないですよ」
「しかし、どうするかな……残り五分か」
「私は大丈夫だから、早く勝ち抜けしといてくれる? じゃないとそろそろ時間切れになる」

 めぼしい解決策も思い浮かばないまま、ゲーム終了の時間が迫ってくる。落ち着いたように見える田中課長も、頭を抱え込んでいるじゅじゅさんもかなり焦っているのがよく分かる。人類の未来を左右する僕の脳細胞は、さっきじゅじゅさんに破壊され過ぎたのか妙案が思いつかない。やれやれ、ヘッドロックをし過ぎるからだ。

「チッ。どうなってやがる、ここらにいる参加者は俺との勝負をしないくせにどんどん勝ち抜けやがって。あいつら、イカサマに決まってる」

 本日三度目の聞きたくない声が後ろから聞こえた。
 それと同時に、じゅじゅさんの顔が恐ろしく笑顔になったのが分かった。



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COMMENT

●じゅじゅさん

近重 純(じゅじゅ)大活躍ですよ!
ミッチー先輩はどうしたんでしょうかねぇ。
ほんと……(必死に考えながら)

恐ろしい笑顔はいいけど、爽太とじゅじゅさん、ミッチー先輩は?!ミッチー先輩はどうしたの?!
ミーッチィィィィィ!!!

ψ(`∇´)ψ ウキョキョキョキョ

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