POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /20 -


ハコニワノベル

「ば、馬鹿野郎! 何言い出してるんだよ! ほんとに馬鹿なのか?」
「大丈夫ですよ、じゅじゅさん。僕は運が良いですから」
「そういう問題じゃねぇっ!」
「前言撤回は無しだぞ? フハハ! お前は本当に頭が悪いらしいな」
「こんな勝負やるわけねぇだろ! 口が滑っただけだよな、爽太?」
「滑らすわけないじゃないですか。僕みたいな男の中の男はですね、一度引き受けた勝負は降りないってものですよ」
「フハハ! せっかく助けて貰った命を投げ捨てるとは、頭が良い悪いの問題じゃねぇな。こいつは本当におかしくなってやがるらしい。フハハ! 強がって勝負に乗ったことを後悔するんだな。憎たらしいお前が死んでいく様を、俺がしっかり見届けてやるから安心して死ねよ? フハハ! フハハ!」
「爽太! 今からでもいいから降りろ!」
「だから大丈夫ですって。僕は運が良いですから。ね? 運が、良いんですよ、運が」

 テーブルの向こう側で山尾部長が手持ちのカードから何を出すか吟味している。チラチラとこちらを伺いながら「フハハ!」と気色悪く笑っている。やれやれ、どのカードを出すか迷うなんて情けない。こういう勝負はサッと出すものを決めてしまうのが、男らしさというものだろう。もちろん、僕には選ぶようなカードはないのだけれど。

「運が良い……ね。フハハ! お前、自分で手の内を晒してることに気が付かないとはな。助けて貰った命をすぐに捨ててしまう愚か者だったってことだ。近重、そいつに助ける価値なんかねぇぞ。ま、そこでそいつが死んでいく様を見届けてやれよな。そいつは今からお前のせいで死ぬようなもんなんだからなぁ」
「なんで私のせいになるんだよ、このイカレ野郎」
「フハハ! お前が、俺に、悔しがってるからだよ。お前、企画は出来るけど男心が分かってないんだよなぁ。だから彼氏の一人も出来ねえんじゃないか? フハハ! フハハ!」
「関係ない話を喋ってないで、この勝負を辞めろ」
「はぁ? 別に俺はさっき辞めてやったじゃねぇか。勝負を挑んだのはそいつだろ?」
「はいはい。山尾部長、喋ってないで出すカード決めちゃって下さいよ」
「爽太!」
「じゅじゅさん、もう勝負始まってますし、もしもの場合を考えると離れてた方がいいですよ? ほら、服が汚れちゃうでしょうし」
「縁起の悪いことを言うなよ、それじゃぁまるでお前が……」
「フハハ! そいつを心配するだけ無駄だなぁ。そいつもおかしくなってるんだよ。このゲームにはそういう魔力みたいなものがあるよな。……よし、決めたぞ。しかしだな、一回目ぐらいは引き分けにしておくか? その方が絶望するだろう?」
「絶望? 何に絶望するんですか?」
「ふん、ここまで来て強がれる度胸だけは褒めてやるが、お前の散々な侮辱行為の罰を受けるんだな。一回目で終りにしてやるよ。お前、運が良いんだろぉ?」
「良いに決まってるじゃないですか」
「爽太、本当にどうするんだ。まずいだろ!」
「ま、見てて下さいよ」

 無言でテーブルの横に立つ本部社員に促され、お互いに出したカードに手を添える。山尾部長は相変わらずの汚い笑顔でジロジロと嬉しそうにこちらを見ている。

「運が、良い。つまり、運が欲しいってことはだ、お前の出すカードは体力! でも甘いな、俺はそれを読んで知力を出す」
「……」
「……とでも思ったか? フハハハハハ!」
「……」
「運が、良い。そんな言葉で心理戦を挑んだつもりかもしれんが、この極限状態でお前が口を滑らせた言葉にはしっかり真意が現れてるなぁ。つまり運が欲しいか、運力しか持っていないということを相手に晒してしまってるんだよ、お前。要するにだ、俺がここで出すべきは体力なんだよっ!」

 言いながら山尾部長が自分のカードをオープンさせる。そこには確かに体力のカードが出されている。

「お前が運を欲しがって体力のカードを出したとしても引き分け。お前が運力のカードしか持っていないなら俺の勝ちということだ。フハハ! フハハ! どうした? ん? そのカードを早くめくって見せてみろ。俺がそんな子供だましの心理戦に引っかかるとでも思ってたのか? ん? 早くしろ、そして目の前で首を切られてしまえよ」
「……」
「ここに来て怖くなったのか? 安心しろ。どんなに怖くなってもお前の出した運力のカードは変わってくれないからな。フハハ! フハハ!」
「……やれやれ、心理戦とか意味の分からないことを言ってないで、ちゃんと目の前の現実を見つめて下さいね」

 自分で出したカードをオープンにする。
 そこに出されているのは知力のカード。

「はっ? ちょっと待て、おかしいぞ。お前の持ってるカードは運力だけだっただろうが! イカサマだ、おい本部のお前! これはイカサマだ!」
「人聞きの悪いことを言う人ですね。ちゃんと現実は受け止めましょうよ」

 騒ぎ散らしている山尾部長そっちのけで、山尾部長が出した体力のカードを受け取った。

「待て待て、明らかにおかしいじゃねぇか! お前、一枚しか持ってないって言ってたじゃねぇかよ! 何で今、俺のカードを受け取った状態で三枚持ってるんだ! ? 完全なイカサマじゃねぇか! ほら、本部のお前見たか? イカサマは問答無用でリタイアだろぉっ?」
「だから、イカサマじゃないですよ」
「嘘を言うな! 俺はな、ちゃんと見てたんだよ! お前の持ってるカードが運力の一枚だけなのを確認した。だからこそ、お前に勝負を挑んだんだ。一回目に引き分けて、二回目でトドメを刺すためにな。何度も確認したんだから間違いないはずだ、お前の所持カードは運力一枚だけだったぞ! だからこれは確実にイカサマだっ! なぁ、そうだろ? 本部のお前っ!」
「それでもですね、こうして首を切られていないわけですから、イカサマじゃないってことは本部が認めているってことですよ。だから、ちゃんと現実を受け入れましょうね、山尾部長」
「こんな、イカサマ勝負やってられるか! 俺は他の奴と勝負しに行くぞ」
「……待って下さいよ、勝負は二回するんじゃないんですか?」
「そんなもん知るかっ! イカサマしてくる奴とまともに勝負なんてする訳ないだろうがっ!」
「それじゃぁ、勝負を辞退させて下さいって土下座は?」
「するかっ! ふん」

 メタボな身体を揺らしながら、あからさまに苛立って山尾部長は参加者の群れに消えて行った。それを見届けてから、隣にいたじゅじゅさんが肩を組んできた。いや、これは正確に言い表すならヘッドロックだろう。メキメキという音が自分の頭蓋骨から響いてくる。――ちょっとこれは力を入れ過ぎじゃないだろうか。このままでは、人類の未来を左右する僕の脳細胞を損失させてしまいかねない。

「ギリギリだったじゃねーかよ! 何が運が良いだ、究極に悪いじゃねーかよ。あん? どうなんだ、なんとか言えよ爽太」
「でも、こうして生きてるわけじゃないですか。やっぱり運は良いと思いますよ。読んで字のごとく悪運の方が。そ、それよりですね、その、ヘッドロック辞めてもらえませんかね? 普通に痛いんですけど」
「……はぁ、やれやれ。しかし今のは本当に焦ったぞ」
「いやぁ、すごいじゃないですか。山尾部長が戻ってくる前に、コソコソ勝負して僕にカードくれるなんて」
「コソコソは余計だろ。お前が運が良いってヒントを言わなかったら、私の手でお前をリタイアさせるところだったんだぞ。はっきり言って賭けだったしな」
「結果オーライですよ、結果オーライ。ほら、なんて言うんですっけこういうの……待てば海路の日和有り、ですっけ?」
「お前の場合は棚から牡丹餅だろうが」
「どっちでもいいですけどね。一応、お礼言っておきますよ、じゅじゅさん。ありがとうございました」
「気にするな。お前にはクリスマスイベント立案っていう借りがあったからな。チャラってことにしといてやるよ」
「仕方ないですね。そういうことにしておいてあげましょうかね」
「……さてと、お前のおかげでいい時間稼ぎが出来たし、そろそろ準備も整うはずだな」
「準備? そもそも、じゅじゅさんは何をしてたんですか? そんなに疲れてる所を見たの初めてですよ」
「あぁ、このゲームの被害者を最小限にしようと思ってイロイロとだよ」
「ヒーローみたいじゃないですか、そう言うのは僕に任せてもらいたいもんですけどね」
「はっ、お前じゃ荷が重いんだよ。ところでお前、カード揃っただろ?」
「揃いましたね。まぁ、当然のことなんですけどね」
「調子いいこと言ってんじゃねーよ、いったい誰のおかげだと思ってるんだか」
「もちろん、僕自身の勇気ある行動の……」

 瞬間、ヘッドロックが強力になった。かなりの数の脳細胞が破裂したんじゃないかと思う。
 ――人類の未来よ、すまない。



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COMMENT

●サイコさん

ドキドキして頂けたら幸いです。
しかし、まだ物語としては半分ぐらいな気持ちなので
ごゆるりとお付き合い頂ければなと思います。

もぉお~、ドッキドキしたじゃないですかぁ。
爽太の首が飛ぶんじゃないかって!
でも、さすがのトリックですね。
あー、続きが気になるなる。

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