POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /17 -


ハコニワノベル

 勝利することだけを求めて焦ってはいけない。負けたからと言ってすぐに連戦してしまえば、簡単に足元をすくわれてしまう。負けたとしても、どうしてその結果に至ったのかを思い返し反省すべき点が無かったか、もっと違うアプローチは無かったのかを考える。次に同じ状況になった時に、同じ過ちをしないようにするためだ。それは成長と言えることだろう。
 さて、開始直後にカードを四枚失った僕は、あれから勝負を焦らずにフロア内をうろうろしながら、確実に勝てる相手を探している。しかし、誰も持っているカードを見せてくれないので、簡単に見つけられそうにない。やれやれ、こそこそとカードを隠すだなんて、誰も彼も武士道精神に欠けている。
 うろうろとフロアの中央付近を歩いていると「すげぇ、また勝ってる……」という声が聞こえたので、その方向のテーブルへ近付く。「アタシに勝てるわけないやんか。ま、残念やったな」そこには、おびただしい枚数のカードを所持している志津バアがいた。

「ん? なんやタノシソウやんか。随分と貧相な枚数を持ち歩いてんねんな」
「志津バアこそ何枚持ってんの? 少し貰っておこうか?」
「辞めとき、辞めとき。目下二十一連勝中のアタシにかなう奴おらんわ」
「それだけカードあればセット作れるんじゃないの?」
「作れるな。だけどな、セットが作れるからといってすぐにセットを本部の連中に渡す奴はアホやで」
「なんで?」
「……そうか、タノシソウもアホやったなぁ。例えばな、最初の五枚で既にセットが作れるとする。けどそのままセットを提出してしまうと所持枚数が二枚になってしまうやろ? かなり戦略の幅が狭くなるし、二回負けただけでリタイアになってまうやんか」
「それはそうだね」
「そこから考えれば、ワンセット作れている状態でいらない二枚で負ける勝負をするか、複数のセットを作ってから提出した方が安全やろ?」
「あー、うんうん、なるほど。分かった気がする」
「タノシソウ、ほんまに分かったんかぁ?」
「そんなことないよ。つまりワンセットの倍数になるまでカードの提出をせずに、最初の提出で所持カード全てを提出出来るようにしてしまうってことでしょ」
「そ。それが一番リスクが少ないやん。ま、今のタノシソウじゃ意味無い戦略やけどな。さてと、アタシもあと少しカード集めないと勝ち抜け出来ひんから行くわ。タノシソウもその貧相な枚数で頑張るんやな」

 志津バアはひらひらと手を振りながら移動して行く。カードを複数枚持っている参加者を見つけると手当たり次第に対戦しながら。それにしても全戦全勝である。相手よりも先にカードを出しているのに引き分けも負けもなく全勝。流石は妖怪だ。
 僕はこれからどうしたものかと、まるで後ろにいる誰かに相談するように振り向いた。そこにあの白髪の男が立っていた。

「やあ、どうもどうも」
「調子はどうですか、おかしな人」
「絶好調ですよ」
「そうですか。それは何よりです。カードの枚数が少ないようですが大丈夫ですか?」
「大丈夫ですね。僕はこれぐらい追い込まれてからじゃないと真剣になれない性分なので」
「そうですか。足元をすくわれないように気をつけて下さいね」
「ご心配なく」
「まだこんなところで楽しみは失いたくないですから」
「え? 何か言いました?」
「いえいえ別に。こちらの話ですのでお気になさらずに」

 その時だった。
 異様な雰囲気だったフロア内が異質な雰囲気に変わった。
 女性の叫び声、誰かが倒れたような音、そして言いようのない臭い。
 その方向を見るとサッカーボールぐらいの何かが飛んでいる。
 放物線を描いていたそれは、ゆっくりと宙を舞ってから――、



 べしゃり。



 と、音を立てて床に落ちた。
 それは男性の首だった。

 その現場付近の参加者たちが声にならない声をあげた。次第にそこを中心に周りへと騒動は広がって、大した時間もかからないうちにフロア内はパニックに陥った。フロアの外に出ようとする参加者が一気に出入口へとなだれ込んでいくものの、なぜか出入口はロックされていて開かない。益々、参加者たちは冷静さを失っていく。
 突然、プロジェクターが映し出された。

「騒ぐのを辞めなさい」

 その一言でフロア内は固唾を飲むように静まり返った。

「何をそんなに騒ぐ必要があるんですか。先程最初のリタイアが発生しただけです。私は最初に言ったはずです。皆さんの首を賭けたスラッシュ/ゲームだと。皆さんがこのゲームで差し出しているのは、リストラなどのクビではなく、その首ですよ」

 プロジェクターに映し出された美人さんの顔が、気味悪く歪んで笑っている。「そんなの聞いてない」どこかで誰かが叫んだ。

「聞いてないから何でしょうか? このゲームに参加した時点で、皆さんには首を賭けて頂いております。何のリスクもなく願いが叶うわけはありません。嫌なら勝ち抜ければいいんです。単純な話でしょう?」
「こんなのやってられるか!」
「本部の売上に貢献すらできないゴミのくせに、私に意見しないで下さい。死にたくないなら勝てばいい。負けてカードを全て失ったら、遠慮なくその首を貰ってア・ゲ・ル。フフフ」
「おいおい、こんなのおかしいだろ! いい加減に……」

 今、どこかで叫んだ参加者がプロジェクターに映し出されたと思ったら、そのままその参加者の首が飛んだ。
 跳ねるように飛ぶ首、まるで噴水のように飛び散る血、痙攣を起こしながら倒れていく首のない身体。――べしゃり。
 悲鳴、嗚咽が木霊して、フロアは再び混乱状態に陥った。

「文句を言われる方の首は頂きます。ゲームを続行しない方の首も頂きます。何もしない方の首も頂きます。逃げ出そうとする方の首も頂きます。私が気に入らない方の首は、全て頂きます。イタダギマス。それでは、引き続きスラッシュ/ゲームをお楽しみ下さい、ゴミクズども」

 何かが起きている。
 この場合、人が殺されたということではなく、その方法の話だ。
 あの紙咲と名乗った本部の社員がやっているのか? それともテーブル横に待機している他の本部社員がやっているのか。どうやって首をはねているのか分からない。その分からないものに対してパニックを起こしてはいけない。まずは冷静に行動すべきだ。ひとまず騒動が起きる前に見ていた方向へ向き直ると、白髪の男は既にいなくなっていた。
 二人目の犠牲者が殺害された場所へ近づくと生臭い臭いがまとわりついてきた。別々に転がっている首と胴体を確認した。辺り一面が大量の血で溢れかえっている。首と身体の切断面は、まるでカッターナイフで切られたようにまっすぐに切られていた。つまり、鋭利な刃物などで切られたということだろう。その現場近くにいる本部社員たちをそれとなく確認してみたものの、こんな状況になっているのに持ち場を離れずただ立っているだけだった。
 そのまま殺害現場にずっといると気分が悪くなる。壁際へ移動して壁に背をつけてフロア内を見渡すようにした。
 フロア内は相変わらず異質な雰囲気のままだ。静まり返っているわけではなく、あちこちで女性の泣く声が聞こえるし、参加者同士の話し声で騒がしい。恐れている参加者たちは全員落ち着きがない。まるで割れる寸前の風船のように張り詰めている。

「もう無理よ!」

 ここから肉眼で確認できる距離にある出入口付近で女性が叫び、持っていたカードを破り捨てた。
 次の瞬間、女性の首が宙を舞った。それを皮切りにフロア中で犠牲者が出始める。恐怖から逃れられないパニック状態で冷静な判断が出来なくなったのだろう。四人目、五人目、六人目――。逃げる場所もなく逃げ惑う人、人、人。
 やれやれ、焦って行動するとロクでもないことにしかならないことを知らないのだろうか。ほらまた七人目、八人目、九人目、十人目。それでも助かりたくて逃げ惑う参加者たち。既に何人が犠牲になったのか数えられなくなった頃だった。

「おぉ! やっと揃ったでぇ」

 騒然とするフロアに呑気な関西弁が聞こえた。フロア中がその声に注目するように視線が集まる。その視線の先にいたのは、ざっと見て三十枚ほどのカードを持っている妖怪――、じゃなくて志津バアだった。
 志津バアはフロア中の注目の中で本部社員に三十三枚のカードを渡すと、「ほなお先に」とまるで先に仕事から上がるように、本部社員に連れられてフロアから出て行った。



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COMMENT

●じゅじゅさん

こう、頭の中で想像したら音はそんな感じな気がしたんですよ。
「べちゃり」とか「ぐしゃり」とかって音はしない気がして。

誰がどこで、どういうことになるのかは決めていないので
書いてる最中の気分次第というロシアンルーレットですw

べ、べしゃりて・・・(・Д・)
のっけから激しいですねぇ、しのめんさん

死にたくなぁぁいいぃぃぃぃぃぃ

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