POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /13 -


ハコニワノベル

 昨日は誰もが口数少なく、お互いにお互いを牽制しているような雰囲気が常にあって変な一日だった。まだ開始されてもいないゲームにそこまで入れ込むとは、皆プライベートで満足いくことが無いのだろうか。もっと有意義なプライベートを過ごすことをお勧めしたいところだ。
 いつも有効な時間の使い方をしているため遅刻ギリギリで出社する僕が、今朝は集合時間である十時の二時間前である朝八時に到着した。これはゲームが開催されるからでは決してないし、その仕事ではないから楽しもうとしているわけでもない。決してないと断言しておこう。居ても立ってもいられなくなっただけだ。
 流石にまだ誰も来ていない社内は閑散としていて、暖房も入れられていないので二階フロア全体が冷え切っている。歩けば普段は聞こえない自分の足音が響くし、椅子に座れば椅子の軋む音だって聞こえてくる。誰もいないフロアは、まるで僕が支配している世界のような錯覚まである。今なら嫌いな人の机にイタズラだって出来てしまうほどの支配力だろう。祝日に出社するという通常時では理解出来ない行為がそう思わせているに違いない。
 素敵なゲームが始まるまであと二時間もあるので、コーヒーでも飲もうと自席近くのウォーターサーバーへ行こうとした時だった。自分以外の足音が聞こえたような気がして思わず身を隠したものの、誰も現れる気配が無かった。やれやれ、静か過ぎて自分の足音が反響しているだけだろう。まだイタズラを行っていないのだから、僕には隠れる理由がないというのに。
 ――コツン。
 今度は確実に足音が聞こえた。今僕は立ち止まっているし自分の足音の反響ではないことは確かだ。それにどうやらこのフロアではなくフロア外の階段の方から聞こえて来る。耳を澄ませば何度か足音を確認することが出来た。どうやら僕以外にも早くに来た人がいるみたいだ。ここも隠れる必要はないけれど、こっそりその足音の主を伺うことにして階段側へと移動した。

「私、納得出来ない」
「そんなのおかしいよ」
「……ワタル、絶対隠し事してる」
「そんなの嘘よ! 私、絶対勝ち残ってやる。……あ、ううん何でも無いから」

 どうやら女性らしい。そして電話をしているようだ。声の大きさから一階付近だろう。朝からカップルの痴話喧嘩と言ったところだろうか。やれやれ、そう言うのは他人に聞こえない場所でやってもらいたい。まぁ、普段であれば聞こえるようなことは無いのだし、まして電話の主も既に誰かが社内にいて聞いてしまっただなんて思わないだろうけれど。
 電話の主はそのまま階段を上がってくることは無く、電話もすぐに終わったらしい。きっとエレベーターで上の階へ移動したのだろう。今日、出社して来ているということは十中八九でゲームの参加者だろう。そうでないなら、イタズラをしに来るぐらいしか理由が見当たらない。もしくはオフィス荒らしぐらいだ。
 それ以上は耳を済ましていても特に何も聞こえないので、改めて自席近くのウォーターサーバーへ移動した。手持ち無沙汰なので紙コップにコーヒーを入れて、一人で会話をしてみることにした。

「やぁ、爽太君」
「やぁやぁ、爽太君」

 虚しい。しかし暇を弄ぶには丁度いいぐらいだろう。「今日は早いね」などと続けて行くうちに調子が出てきた。

「今日は何やら楽しげなゲームが開催されるらしいじゃないか」
「そうなんだよ。僕は僕の願いを叶えられることが嬉しくて、仕事がある日よりも早くに会社に来てしまったよ」
「それは相当入れ込んでるようだね」
「失敬だな。僕は入れ込んでいるわけではないよ。ただ、居ても立ってもいられなくなっただけさ。居ても立ってもいられなくなったからいつもより早く起きて、いつもより早く家を出て、いつもより早く到着しただけのことさ」

 これはなかなか楽しくなってきた。自分で自分と会話出来るとは、流石は百年に一度の逸材だ。このまま崇高な会話を続けてしまったら、世界不況とやらを瞬く間に解決する妙案すら浮かんできそうな気がする。そうなれば僕の名は瞬く間に世界に広まって、世界を救ったヒーローとして崇められるに違いない。
 もっとこの一人会話を続けるため、まるで後ろにいる誰かに話しかけるように紙コップを持ったまま振り向くと、そこに見知らぬ人が立っていた。
 顔から察するに十代後半のように見えるものの、その雰囲気は若々しく感じない。きっと髪の毛が全て白髪だからだ。顔は男だと思われるが、女性と見えなくも無いほど整っている。まぁ、僕には及ばないけれど。服はブラックのパンツスーツでネクタイまでしっかりしていて、良く見れば瞳の黒目部分が赤色に近い。左耳には真っ黒なピアスまでしている。これは誰がどう見ても間違いなく不審者だ。KGCで見かけたことがないことから部外者だろうし、祝日のこの時間に侵入していることからオフィス荒らしと呼ばれる泥棒かもしれない。ここは下手に刺激しないように話しかけてみることにする。

「おはようございます」
「おはようございます」
「えーと、お早いですね」
「君こそ」
「僕はあれですよ、居ても立ってもいられなくなっただけです」
「そうですか。それにしても君はおかしな趣味を持ってる。自分で自分と会話する人を初めて見ました」
「いやいや、パテシエは目指してないですよ」
「?」
「あー、伝わりませんでした? おかしな趣味、お菓子、えーとつまりスィーツで、お菓子を作る趣味からパテシエに繋がっているというわけなんですけどね」
「君は本当におかしい人みたいですね」
「いえいえ、そうでもないですよ。それに、あなたの方がおかしな人じゃないですか。祝日のこんな朝早くから社内にいるだなんて、普通は考えられないですよ」
「それは君も同じだと考えますが」
「僕は今日のゲーム開催に、居ても立ってもいられなくなっただけですから大丈夫です」
「……なるほど。参加者の方でしたか」
「と言うことはあなたも参加者ですか?」
「いいえ。私はどちらかと言えば主催者側の者です」
「主催者側? つまりうちの関係者ってことですか?」
「厳密に言うと違いますが、今回のゲームに関して言うのであればそうです」
「ややこしいなぁ、けど要するに関係者なんですね。あぁ良かったー」
「?」
「いや、あなたが部外者でオフィス荒らしだったらどうしようかと思ったんですよ」
「私がオフィス荒らし……笑えない冗談ですね」
「だって、気配なく後ろに立ってるし、その風貌もかなり異質じゃないですか。何と言うかこう暗躍する感じで。ちなみにそれ自毛?」
「私は君の方が部外者で、不法侵入したのかと思ってましたよ」
「もし僕が部外者だったらあれでしょ、排除とか言いながら抹殺する感じですよね」
「よくご存知で」
「あら? なかなか冗談いけるじゃないですか」
「何やら不法侵入されている気がしたので、ちょっと確認しに来ただけですよ。そしたら自分で自分と会話している不審人物を発見したんです」
「そんな人、どこにいたんですか? 不審人物を通り越して危険人物ですよ、まったく怖い社内ですね」
「……。それにしても君は、今回のゲームへの参加が楽しみみたいだね」
「それはもちろんですよ。だって自分の願いを叶えてもらえるんですよ? 最高じゃないですか」
「それなりのリスクを払う覚悟があって、尚それを喜べるとは……やはり君はおかしい人だ」
「リスクを払う? ま、まぁ、何のことかは正直分かってないですけど、リスクなんて言うのは常に存在してますからね。あ、そんなことよりも主催者側ってことは内部事情も知ってるんですよね? これちゃんと願いを叶えてもらえるんですよね?」
「ククク。どうやら少しだけ今回のゲーム、楽しみになりそうです」
「質問は無視ですか? まぁ、全力で楽しむべきですよ。こういうイベントは」
「それじゃぁ、全力で楽しんで下さいね、おかしい人。私は準備があるので失礼しますよ」
「あ、ちょっと待って」
「何でしょう?」
「質問に答えましょうよ」
「質問? あぁ、これは自毛ですよ」

 そう言うと見知らぬ男は薄ら笑いを浮かべたまま二階フロアから出て行った。会話から察するにどうやら関係者らしい。その真偽は確認出来ていないけれど、少なくとも何かを盗みに来たわけではなさそうだ。仮に彼がオフィス荒らしだったら、僕の鉄拳が火を吹いてコテンパンにした挙句、警察に突き出して警視庁から感謝状を貰うほどの騒ぎになったことだろう。無駄に血を流すことにならなくて良かった。



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COMMENT

●じゅじゅさん

始まりつつありますよー。

フロアわらしとはあれですよね
こう残業とかをしなくてもいいようにしてくれる
優しい妖精さんみたいなものなんですよね?


●樹さん

展開は物語を書いてる最中に決まって行くので
断言はできませんが、何かしら起こります。(たぶん)

面白くなるように自分で祈りつつ
続きを書いていきまーす!

始まるんですねー。ワクワク。
これは、ばとるろわいやる的なものを期待してていいのでしょうか?
というより。。。
こんなことなら、もっと武器を考えればよかったです(泣)

普通すぎたっ><
  • 2010.01.05[火]

始まった、始まったo(^-^o)(o^-^)o
フロアわらしが出たーo(^-^o)(o^-^)o

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