POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /10 -


ハコニワノベル

 上坂噴水公園の噴水ライトアップによるクリスマスツリーの設営作業は、なぜか立案者だからと言う理由で僕を含む三課のメンバーで行うことになった。通常業務終了後に噴水公園に移動して、照明器具の設置や大噴水のある中央広場の清掃をする。残業を今までしたことのない優秀な僕が、ここ三日間ずっと残業をこなしている。
 三課のメンバーは田中課長にミッチー先輩、妖精さんでもある長谷川さんと入社三年目になる三好と高畑という男が二人。それから今回の新企画を立案した僕の六人だ。三好は毎日スポーツジムに通い、合コンと聞けばどんな時でも参加するという典型的な肉食系。髪の毛も茶髪でチャラチャラしている印象がある。仕事は事なかれ主義で、面倒な仕事は全て僕に回してくるような奴だ。僕はその仕事を長谷川さんに回している。もう一人の高畑は、あまり目立った発言はなくメガネの理系男だ。三好との対比で草食系と言える。この二人は同期で仲が良く、さらに管理部部長の山尾という男に取り入っているのか、いつもランチにはこの三人で行くことが多い。
 この山尾という男、なぜ部長職に就けたのかが分からない。管理部の社員数は七十五人とKGCで一番多く、その管理者には責任力と指導力が求められると言うのに、山尾にはどちらも欠片ほどもない。仕事は基本的に各課長任せ。出社後にどこかへ姿を消し、昼前に戻ってきたかと思えばランチに行き、その後戻ってくるのは夕方になってからだ。どうも男性社員を自分の配下に付けたがるようで、僕が入社してからも散々言い寄ってきたことがある。僕は男には興味が湧かないので、いつも適当にあしらっているうちになぜか嫌がらせを受けるようになり、それすらもあしらっていると今度は相手にもされなくなった。女性社員にセクハラ紛いのことをし、男性社員を引き連れて猿山の大将を気取るような奴を慕う意味はない。なぜこんな男が部長職に就けたのか、永遠の謎と言ってもいいほどである。
 ライトアップの準備を三課のみで行うことが決まったのは、山尾を通して仕事を依頼するとまともな人選をしないし、セクハラやパワハラ紛いのことが多発して迅速な仕事にならないから。という理由もあると田中課長は言っていた。それは正しい判断だったと思う。だったと思うけれど、準備二日目から三好と高畑が何かと理由を付けて来なくなってしまい、唯一の男手である僕の仕事量が格段に増えてるのが頂けない。三好は「どうしても外せない用事がある」高畑に至っては「呼気を口から吐き出す際に、つぼめた唇などの口腔の器官に強く息の空気の束を当てることにより、乱気流を発生させ、空気の振動、すなわちノイズを発生させる。その練習が……」とか意味不明なことを呟いていた。ただ、この二人が山尾に相談しに行ったのを知っているので、明らかなサボリだろう。僕としても残業は遠慮させて頂きたいところだけれど、普段あまり入ることのない噴水公園にこうして毎日入れるのは嫌じゃなかった。どうせあの二人がいても仕事量はそんなに変わらない。

「お、甲斐甲斐しく働いてるじゃねーか、爽太」
「じゅじゅさん、何しに来たんですか? あ、もちろん設営の手伝いですよね」
「それはお前の仕事だろ。ほらこれ差し入れ」
「差し入れってコンビニの肉まんじゃないですか。どうせなら商店街の中華料理屋に売ってる本場の肉まんの方が……」
「じゃ、これ要らないよな」
「いただきます」
「ほんとお前は素直じゃねーよな」
「純粋だから思ったことがそのまま出ちゃうだけですよ」
「純粋ってのは、私みたいな出来た人のことを言うんだよ」
「流石、名前が純粋の純ってだけはありますね」
「だろー?」
「親御さんは、純粋になって欲しいという願いを込めて名付けて下さったのに……。思ったとおりにいかないのもまた人生ですよねぇ」
「どういう意味だよ」

 僕への差し入れだったはずの肉まんは、なぜかじゅじゅさんに半分ほど食べられた。「ま、頑張ってくれたまえ」とか言いながらじゅじゅさんは帰って行った。まったく、何をしにきたんだあの人は。
 その後も設営作業を続け、二十二時半を過ぎたところで上がることになった。

「お疲れ様」
「あ、ミッチー先輩。ちぃーっす」
「あのさ、悪かったね」
「何の話ですか? あ、分かったこの前のランチ代の……」
「会議、代わりに出てもらっちゃってさ」
「あー、そっちの話ですか。別に大したことないですよ。僕みたいに仕事出来る奴は何でも出来ちゃいますから」
「そうだねぇ。私が会議に出ても議事録しか作れなかっただけだと思う」
「普通の人はみんなそうですよ」
「うん……。私さ、本当は企画部に入りたかったんだ。公園に来たみんなが幸せになれるような、そんな企画をバンバン出せる近重さんみたいになりたかった。今回の企画、あんたが立案したんだってね」
「ただの素晴らしい思いつきですけどね」
「それでも私には思いつけないと思う。純粋に凄いなぁって思うよ。なんか、私には企画屋にはなれない気がしちゃったな」
「何しんみりしちゃってるんですか、ミッチー先輩らしくない。ほ、ほらあの網袋! あれなんて素敵な企画だと思いますよ!」
「ははは。ありがとう。爽太に元気付けられるようになるとは思ってもみなかったや。あんたってさ、誰もが出来て当たり前のことはすっぽかしたりするのに、誰も出来ないようなことは簡単にやって退けたりするよね」
「なんですか、急に褒めたりして気持ち悪い。そういうの死亡フラグって言いません? この戦争が終わったら彼女と結婚するんだ! みたいな奴ですよそれ」
「何よそれ。この残業が終わったら爽太と付き合うんだ! とか? ……っば、バカじゃないの! 何言ってるのよ!」
「いやいやいや、僕じゃなくてミッチー先輩が勝手に……」
「ととと、とにかくお疲れ! あ、明日遅刻するんじゃないわよ!」

 突然ミッチー先輩は走り去ってしまった。明日は土曜日で休みだと言うのに、何を言っているのだろう。最近元気がなくなっていたミッチー先輩だったけれど、あのダッシュを見る限りどうやら元気になったようだ。良かった良かった。「そう言えば何で元気がなくなっていたんだっけ?」独り言を呟いてみたけれど、明確に思い出せなかった。疲れているからだろうし、きっと思い出せないぐらい些細なことだったと思う。
 上坂噴水公園はオフィス街にある巨大な有料公園で、大噴水を中央に扇上にカスケードが広がり、中央広場から一直線にキャナルが続く。キャナルにも小さな噴水が等間隔に設置されていて、キャナルの両側には通路、更にその外側には花壇と低木。そのまた更に外側からは芝生になっていて、その芝生を囲むように木が植えられている。その木で出来た囲いの六ヶ所に門が設置され、正門以外の五つの門の先にはそれぞれ小さな公園に続いている。小さな公園それぞれにテーマの違う噴水が設置されていて、オフィス街にある公園にしてはかなり巨大な公園だ。入場料が二百円とお手頃価格のため利用客も多く、平日休日を問わず様々な人が訪れる。特に祝日には無料開放を行っているため、利用客が格段に多くなるオフィス街のオアシスだ。
 正門から噴水公園を出ると、お腹が空いていることに気が付いた。じゅじゅさんが肉まんを半分奪ったせいもある。帰ってから準備するのも面倒なので、適当に目についた定食屋に立ち寄って晩御飯にした。焼肉定食、ご飯お味噌汁お代わりし放題で六百三十円也。



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COMMENT

●じゅじゅさん

明けてましておめでとーです。
今年もよろしくどうぞー。

差し入れは頑張ろうとか思える貴重なものなので
出来るだけ奪わないようにして下さいねw

遅れましたが、しのめんさん、明けましておめでとうございますm( __ __ )m
今年もよろしくお願いします

肉まん泥棒より(* ̄m ̄) 

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