POSITISM

適度に適当に。

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スラッシュ/ゲーム - /09 -


ハコニワノベル

「爽太、ちょっと戻ってくるの遅くない?」
「えっ、その時計ちょっと進んでるんじゃないですか? 田中課長」
「そう言うことにしといてあげてもいいけどね」
「そう言うことなんですよ絶対」
「あぁそうだ、あんたちょっとこれから始まる会議に参加してくれない? 本当は小谷にお願いするつもりだったんだけど、小谷どうも調子悪そうでさ。話しかけても上の空なんだよ」
「ランチの食べ過ぎとかじゃないですかね。誰か心の優しい人にご馳走になって、気兼ねなくもりもり食べたとかですよきっと。それで僕は、会議に参加して何を発言すればいいんですか?」
「いやいや、私も参加するんだけど、別に何か発言する必要は無いよ。議事録を作ってくれればいいだけだから」
「あーなるほど。うーん、参加したいのは山々なんですけど、僕は僕で忙しくてですね」
「お前の文章力向上のチャンスだと思って、ここは参加しとこうか爽太。それに仕事が出来る奴は会議の議事録ぐらい余裕だろ?」
「それはそうですよ。僕ぐらい仕事が出来るようになると、議事録ぐらい寝ながら作れますよ」
「おし、じゃぁ五分後に企画部のミーティングスペースに行くから準備しといてくれ」
「了解しました」

 やれやれ、自席に付くまでもなく仕事を依頼されてしまった。これも仕事が出来る僕だからこそだろう。しかし、課長も僕を会議に参加させるとは、僕の仕事ぶりから昇進を考えているに違いない。企画部のミーティングスペースで行われる会議ということは、かなり重要度の高い会議なのだろう。
 そう言えば、上の空になっているらしいミッチー先輩の姿は見えなかった。まったく、仕事は沢山あると言うのにどこをほっつき歩いているのだろうか。僕のような優秀な部下がいたから事なきを得たとはいえ、社会人として見習えない醜態だ。そもそも、ランチを人にご馳走させておいてお礼も言わないとは、いかにレディーファースト精神を持つ、紳士中の紳士である僕でも憤りを覚えてしまう。やれやれ、今度豪華なディナーをご馳走になる必要があるな。
 自席に戻ってから、とあるゲームの攻略サイトをプリントアウトするときに、用紙設定をミスして大量に印刷ミスをしてしまった裏紙を再利用したメモと、三色ボールペンを準備する。会議に参加するからには、筆記用具は必須だろう。それからキャビネットの一番上の引き出しからのど飴を二つ、携帯電話がポケットに入っていることを確認してから、紙コップにお湯を注いで一息入れる。「爽太、行くぞー」という田中課長の呼び掛けで立ち上がって、企画部の入っている三階のミーティングスペースへ移動した。

「あれ、じゅじゅさんじゃないですか」
「なんで爽太がいるんだよ、ルティ」
「あー悪い悪い、今日はこいつに議事録作ってもらおうと思ってさ」
「ふーん。おい爽太、邪魔だけはすんなよ」
「僕は常に誰の邪魔にもなりませんけどね」
「あと、何度も言ってるけどな、私のことをじゅじゅと呼んでいいのは私の母さんだけなんだよ」
「じゅじゅの珍妙な冒険ですね」
「あー、こいつメンドくせぇなぁ。もういいや始めるか」

 近重純、企画部一課の課長。田中課長と同期で、雰囲気はバリバリのキャリアウーマン。田中課長に連れられて行ったバーで偶然出会って、気が付いたら泥酔した二人をタクシーに放り込んだ経験がある。二人ともお酒を水か空気のように飲むので、最後は泥のように眠ってしまって介抱が大変だ。そんな経験が何度かあり、酔うと自分で「私のことはじゅじゅと呼べ。じゅじゅの珍妙な冒険だ」とか強要するくせに、素面の時はその記憶がないのだから幸せな人だ。いきなり服を脱ぎ出して下着姿で踊ったこともある。これでKGCで一番仕事が出来ると言われているのだから、世の中は面白おかしく出来ているようだ。
 企業ビル屋上に小さな公園を作るという企画は、じゅじゅさんが立案し一気に二箇所で実際に導入された。オフィス街に新たに公園を造るのは、土地などの問題で容易くなく、KGCの管轄エリア内では、もう公園は作れないと誰もが判断していた中で、企業ビルの屋上に公園を造るという企画を打ち出し実績に結びつけたのだから、この人は社内で半ば超人的な評判になっている。あの志津バアに「アタシを恐れてないのは田中の小娘と、企画部の近重」と言わしめるだけの存在ではある。

「ごめんなさい、ちょっと遅れたかしら」
「森本部長、もう先に始めようとしてましたよ」
「ちょっと現場応対があってね。あら、見かけない子ね」
「管理部三課の爽太と言います。今日は完璧な議事録を作るため、会議に参加させていただきます」
「本当は小谷に頼もうと思ってたんですけど、ちょっと体調不良みたいでして。こいつは小谷の部下です」
「それでは議事録はお願いしますね。それから、管理部の山尾部長は?」
「毎度のことで申し訳ないんですが……」
「あぁ、そういうことね。企画部の鈴木部長は営業中でしたね。それでは、近重さん始めて下さい」

 この人は森本麻里子。運営部の部長で、黒柳徹子のような髪型をしているので社員からはマリモと呼ばれている。徹底した接客教育で、KGCのサービス課のイメージ向上を長年行っている人だ。ちなみに、KGCの女性で初じめて部長になった人だ。田中課長もじゅじゅさんも実は部長職を狙っているので、二人とも森本部長を尊敬しているし、いつか肩を並べたいと思っているらしい。ただ酔っ払った二人が話してくれた内容なので、真偽の程は測りかねる。

「上坂噴水公園に巨大なクリスマスツリーを置こうと思ってます。上坂に新たなクリスマススポットを作って、寒い季節に客足が遠のく上坂噴水公園に、新たな客を呼び込む目玉を作るという企画です」
「なるほど、しかし今から準備してクリスマスに間に合いますか?」
「モミの木搬入に一週間、デコレーションに丸一日。トータルで八日間あれば可能なので、二十三日中には設置可能です」
「ギリギリだなぁ。ちなみにその設置までの作業はどこの部から駆り出すつもり?」
「管理部から四十名ほど」
「半分以上かぁ、それはちょっと厳しいなぁ」
「近重さん、ちょっと納期がギリギリ過ぎて現実的じゃないですね。準備期間中も噴水公園は通常営業だとすると、クリスマスツリーの準備は深夜になってしまいます。管理部から駆り出された方は通常業務後に、徹夜状態で準備するんですか?」
「やっぱり無理ですかね。出来れば今年のクリスマスに実施して、期間限定のイベントによる集客の統計データを取りたいんですよ。季節ごとにイベントを実施して、効果的に集客出来るような体制にしたいなと」
「それは分かりますが、ちょっと急過ぎます。仮に準備をするとしても集客を行うなら、準備と並行で告知もするのでしょう? そうなると準備が間に合わなかった時のリスクが大きすぎます」
「それに、うちの部の社員四十人に残業を承諾してもらうのは厳しいよ」
「クリスマスツリーじゃなくても、クリスマススポットに出来る何かが作れればいいんだけどなぁ」
「あの、噴水公園の中央大噴水の放水パターンって制御出来たりするんですか?」
「議事録係が急に何を言い出してるんだよ」
「まぁまぁ近重さん。茶化さずに話は最後まで聞くものですよ。えぇと、爽太さん、でしたね。中央大噴水の件ですが、制御出きますよ。基本は時間経過によって六パターンを順番に切り替えていますが、任意のパターンに変更することが出きます」
「一番水が高く上がるパターンで固定して、それをツリーに見立ててライトアップすれば、クリスマスツリーに見えなくもないなと思いついたんですよ」
「噴水をツリーに見立てる……。あー、企画屋としては認めるのはとても悔しいが、その案頂くぞ爽太」
「じゅじゅさんの手柄にしておいていいですよ」
「お前に恩なんか売り付けられる日が来るとは、世も末だな」

 僕の素晴らしい思いつきのおかげで、上坂噴水公園のクリスマススポットにはライトアップされた噴水のクリスマスツリーが、二十三日から二十五日まで期間限定で設置されることになった。流石、仕事が出来る男は違う。議事録作成のために参加した会議で、新企画のアイディア出しまでしてしまう。まぁ、議事録は一切取っていなかったので、田中課長からお説教されたりしたことは秘密にしておこう。



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COMMENT

●じゅじゅさん

ハードル高くても、そのキャラを描くのは私なので
あまり気にしなくて大丈夫ですよーw
気がつけば大晦日ですね、じゅじゅさんも良いお年をお迎え下さい。

縄跳び今やるとかなりの運動量ですよ、アレ。

ハ、ハードル高いキャラをいただいて、恐縮です(〃 ̄ω ̄〃ゞ
大晦日ですねぇ、しのめんさんどうぞ良いお年を( ̄▽ ̄)ノ
縄跳びもがんばってくださいd( ̄◇ ̄)b グッ♪

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