POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - fine -


ハコニワノベル

「それでミツル君。どうやってチキューのことをフィオーレの人に知ってもらうの? 四千万人もの人達に説明するだけでも大変。更にそこから信じてもらおうと思ったら、ものすごい時間が掛かってしまうわ」

 ウラーノが捕らえられた後、私とミツル、ついでにカンクロとペーシはリベルラ社の社長室、つまりヴェルネさんの部屋に呼び出されていた。

「その前にヴェルネさん、何時の間にリベルラの社長に?」
「それはね、テラちゃん。二年前に解雇されるよりもずっと前から、私はこの椅子を自分のものにするためだけに動いていたというだけよ。喫茶店をしていた間だってね。まぁ、今回はたまたま私に回って来ただけのこと。それでも、遅かれ早かれこの椅子は私のものになっていたでしょうけど」

 にこやかに笑っているけれど、ヴェルネさんの笑顔が怖い。同じ女として尊敬出来る部分が多分にあるのは認めるけれど、私はここまで裏表を使い分けられる気がしない。「そうなんだ」と言って笑った。でも間違いなく顔がひきつっていると思う。

「じゃ、じゃぁ、あのタイミングでウラーノを捕まえるのも計画通りだったの?」
「ううん。それは違うわね。あの人の裏をかけれるような、何か大きな騒動だったら何でも良かったんだけど、なかなかチャンスが無くてね。そしたら謎の宇宙船飛来の緊急事態。コレだわ! って、ほんとミツル君には感謝してるわよ。うふふ」
「ずっと準備は出来てたってことですね。ヴェルネさんって、意外と腹黒」
「ちょっと姉さん、聞こえてますよ! な、ペーシ」
「そうです、そうです。絶対に聞こえちゃってますよね、カンクロさん」
「テラちゃんはいつも正直でいいわぁ。お姉さん、今の発言は聞かなかったことにしといてあ・げ・る。さてと、それよりもミツル君。チキューのこと、どうするつもりなのかしら? フィオーレが私のもの……じゃないや、自由になったのだからこちらとしては、あなたのやりたいことを出来る限りバックアップするつもりだけど」

 私たちから少し離れた場所で、ミツルが窓の外を見ている。少し嬉しそうな顔をしていたかと思うと、こちらに困ったような顔を見せてくる。

「それがですね、特にどうするつもりもないんですよ」
「どういうことかしら? さっきは人類の歴史にロックンロールをかますとか、確かそんなことを言っていたけど?」
「うーん、ウラーノさんにも言われたんですけど、なんと言うか……」
「ミツル、あんたもしかして、何も考えてなかったの?」
「おいおい、本気かよ。チキューって星があるのは事実なんだろ。な、ペーシ」
「ほんとほんと、真実を知ってどうするかは、人それぞれですよね、カンクロさん」
「結局、あなたはその真実を誰にも教えようとはしない訳かしら。ウラーノの言っていたように、誰も信じてくれないから諦めるという訳? 私が好きなのは、もっとバカで周りが見えてない癖に、絶対に信念を曲げない。自分の信じたことを最後まで信じ抜く。そんな夢を追いかけてるミツル君だったのになぁ。ちょっとがっかりしたわ」
「いや、だからですね。もうやるべきことはやってしまってて、僕が今からやることなんて特にないんですよね。ほら、今だってもうフィオーレのみんな、チキューのこと知りつつありますから」



『え?』



 ミツルが見ている窓の先、巨大なリベルラのモニタに懐かしい青い空と青い海が映し出されている。それだけじゃない、この窓から見える全てのモニタが同じ映像を映し出している。きっと各個人が持っているモニタにも同じ状態になっているのだろう。ふいにモニタ内になんだか変な老人が現れて手を振り始めた。

「ヒヒヒ、ワ・レ・ワ・レ・は、チキュージンだよぉ」
「ビランチャさん! ダメですよ。最初に不快感を与えちゃいます。……あ、えーと。フィオーレの皆さん、こんにちは。私はクローチェと言います。私たちはチキューと呼ばれる青い星に住んでいます。皆さんと同じ人類です。勝手にこちらの映像を送ってしまってごめんなさい。でも、フィオーレではチキューは、私たちのこの青い星は滅んでしまったと教わると聞きました。チキューは滅んでなんていません。私たちはチキューで毎日生活をしています。フィオーレの皆さんはどんな生活を送っているのか教えて下さい。あと、ミツル……これ見てるかな? ちゃんとフィオーレの映像、届いてるよ。フィオーレってとっても綺麗なところなんだね」

 ヴェルネさんの机にあるモニタにも、外のモニタと同じ映像が映し出されている。ミツルがそのモニタの前に移動すると、インカムを取りつけながらモニタのカメラに手を振った。すると映像の中の女の子が「あ、ミツル!」と手を振り返した。

「クローチェ、ちゃんと見てるよ。とてもいい演説でした」
「ちゃ、ちゃんと話せてたかな? 私、あまり自信ないよ。だってミツルが出発したあとで、この衛星通信の話を聞いたから……」
「クローチェ姉ちゃんさー、今も通信してる最中なのに、ミツルと普通の会話してていいのか? フィオーレで沢山の人に聞かれてるし、見られてると思うぜ」
「ちょ、え、ダメ、見ないで! 聞かないで!」

 モニタの映像から女の子が慌てて消えると、憎たらしい男の子が映し出される。

「やぁ、フィオーレの諸君。俺様はコメタ様だ。フィオーレに住む諸君は、チキューに来たらきっと驚くことだろう。まず、諸君では普通に動くこともままならないほど、チキューはとても厳しい星だからだ。しかし、チキューはフィオーレの何倍も広く、とても素晴らしい星だと思っている。人類は元々チキューで暮らしていたのだ。これからはチキューとフィオーレそれぞれが協力しあって、生活をしていこうではないか」
「相変わらず偉そうだな、コメタ」
「おい、ミツル! せっかく良い調子でしゃべってるのに邪魔するなよな!」
「ごめんごめん。元チキューの最速の男」
「あ、てめーこのやろ……」
「ははは。コメタ、ごめんよ。ちょっと僕もしゃべりたくなったからこの辺で」
「ちょっと待て、ミツル、おい……」

 ミツルがモニタを操作すると、目に映るフィオーレのモニタというモニタにミツルの顔が映し出される。ミツルは笑いながら話し始めた。

「フィオーレの皆さんこんにちは。僕はミツルと言います。二年前にフィオーレを飛び出してチキューへ行き、先ほどチキューからフィオーレに戻ってきました。先ほどの映像はチキューに設置した衛星アンテナと、チキューとフィオーレの間にあるルーナという星に設置したアンテナ、それからこのフィオーレに着陸させている僕の宇宙船に搭載されているアンテナを経由して送受信されている、チキューのリアルタイム映像です。フィオーレの映像も同じようにチキューへ送っています。人類は元々チキューに住んでいました。細かい経緯がどうだったのかは解りませんが、それから人類はルーナにも移り住んで、そこからこのフィオーレで暮らすようになったと思います。しかし、フィオーレはリベルラ社の管理下におかれ、誰一人として真実を知ることも、自由に生活することも出来ません。僕は、フィオーレの他に人類が住める星があるはずだと、ずっと信じていました。その星を探すために、ロケットを作っていたある日、この女の子がフィオーレに辿り着いたんです」

 いきなり腕を引っ張られると、モニタに私の顔が映し出される。

「ちょっと、何するんのよ! それと、今のあんたが強く引っ張ると物凄く痛いんだけど?」
「名前はテラと言います。彼女はチキューからやってきたと言いました」
「無視するの? なんなの?」
「僕は嬉しかった。フィオーレ以外の星で人類が生きている。そこへ行ってみたい。そう思って彼女をチキューへ送ることを約束しました。けれど、リベルラ社の妨害があって、二年前に彼女を残したまま、僕だけがチキューへ飛び立ってしまったんです。それからチキューの人たちに助けられながら、こうしてまたフィオーレまで帰って来ることができました。チキューはすごいところです。皆さんにもチキューを知ってもらいたい。だからこうして、衛星通信で皆さんのモニタをジャックさせてもらいました。これから僕は、テラをチキューへ送り届けるつもりです。そしてもっと簡単に、気軽に、チキューとフィオーレを繋げようと考えてます。チキューの人がフィオーレに、フィオーレの人がチキューへ、気軽に行き来が出来るようにする。それが僕の今の夢です」
「そう言えば、さっきの女の子とあんた、どういう関係なのよ?」
「え? クローチェのこと? クローチェは僕が気絶したところを助けてくれて、それからチキューでは一緒に暮らしてただけだよ」
「ふーん、一緒に暮らしてた。それって一つ屋根の下で生活してたってことかしらね? ミ・ツ・ル君」
「そうだけど?」
「あんた、ちょっと覚悟しなさいよ! 私があの太っちょとガリと仕方なしに一緒にいる間、あんたはあんな可愛い子と一緒に生活してたなんて許せない!」
「おいおい、聞き間違いだよな? 今、姉さん俺のこと、ふふ、ふと……。な、な? ペーシ」
「たまには、現実も受け入れましょうよ、カンクロさん」

 結局そのまま私たちのケンカをフィオーレの全員と、チキューにいる人たちに一部始終を見られることになった。その騒動をヴェルネさんがリベルラ社の新社長としての挨拶とリベルラ社の管理を解放し、全ての生活で何事も自由に選択することが可能になったことが告知されてモニタジャックは終了した。最初は混乱していた人たちも、リベルラ社の新社長が名言することで納得し始め、そこまで大きな混乱は起こらずにすんだ。その代り、この騒動の後で私たちが外を歩いていると、絶対に笑われるようになった。それもこれも、全部ミツルが悪い。あいつが無制限に衛星通信をモニタになんか流すなんてことをしたからだ。そんなことをしたらどれだけの人に影響があるのか、あいつは――いや、あいつは解っててやっているかもしれない。
 その騒動からほどなくして、私はミツルの作った宇宙船FARFALLAに乗ってチキューへと無事に帰った。今ではチキューとフィオーレは共存関係にあり、フィオーレで蓄えたエネルギーをチキューへ供給し、そのエネルギーで開拓、農耕が行われている。またチキューで収穫された食糧や水などをチキューからフィオーレへと届けるようになった。チキューとフィオーレの関係はとても良好だ。
 私はチキューとフィオーレを股にかける花屋になった。チキューの植物を少しずつフィオーレで広める活動を、あのモニタに映っていたクローチェ、コメタと一緒に行っている。カンクロとペーシはリベルラ社の一員として、治安維持や施設管理をしている。ヴェルネさんにこき使われているらしい。ミツルは――、いやあのバカは、カプリコルさんと、チキューに住んでいるビランチャっていう爺さんと一緒に、相変わらずロケットを作ってる。たまに会ってもロケットの話ばかりしてるバカだけど、こいつのロックンロールには少しだけ何かを期待してもいいと思っている。



 人が変わるように。
 歴史が動くように。
 星々が輝くように。



 ――数年後。
 チキューとフィオーレ間の移動は、宇宙船で簡単に行うことが出来るようになった。
 フィオーレとは古いチキューの言葉で「花畑」、移動に使用する宇宙船FARFALLAは古いチキューの言葉で「蝶」と呼ぶらしい。

 今日もまた、花畑へ蝶が舞う。



   完。




≪35へ

COMMENT

●來弥さん

ロックになってるのかどうかは
書いてる本人がいまいち解ってないのでアレですが
人生、たまには冒険しとくべきだと思います。

乗り越えたら乗り換えただけ
大きなものを得ているはずですから。

ロックだった(ハァハァ

できることやれることをやってたって時は進む。
でもそれじゃ人生は面白くならないんですよね。

勇気と挑戦。
それに少しのロックをスパイスに
楽しくしたいなぁ。

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