POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 35 -


ハコニワノベル

 瞬間、ミツルの姿が目の前から消えた。そして私の目に映ったのは――、一回転、二回転、三回転して仰向けに倒れたウラーノだった。倒れたウラーノの傍でミツルが笑っている。

「女の子の力じゃ勝てなくても、同じ男なら若い方が強いってことですね」
「こ、これで勝ったと思っているのですか?」
「いいえ」
「……何を考えている? XB03026」
「いや、何をって言われても……ただ、人類の歴史にロックンロールをかまそうと思ってるだけですよ」
「無駄だ。例え君が本当にチキューへ行き、こうして戻って来たとしても誰も何も信じないでしょう」
「そうですかね?」
「この私が管理しているフィオーレでは、外の情報は完全にシャットアウトされているからだ」
「なんのためにそんなことを?」
「人類は醜い。自由を与えられれば必ず破滅へと進んでいく。チキューとフィオーレがそれぞれ関わらないことこそ、人類を護ることになるのですよ」
「だからって、全部あんたの身勝手で真実を知ることもなく、ただ生かされていることが正しいとは思えない」
「ふん、子供の理想論ですね。真実を知ることこそ正しいというものではない」
「だから、そんなの全部あんたが決めつけてるだけだって」
「それじゃぁ、このフィオーレにいる人類にその真実とやらを教えてあげればいいでしょう。フィオーレの外にはチキューという星があって、そこでは同じ人類が生活をしているということをね。そんな話、フィオーレの中で信じるものなど誰一人いない。所詮、私に管理されているだけの人類に、自ら思考し、想像を働かせることなんて無理なんですよ。笑えますねぇ、くっくっく、はっはっは。君がこの二年間、いやフィオーレでこそこそとガラクタを作っていた期間を合わせると四年間もの間でやったのは、あそこにいる少女を拾って、その少女を置き去りにしただけなのですよ。くっくっく、はっはっはっは」
「……」
「さぁ、どうしましたか? 人類の歴史に、ロックンロールとやらをかましてごらんなさい。君の声など誰にも届かない。例え真実を知ったとしても、誰も何もしないでしょうがね」

 勝ち誇ったようにニヤリと笑いながらウラーノはふらふらと立ちあがり、眼鏡をかけ直す。

「ミツル、私には届いてるよ! ミツルの声、ちゃんと届いてるから!」
「おいおい、聞こえただろー? フィオーレの外にはチキューとかいう星があるらしいぞ。な、ペーシ」
「らしいですね、それも元々人類が住んでいた星らしいですよ、カンクロさん」
「黙れ! 貴様らのようなイレギュラーがいくら騒いだって何も変わらん。私のフィオーレは変わらせはしない。くっくっく。貴様ら、ここから無事に出られると思わない方がいいぞ」

 ウラーノが右手をあげると、混乱していたリベルラ社員達の統率が取られていく。あっという間に囲まれてしまった。視線の先でミツルも取り囲まれている。

「ミツル! ……カンクロ、ペーシ! なんとかしなさいよ!」
「いやいやいや、姉さん。流石にこの人数相手はちょっと……な、ペーシ」
「ですねですね、全員を巻き付けるだけのスペースヨーヨーもありませんしね、カンクロさん」
「もう、あんた達は本当に大事な時に使えないんだから! ここは強硬突破するしか……うっ」

 取り囲んだリベルラ社員が一斉に銃口をこちらに向けている。その奥からウラーノがゆっくりと近付いて来ると、私は二年前と同じように胸倉を掴まれて持ち上げられてしまった。抵抗しようにも力の差があり過ぎて、暴れても暴れてもウラーノの腕を振りほどくことが出来ない。

「XB03026、大人しくしないと、このガキ共の命はないと思え! ……なっ?」

 周りにいるリベルラ社員達が構えるラッジョ銃の銃口が、なぜかウラーノに向けられている。持ち上げられて視線が高くなった私に見えたのは、リベルラ社員の間をゆっくりと通り抜けながらこちらに向かってくるミツル。それから、その沢山の社員達の一番後ろで片手をあげて指示を出している人――ヴェルネさんだ。

「ヴェルネ、貴様……」
「あら社長。いいえ、今は社員ではありませんのでウラーノさん。お久しぶりです。同じことを繰り返して言いたい訳ではありませんけど、女はいつでも夢見る男性に惹かれるもの、ですわ」

 ゆっくりと私は下ろされて解放された。ウラーノはそのまま両手をあげた。

「テラ! 大丈夫だった?」
「あんたが無茶するからでしょ! ほんと、ほんとにバカなんだから」
「おいおい、二年間も音沙汰なしでヒーロー気取りな奴がいるぞ。な、ペーシ」
「いますいます。どれだけテラさんが心配して泣いてたと思ってるんですかね、カンクロさん」
「ちょ、ちょっと、何余計なことしゃべってんのよあんた達は!」
「はいはい、素敵な青春ごっこは後でしてくれるかな?」

 ヴェルネさんはそう言いながら私たちをウラーノから遠ざけると、一枚の書類を取り出してウラーノに見せ付けるように広げた。

「ウラーノさん、あなたの解雇通告書です」
「何? バカな。解雇通告が出来るのは私だけのはず」
「いいえ、あなたではなく、リベルラ社の社長権限でのみ、この解雇通告を行うことが許されています」
「寝言は寝てから言いたまえ。リベルラ社の社長はこの私だ」
「あら? あなたこそ寝言は寝てから言ってくださいませね。あぁ、申し遅れました。わたくし、この度再就職したんですよ。リベルラ社の社長に」
「なんだと? ふざけるなよヴェルネ! リベルラ社、いやフィオーレは私のものだ!」
「……ナンセンスですわね。今、リベルラ社の全権はわたくしが保有しております。管理が得意とおっしゃる割に、ご自分の自己管理がなっていませんわ」
「大人しく話を聞けばくだらない。まぁ、いい。貴様が社長だろうがなんだろうが、力づくで奪い返せばいいだけのこと。チキュージンを甘く見るなよ!」
「あら怖い。あなたに掛かったら、わたくしなんてひとたまりもございませんわね」
「ならば社長の座を返してもらおうか、ヴェルネ! 貴様らを消すことぐらい造作もない……」

 瞬間、ウラーノがくるんと回転してコケた。ヴェルネさんが足払いをしたからだ。

「なに?」
「先ほど、こっそり重力のプレゼントを差し上げたことを、お伝えするのを忘れておりました」

 ウラーノの腕に、私が付けられていたあの時計のような装置が取り付けられている。いつの間にかヴェルネさんが私からあの装置を外して、ウラーノに取り付けていたみたいだ。足払いの恰好からにこやかにほほ笑みながら、ヴェルネさんが立ち上がる。髪の毛を手ぐしで整えると、こう言った。

「足元がお留守ですわ」




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