POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 31 -


ハコニワノベル

 このまま僕はルーナに落下して命を落とすのだろうと考えた。そしてそれに納得していた。妙に諦めが早かったのは、物理的にFARFALLAに戻ることが出来ないからだ。近づくルーナと、視線の先にフィオーレが映る。チキューの宇宙服は重たい。船外作業が行える強度は確かにあった。そう言えばビランチャさんに「船外で作業するときはよぉ、命綱忘れるんじゃねぇぞぉ」とか言われていた。命綱のことなんて考えていられないほど慌てていた自分が滑稽に感じた。

「せっかくここまで来たのにな。ごめんなテラ、迎えに行けなくなったよ」

 感傷に浸りつつ、落ちてきた方を見るとFARFALLAが見えた。二年間夢中で作り続けたロケットだ。無駄にピカピカ光る衛星アンテナを広げることもなく、ここで宇宙ゴミとして漂うことになるだろう。今の位置からはロケットの噴射口がよく見える。あそこから燃料を使ってロケットを噴射、そしてその推進力を得て進んでいく。燃料を噴射させて。燃料を――噴射させて――?

「あ!」

 チキューの宇宙服は百二十キロの重量がある。その重さは強度を保持するためだけに重たいわけじゃない。命綱が切れるなどのアクシデント時に、燃料を噴射させることができたはず。ビランチャさんから命綱の話を聞いた時に、軽く言われていた内容だ。今から噴射させて間に合うか解らない。それでも今残された手段はこれしかない。噴射装置の起動スイッチに手を伸ばす。慌てて何度か掴みそこなって、片手に握ったままの折れたアームを投げ捨てた。それからスイッチをなんとか捕まえて、僕は祈るように、そのスイッチを押した。
 ルーナへ向かって進んでいた身体が緩やかに停止する。徐々にFARFALLAへ向けて移動していく。

「いいぞいいぞ、頼むからFARFALLAまで届いてくれよ」

 徐々にFARFALLAへ近づいていく。さっきまで諦めていたのが嘘みたいに、今はFARFALLAへ辿り着くことを願っている。人間はどうしようもなく切り替えが早いみたいだ。藁にもすがる気持ちで噴射ボタンを押し続ける。この燃料が切れたら、今度こそおしまいだ。二度とFARFALLAには戻れないし、もちろんここで命を落とすことになる。



「よーし、よしよし、このまま、このまま」
「もう少しだけ持ってくれよ」
「じれったいけど無駄に動くと推進力の妨げになるしな」
「これがダメだったら……いや、ダメになるとは決まってない」
「頼む、頼む、頼む」



 と独り言を呪文のように繰り返しながら、僕はFARFALLAへ近づいていった。



「お? ちょっとスピード出て来たんじゃないか?」
「これなら、届きそうだ」
「いいぞ、いいぞ、いいぞ」
「行け、行け、行け」
「もうちょっと、もうちょっとで……」



 ――徐々に、徐々に加速しながら。



「ちょ、ちょっと待って、これって止まれないんじゃ……」

 音のない宇宙空間に鈍い衝突音が響いた気がした。




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