POSITISM

適度に適当に。

09« 2017.10 »11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

FARFALLA - 30 -


ハコニワノベル

 振動、衝撃。上へ上へと昇っていっているはずなのに、下へ下へと強く引っ張られる感覚。眼下に広がる海の青さと、上空に広がる空の青さの中間地点に僕はいる。徐々に海が遠ざかり、まるで大きな水たまりのように見えるようになったかと思うと、空の青さに囲まれていく。何かにぶつかるような衝撃のあと、ロケットの外から聞こえていた音が消えていく。しばらく無音状態になっていた船内から、ガコンと鈍くて大きな音がした。同時に船体が大きく揺れる。

「ロケット切り離し、成功」

 気が付くと目に映る景色は青から黒へ変わっていた。打ち上げからジャスト八分、無事に大気圏を突破した。久しぶりに見る宇宙空間、相変わらず数億の星が輝いている。船体の傾きを調整するとルーナ、そしてフィオーレを確認することが出来た。

「ミツル、聞こえるかよぉ?」
「ビランチャさん、聞こえます。無事に大気圏突破しました」
「流石、ワシの設計に狂いはないなぁ、ヒヒヒ」
「これからルーナへ向けて最終ロケットを噴射させます。その後、その軌道線上にあるフィオーレに行きます」
「例の件、こっちの準備はバッチリだからよぉ、あとはお前さんが上手くやれば大丈夫だぁ」
「了解です。ミスしないようにやってきます」
「ロックだねぇ、ヒヒヒ。それじゃぁ、また後でなぁ」
「はい。また後で」

 船体の傾きを再度調整して、ルーナへ向けて最終ロケットを噴射させる。音もなく揺れると徐々にチキューの衛星軌道から離れていく。細かく船体の傾きを調整しながらルーナへ近づいていく。フィオーレに帰るだけならルーナに近づく意味はないけれど、ルーナに設置したいものがある。きっとこれが今の捻じれた人類の歴史を正してくれる気がする。しかし燃料の関係上、ルーナを周回することは出来ない。通り過ぎるタイミングで、FARFALLAに急遽搭載したプリマヴェーラを投下して設置するしかない。チャンスは一度きりだ。そうこうしているうちにルーナが近付く。慌てて投下用のスイッチを手にしつつ、投下のタイミングを計る。

「プリマヴェーラ設置可能エリア到達。プリマヴェーラ投下! ……あ、あれ?」

 プリマヴェーラが投下されない。投下信号は正常に発信されている。信号発信から各機器の動作をチェックしていく。信号発信――良し、格納ボックスオープン――良し、投下アームオープン――エラー。プリマヴェーラを投下する最後のアームが開ききっていない。このままだとFARFALLAはルーナを通り過ぎてしまう。

「あのアームを開かないと!」

 最終ロケットの噴射を緊急停止してから操縦席のベルトを無理やり外す。久しぶりの浮遊に身体を取られて頭を天井に強く打った。痛みも引かないままにFARFALLAの軌道を再度ルーナへ無理やり近づける。そのままハッチへ移動してハッチをこじ開けた。完全な宇宙空間に引き込まれそうになりながら、船外へ飛び出す。FARFALLAにしがみ付きながら、プリマヴェーラ投下アームへ近づく。あと少し、あと少し。
 急に船体がガクンと傾いた。

「やばい、ルーナの引力に引っ張られてるんだ。急がないと!」

 手を伸ばしたその先に、プリマヴェーラの投下アームが見える。しかし気付けば船体はルーナに対して垂直に落下を始めている。プリマヴェーラを諦めないと間違いなく衝突してしまう。一瞬諦めようかと思った。諦めてフィオーレに辿り着けば、当初の目的であるテラをチキューへ送り届けることが出来る。――だけど、それだけで終わってしまう。

「今ここで、諦めたら……ここで諦めてしまったら、全然ロックじゃないだろ!」

 飛びつくように投下アームにしがみ付いて、全力でそのアームを開かせる。FARFALLAは徐々にスピードを増しながらルーナへ一直線に落ちていく。急遽取り付けたプリマヴェーラを絶対に落とさないように、きつめに作ったアームが災いして投下出来なかったらしい。力を込めてもなかなか開いてプリマヴェーラを離してくれそうにない。

「あのな、チキュージンは強いんだよ。だけどチキューの人もフィオーレの人も全員同じ人類なんだよぉっ!」

 バン! と弾かれるように力を込めていたアームが突然開いた。プリマヴェーラはFARFALLAから離れていく。今度は確実に投下出来てるのが良く解る。解り過ぎるほどに良く見えている。――なぜなら、折れたアームを片手に持ったまま、僕もFARFALLAから離れて、いや落ちているからだ。




≪29へ
31へ≫

COMMENT


FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。